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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第四章「一般編」
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65話「怪しいバイト」



「結城さんの目的……か」


 昼休み。校舎の屋上では葛西蒼司が外の景色を眺めながら、ひとりそう呟いた。


(あんだけの力があって、強え仲間も居て、経歴が不明。たしかに疑問だらけだな。普通に考えれば何か目的があるんじゃないかと疑っちまう……)


 先日の龍海との会話を思い出しながらソージは考える。

 幸助の正体と目的、今後の自身の在り方について……。


「……ま、どうでもいいか。悪い人じゃないだろうし。とりあえずは恩返しが優先だな」


 しかし、ソージの結論はすぐに出た。

 いつのまにか校内で最大の不良グループを取り仕切る立場になっていたソージは、本能的に善人と悪人を見分ける才能が身についている。その事はソージ自身も自覚しているため、信頼に足る人物かどうかの判断に迷いはないのだ。

 また、恩は必ず返すという義に厚い性格な事もあり、今後の幸助との在り方に一切の迷いはなかった。


「ん?人か?」


 突如聞こえてきた屋上の扉を開ける音。それを聞いたソージは慌てて物陰に身を隠す。


(ミスった!あまり聞かれたくない事考えてたから、つい隠れちまった……って、結城さん!?)


 屋上に現れた男女。1人は知らない女性だったが、もう1人はソージのよく知る人物、結城幸助の姿だった。


(ヤベェ、どうすっかな……)


 ソージは出ていくタイミングを完全に見失い、物陰で静かに息をひそめるのだった。





「急に連れ出しちゃってごめんね」

「別に良いですけど、何の用ですか?」


 本当になんの用だろう?花園先輩はテレビで見た事があるけど、実際に会うのは初めてだ。もちろん話した事など一度もない。


「噂で聞いたんだけど、結城くんって相当強いんでしょ?番長だった葛西くんを舎弟にしたり、熊殺しの大男を素手で倒したりしたって聞いたよ」

「そんなわけ……無くもないですね」


 ソージを舎弟にした覚えは一切ないけど、熊より強そうな大男を倒した事は……あるな。『溶解』の異能で服を溶かして公然わいせつの刑に処した覚えがある。

 というか、ソージって番長だったのか。


「なるほどね。それじゃあさ、ちょこっとバイトしてみない?」


 え、なに?怖い。強いかどうか聞いてから紹介されるバイトとか、絶対怪しいやつじゃん。


「お断りします」

「えっ、どうして!?」

「だって、絶対怪しいバイトじゃないですか。怖いですもん」

「全然怪しくないよ!護衛!ボディガードのバイト!私のお母さんがお店をいくつか経営しててね。その従業員の護衛をお願いしたかったの」

「ちゃんと本業の人たちを雇えばいいじゃないですか」

「それが、どこも予約でいっぱいみたいなの」


 ボディガードの繁忙期なのか?


「ちなみに給料は結構良いよ。時間は日によって変わるかもだけど、1時間でなんと1万円!1ヶ月間の短期契約。どう?」

「時給1万!?」


 怪しい。怪しすぎる。だが……時給1万か。

 平日はあまり時間が取れないけど、それでも3時間は働ける。そうすれば日給3万だ。それが1ヶ月……今までの出費を補って余りありすぎる金額だ。


「1万……時給1万円……。花園先輩、やります」

「そうこなくっちゃ!あと、私のことは敬意を込めてリサ先輩と呼んでいいからね」

「かしこまりましたリサ先輩」


 俺の返事を聞いたリサ先輩は、嬉しそうに段取りを説明してくれた。


「それじゃあ、学校終わったら札幌駅に集合って感じでいい?お母さんの部下の人が迎えに来ると思うから」

「わかりました。よろしくお願いします」


 とりあえず、バイトを探す手間は省けたな。どんな仕事かは分からないけど、全力で頑張ろう。怪しい仕事だったら逃げよう。

 そんな事を考えながら教室へ戻ると、殺気と質問責めの嵐に見舞われた。すぐさま逃げた。





「結城さん……あれだけの力を持っていて、金欠?」


 謎すぎる幸助の金銭事情を知り、ソージの疑問は深まるのだった。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 1時間で1万円。 時給とは言ってないので2時間でも3時間でも1万円かもしれない。
[良い点] 金欠は笑うしかない
[良い点] 面白かったです( *˙ω˙*)و グッ! ワクワクしますねー [一言] 第四章「一般編」 61話 から 65話 を読みました
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