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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第二章「異能編」
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36話『白いボスガラス/スマホの傷』



 時は少し戻り、セフェクとトイ、メルトの3名が幸助の家を襲撃する前まで遡る。


「カーカーカー、カカカカカ〜♪」


 札幌の上空に、鼻歌?を口ずさみながら飛ぶ白いカラスの姿があった。


 そのカラスの名はシロ。幸助の式神術によって生まれた、鳥型の式神である。


「カーカ」


 『今日は山の方まで行ってみようかな』とでも言うように、シロは一声鳴く。


 幸助が高校へ行っている間、クロが家の見張りをしてくれている時は、市内の観察を兼ねて空の散歩をするのがシロの日課なのであった。


「カー?」


 そんな時、ふと気になる光景を見つける。

 路地裏のゴミ捨場に、ビニール紐でぐるぐる巻きにされた一羽のカラスがいたのだ。

 そして、そのカラスを的にしながら落ちているゴミを投げつけるガラの悪そうな2人の男達がいた。


「「カー!」」

「「カーカー!!」」


 周辺の建物の上には、虐められている仲間を気にしながらも助けられずにいるカラス達が、男達を威嚇している。


「カー……」


 ある意味これも自然の摂理なのかと、シロはその状況に納得しようとする。

 だが、同じカラス同士思うところもあり、その光景から目を離せずにいた。


「いつもいつもゴミ漁りやがってよぉ〜、オラァ!」

「ガッ」

「そんなにゴミ欲しかったらやらぁ、おらよ!」

「カーッ」


 男達は相当酔っているらしく、加減を知らない様子だ。

 ゴミをぶつけられているカラスの羽には、血が滲んでいた。


「カー……」


 シロは考える。目立つ行動をとれば、主人の『平穏に生きたい』という目的を乱してしまうかもしれない。

 だがーーー


「うおっ、なんだぁこの白いカラスは?」


 ーーーこのまま放っておく事など、到底出来なかった。


「カッ!」

「いでっ!」

「ごはっ!」


 シロの鳴き声とともに発せられた衝撃波は、男達を2メートルほど吹き飛ばす。


「ば、化けもんだ、カラスの化けもんだぁ!」

「だからカラス虐めるなんて、おれぁ反対だったんだ!助けてくれぇー!」


 あまりの衝撃に酔いが覚めたのか、男達は必死になって逃げていった。


「カ!」


 逃げていく男達は無視し、シロは虐められていたカラスの元へ駆け寄る。

 そして極小の『飛ぶ斬撃』を放ち、紐を斬ってあげた。


「……カー」


 助けられたカラスは困惑しながらも、シロに感謝の意を示す。


「カ!」


 『一件落着』とでも言うようにシロは鳴き声を発し、飛び去った。

 これ以上この場に留まる理由は、彼には無いためだ。


「「「カー……」」」


 周囲の建物に留まっていたカラス達は、自分達が到達できる最高高度。その遥か上へ軽々と飛翔していく白いカラスの姿に、目を奪われる。そして、感嘆の声を漏らす。


 カラスの世界には、ボスやリーダーといった地位は存在しない。

 しかし、強い者に魅了され、安全な場所を求めるという本能は存在する。


 あるカラスは、ただの好奇心から。

 あるカラスは、強者への憧れから。

 あるカラスは、強者の庇護下という安全な場所を求めて。


 そんなカラス達が、シロの元へ集まるようになるのは必然だった。


「……」


 空の散歩の度に付いてくるようになったカラスの群れを見て、シロは呟く。


「カー……」


 『なぜこんな事になっているんだ……』と。




 




 





「うげっ、また負けた」


 スマホのパズルゲームをプレイ中なのだが、中々クリアできない。この面ちょっと難しいな。


「マスター、オ困リデスカ?」


 心配してくれたのか、ニアが話しかけてきた。

 あ!


「ニア、この面クリアできる?」

「オマカセクダサイ」


 ニアがそう言うと、画面内の映像が独りでに動きだす。

 そして、俺のクリアできなかったステージがみるみるうちに攻略されていく。


「うおぉ……」


 そして、プロのパズル操作を早送りで流しているかのような映像が続き、スコアが表示された。


『ステージクリア〜!ハイスコア達成:999,999,999ポイント〜!』


 攻略サイトですら見たことのない数値だ。


「ニア……ありがとう」

「オ困リノ際ハ、イツデモオ呼ビクダサイ」


 うん。取り敢えず、アプリゲームのお手伝いはしばらくいいかな。ゲームの運営から目つけられそうだから。


「そういえばニア。画面の傷って、こんなに小さかったっけ?」


 ニアが生まれる前。『玩具』の異能者であるシルクハットとの戦闘でついた画面の亀裂は、ニアを創り出した後も残っていた。

 ゲーム中にも気になっていたのだが、その亀裂が明らかに小さくなっているのだ。


「恐ラク、僕ノ身体ニ流レル電流ノ影響デショウ。亀裂ニヨッテ切断サレタ原子間ノ結合ガ、電流ノ影響デ再ビ繋ギ合ワサレテイマス」

「えっ、自然に直ってるって事か?」

「ハイ。足リナイ破片ハ、空気中ノチリヲ集メテ補ッテイル感覚ガアリマス」

「ほぉ〜」


 理屈はよくわからんけど、自然に直るって事か。ニア凄いな。


「ソレヨリモマスター、ソロソロオ時間デハナイデスカ?」

「あ、そうだった!」


 危ない危ない、忘れていた。

 今日は班のみんなと、買い物に行く予定なのだ。




 感想をいただいて気がつきました、評価が5万ポイントを超えていました!みなさんの応援のおかげです、本当にありがとうございます!


 最近はブクマ外しが怖くて数字を気にしないようにしていたのですが、上がっているのはやはり嬉しいです。


 物語はまだまだ続いていきます。これからも主人公達の活躍を見守っていただけると、ありがたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] なに、ちょっとした「空中元素固定装置」みたいな事を・・・ニア、恐ろしい子・・・。
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