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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第一章「陰陽術編」
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5話「式神召喚!」




 昨夜はぐっすり眠れたので、朝から調子がいい。登校時間にも余裕で間に合った。


「おはよう」

「結城か、おはよう」

「おはよう幸助!」


 今挨拶をした2人は、俺と同じ外部受験生であり、自然とつるむようになった友達だ。

 クールなインテリ眼鏡くんは石田成行(いしだ・なりゆき)。茶髪のチャラ男一歩手前くんは滝川翔(たきがわ・しょう)という。

 登校初日はどうなる事かと思ったが、こうしてつるめる友達ができたのは本当にありがたい。


潤叶(うるか)ちゃん、大丈夫?」

「きっと、すぐ見つかるよ」


 挨拶を終えた後、教室の一角が騒がしい事に気付く。


「なぁ、なんであそこだけ騒がしいんだ?」

「あぁ。水上さんが、飼ってた猫?だかを逃しちゃって、落ち込んでるらしいぞ」


 気になって目を向けた先には、これ以上ないほど落ち込んでいる委員長の姿があった。委員長の名前は水上潤叶(みずかみ・うるか)、黒髪ロングでスタイル抜群、容姿も素晴らしく整ったクラス一の美女だ。

 男女問わず人気があるためか、委員長を心配するクラスメイトで人だかりができている。


 猫探し、俺もできれば協力してあげたいな。

 このクラスで最初に話しかけて来てくれたのは委員長であり、それがきっかけとなってクラスに馴染めた。なので、委員長には少なからず恩を感じているためだ。


「でも、迷い猫か……心当たりは全くないな」


 それとなく見つけたら教えてあげよう。

 そう思いながら、今日も勉強に励むのだった。











 帰り道。神様が強化してくれた聴力と視力を使い、水上さんの飼い猫を探しながら帰っていた。特徴としては、体毛が金色らしい。

 目立つのですぐ見つかりそうなものだが、なかなか見つからないな。


「ん?なんだあれ?」


 ふと空を見上げると、奇妙な鳥?が飛んでいる。水色で、どこか人工的だ。そして、目を凝らさないと見えないが、細い糸が繋がっている。

 新しいラジコンか?いや……


「媒介にしているのは紙か、式神だな。術式からして、ただの偵察用か、戦闘能力は無さそうだ。あの糸で術者と視覚、聴覚を共有して……え?」

 

 あれ?なんでわかるんだ?初めて見たはずなのに、仕組みや作り方がそれとなくわかる。


「もしかして……」


 神様の言葉を思い出す。

『技能の習得能力も上げておこう。そうすれば、どんな魔術でも武術でも一目見るだけで習得出来るはずじゃ』

 嘘だろ?基礎知識も何もないどころか、存在すら知ったばかりの技能も習得できるのかよ。


「だとしたら、あの式神の術みたいなやつ、俺にもできるのか?」


 あとで試してみようと思いつつ、式神をもう少し観察する。

 一瞬目が合った気がしたが、気のせいか。

 猫はいないようだし、寄り道はここまでにして帰るとするかな。












「式神が見えてるわけ……ないわよね。ただ空を見上げていただけかな?」


 術者である水上潤叶(みずかみ・うるか)は、式神を通して見た光景を思いながら、そう呟く。

 行方不明となった猫神様を捜索するため偵察用の式神を操作していた際に、クラスメイトである結城幸助(ゆうき・こうすけ)と式神を通して目があった気がしたためだ。

 しかし、そんなことはあり得ない。多少霊感があっても見えないように、式神には特殊な術式を施しているためだ。


「それにしても、ここには居ないみたい。何か事件に巻き込まれて居なければいいけど……」


 未だ行方の知れない猫神様の事を思いながら、水上は別の地区へと式神を飛ばすのだった。

 











「ただいまー」

「うむ、おかえり」


 俺の言葉に反応し、黒猫が玄関まで出迎えてくれた。

 やっぱり、誰かといるほうが落ち着くな。家も1人暮らしには大きすぎるし。


「あ、オーブがいない」

「庭に全員出てもらった。話せばわかる奴らでな、敷地内に居させてくれるならどこでもいいと言っていたぞ」


 黒猫には、家の中のオーブ(白い光の玉)をどうにかしてくれと頼んでいたのだ。どうやらオーブと話せるらしく、庭に出てくれるように説得してくれたらしい。

 家の敷地は人一人分ほどの高さの塀に囲まれており、裏手の敷地内にはちょっとした広さの庭がある。昔は小さな畑があったらしいが、今はりんごの木が一本だけ生え、雑草が伸び伸びと育っている。庭ってことは、そこにオーブがいるのかな?


「うわぉ……」


 目を凝らすと、庭中を光の玉が飛び交っているのが見える。雪が舞ってるようで綺麗だが、ちょっと怖いな。

 ま、家の中に居られるよりかはマシか。これで熟睡できるし、趣味や勉強に集中できる。


「よし。夕食まで時間あるし、ちょっと作ってみるかな」

 

 使い切れず余っていた半紙を物置から探し出し、鳥の形に切ってから筆ペンで術式を刻む。


「何をしているのだ?」

「なんか、帰ってくる途中で式神?を見つけたから、作ってみようかと思って」

「お主、見ただけで式神が作れるのか?」

「たぶんね」


 これで完成っと。あとは、何らかのミラクルエネルギーを流し込めば完成かな?


「ほう、なかなか綺麗な術式を描くのぉ」

「わかるのか?」

「まぁな、それは見慣れた術式だ。しかし、残念ながら、お主からは霊力を感じない。おそらく、その式神は動かせんぞ?」

「霊力?」

「うむ。一般的に言うと、生命力だな。妖力や魔力と呼ばれる事もある。おもに魂から生み出される力で、この世界の事象へと干渉できる特殊な力の事だ」


 なるほど、式神を見たときに感じたミラクルエネルギーは、その霊力とやらだったのか。

 ん?ちょっと待てよ?


「俺には、霊力……生命力が無いのか!?」

「すまん、説明が悪かったな。あくまでも、体から溢れ出る余分な霊力(・・・・・)が無いだけだ。体内の霊力は儂には感じ取れないが、生きていると言うことは、生命活動に必要な霊力は生成されている。おそらく、生成量と消費量が均衡しているのだろう。それ故に、余分な霊力が無いのかもしれん」


 焦った。事実、一度死んだ身だからな。自覚がないだけで、実はまだ死んでるのかと思った。


「だがな。式神然り、術式の使用には体から溢れる余分な霊力を使用しなければならないのだ。それが無いということは、お主には式神を始めとしたあらゆる術は、使えぬ」

「マジか……」


 結構ショックだ。式神召喚!とかやってみたかった。

 ……いや、やってみなくちゃわからない!


「式神召喚!」


 半紙に手を置き、霊力?っぽいものを流し込んだ。すると、半紙の鳥が徐々に立体的な形状となり、白いカラスが生まれた。


「出来た!」

「お主、何をしておる!」


 黒猫がキレた。


「体調は!?めまいやふらつき、脱力感などはないか!?」

「だ、大丈夫。何ともない」


 何その薬の副作用みたいな項目。すごい心配してくる、一体どうしたんだ?


「まったく……霊力の無いものが無理やり術を使おうとすると、体内の霊力を使用する事になる。それはつまり、生命維持に必要な霊力を消費するということだ。下手をすれば、死に至る」

「マジかよ……」


 あぶねっ、また死ぬとこだったのか。


「しかし……体内の霊力を使ったにもかかわらず、お主の体調に変化はなさそうだな。ほんのわずかな量でも、使用後は何かしらの症状や後遺症が出るはずだ」

「我慢してるわけじゃ無いぞ?本当に何ともない」

「ふむ……」


 黒猫は少し考え込みながら、俺の作った式神を見る。


「まさか……いや、そんなはずは……うむ……」


 何やら独り言をぶつぶつと呟いている。


「どうやら、先ほどの説明は間違いだったやもしれん。お主は術を使える」

「え、本当か!?」

「ああ。しかし、体調が悪くなったらすぐにやめるのだぞ?」

「わかった!」


 おおおおお!嬉しい!

 オタクの端くれとしては、こういったミラクルパワーには目がないのだ。数々の名作の主人公達みたいに、ミラクルパワー使ってみたかった!


「それじゃあ早速。この式神は、どう動かせばいいんだ?」

「うむ。霊力を細い糸のようにして繋げば、思った通りに動かすことができるはずだ」

「こ、こうか?」


 指先から霊力の糸を伸ばし、鳥の尾にくっつける。すると、頭で念じた通りに鳥が動いてくれた。


「こいつはどんな事ができるんだ?火吐いたりとか、雷飛ばしたりとか……」

「そいつは偵察用だ。式神の中で、最も戦闘力の無い種類だな。その代わり、遠くまで飛ばせるうえに、そこそこ速い」

「おぉ……」


 習得能力向上のお陰で薄々感じてはいたが、やっぱり弱い式神だったのか。


「だが、感覚を共有して遠くのものを見る事ができるぞ」

「感覚を共有できるのは凄いけど、使い方考えると、ドローンと変わりないじゃん……でも充分か。早速試してみるよ」

「まてまて。遠くへ飛ばす前に、接続が切れた時のための命令を与えておいたほうがいい」

「命令?」

「何らかの影響で接続が切れれば、ただの動かない白い鳥になってしまう。じゃから、『接続が切れたら帰ってくる』といったように命令を与えておくといいぞ」

「なるほど……」


 それは便利だな。黒猫の言う通りに、『接続が切れたら帰ってくる』と言う命令を与えておいた。

 ついでに、『誰かに襲われたら殺さない程度に反撃する』という命令も与えておく。


「その命令は無駄になるかもしれんぞ。その種類の式神は本当に弱い。野生のカラスのほうが強いかもしれん」

「マジかよ……」


 ま、いいか。戦う機会とかないし。


「よし、飛んでけ!」


 白いカラスは元気よく羽ばたいていった。



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