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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第三章「魔術編」
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44話「神居古潭」




 博物館の見学が終わり、俺たちは次の目的地へとバスで移動している。


「次は、旭山動物園か」

「楽しみだね!」


 俺の何気ない呟きに対して委員長が即座に返す。委員長、随分とテンション高いな。


「お姉ちゃんは動物が大好きなんです。動物番組の時間になると有無を言わさずチャンネルを変えてきます」

「なるほど」


 潤奈ちゃんが愚痴を交えつつこっそりと教えてくれた。

 博物館からは後輩達と行動を共にするため、目の前の席には潤奈ちゃんとアウルちゃんもいる。


「バスは東門に停まるから、小動物舎を見つつサル舎に向かうのが王道のルート……でも、王道故にみんなもそのルートで見ようとするはず。だからこそ、敢えてフクロウ舎まで抜けてからエゾシカの森やオオカミの森を先に見るのほうが混雑を避けてスムーズに回れるルートなのかもしれないわね……」


 俺の横に座っている委員長は、自分で印刷してきたであろう旭山動物園の園内図を見ながら入念に計画を立てている。

 前から楽しみにしていたのだろう、完全に目の色が違う。


「お昼も園内で済ませないといけないんだっけか?」

「予定表にはそう書いてあるね。鹿肉メンチカツとかあるらしいよ!」

「それは、少し勇気がいるな」


 通路を挟んだ横の席では、滝川と相原さんと石田がお昼の予定を立てている。動物園見学はお昼を挟むため、昼食は各班で済ませなければならないのだ。


「あ、見えてきたのです!」


 アウルちゃんの言葉で外を見ると動物園の入り口が見えた。


「あれが旭山動物園か」


 どうやら目的地に到着したらしい。





「あ、見えてきたー!」


 リンの言葉を聞き、シロはクロの背から眼下に広がる景色を見下ろす。

 国道や橋といった人工物もあるが、広大な山々とそこに生える美しい木々、力強く流れる川の姿がクロ達の眼下に広がっていた。


「到着したぞ。ここが旧友の納める土地、神居古潭(カムイコタン)だ」

「おおー」

「カー」


 その光景にリンとシロが圧巻されていると、森の一角から大勢のカラス達が一斉に飛び立ちはじめた。


「む?」


 クロはそのカラス達の違和感にすぐさま気がつく。

 結界を張っているにもかかわらず、こちらの存在を認識してカラス達は一直線に向かってきているのだ。


「シロの仲間か?」

「カー」


 シロは首を振りながら『知らないカラス達だ』と答える。そして、近づいてくるカラス達の姿が明確になるにつれ、クロとシロの表情は歪んでいく。


「なんか臭ーい」


 目や足が無いだけでなく、骨や臓器を剥き出しにしているカラスもいる。その姿はどう見ても死骸であり、鼻が歪むほどの腐敗臭を放ちながらクロ達のもとへ接近してきていた。


「ふむ、何者かの攻撃とみるべきだな」

「カー」


 クロの言葉にシロは同意を示す。


「まずは反応を見るとするか。リンよ、奴らを斬れるか?」

「きれるよー」


 クロの言葉に頷いたリンは帯刀している純白の小太刀に手を掛ける。

 直後、音速を超える速度で振られた小太刀は鈴のような音だけを残して鞘へと収まり、斬り裂かれたカラス達は動かぬ死骸へと戻りながら落ちていった。

 斬撃の範囲はカラスの群勢だけを捉えていたため、後方に広がる森への被害はない。


「あっぶね!あんなのくらったらひとたまりもねぇぞ!」

「バカ者、声を出すでない」


 リンの斬撃後にカラスの群勢内から聞こえた声を、クロとシロは聞き逃さなかった。


「シロよ、あの群勢内に隠れている者達を引きずり出せるか?」

「カーカ」


 シロは『勿論だ』と返し、音波をカラスの軍勢とその後方に広がる森へと放つ。

 

「カカーカ、カーカ」


 『群勢内に巨漢1人と大きなカラスが1羽、後方の森に少女が1人いる』シロはそう伝えると同時に、死骸カラスの群勢内へと飛び込んでいった。


「リンよ。シロが敵を引きずり出した後、ワシが死骸カラスの動きを止める。その間に死骸カラス達を倒す事はできるか?」

「できるー」

「それでは頼む」


 クロが指示を出した直後、死骸カラスの群勢内から大きな漆黒のカラスと一つ目の巨漢が姿を現した。その後を追うようにして、シロも群勢内から飛び出す。


「なんだよあの白いカラス!近づいた瞬間に吹き飛ばしてきやがって!」

「霊力による衝撃波を放つ能力だろう。我の透過でも防ぎきれないのは厄介だな」


 愚痴る漆黒のカラスに、一つ目の巨漢はシロの能力を分析しながら答える。


「無事に引きずり出せたようだな。それではカラスの死骸達を眠らせてやるとしよう。『擬似・捕縛』!」

「とぶー斬撃ー!」


 クロの『捕縛』によって動きを止められた死骸カラスの群勢はリンの斬撃で細切れにされ、森の中へと落ちていった。

 空中には、リンを背に乗せたクロとその上空に待機するシロ。そして、巨大な漆黒のカラスと一つ目の巨漢だけが残っている。


「セイの操ってた死骸カラス共、何の役にもたたねぇじゃねぇか!」

「コロ、やめろ。死して尚協力してくれた森の同胞達を馬鹿にするでない」


 コロと呼ばれた漆黒のカラスの暴言を一つ目の巨漢は諌める。


「さて、貴様らは何者だ?どうしてワシらを狙う」

「はっ!それはこっちのセリフだぜ!馬鹿デケェ気配放ちながら姉御の縄張りに侵入してきやがって。テメェらこそ何者だ!」


 クロの言葉には一切耳を貸さず、漆黒のカラスは自らの羽の一枚一枚を漆黒の(つるぎ)へと変化させた。


「ふむ、姉御か……」


 漆黒のカラスが口にした言葉に引っかかりを感じたクロは、僅かに思案した後、口を開く。


「彼らの相手はワシがしよう。シロとリンは手を出さないでくれるか?」

「カー」

「んー、わかったー」


 こうして、クロと謎の襲撃者との戦いが幕を開けたのだった。









 1話の前の話に幸助達のイラスト付きキャラクター説明を上げております。

 絵は書籍のイラストを担当してくださった夕薙様に描いていただいたものです!


 少しでも見ていただけると嬉しいです。

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