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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第二章「異能編」
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29話「ビルを倒壊」





「ただいま帰った」

「クロ!」


 やっとクロが帰ってきた!


「何かあったのか?」

「何かって、色々あったよ……」


 居間に寝かせている雫さんを見ながら、『強化』の異能者に襲われた事を話す。


「なるほど……それで、その娘は無事なのか?」

「ああ、無事らしい。ニアが診察してくれたんだ」

「そんな機能があるのか。ニア、凄いのぉ」


 その感想デジャヴ。


「それよりも、これからどうすればいいかシロとニアと話し合ってたところなんだよ。俺としては、そろそろ警察に……」

「いや、その必要はない。あとは儂らに任せておけばよい」

「え?」


 任せておけって、何か解決策があるのだろうか?


「実はな、その件も含めて龍海(たつみ)と話をしてきたところなのだ。お主を襲った連中には龍海も困っているようでな。色々と手を回してくれると言っていた」

「えっ。委員長のお父さんも、解決のために手伝ってくれるのか?」

「そうだ。というより、本来ならば龍海が解決すべき問題であったらしいな」

「そうだったのか」


 話の詳細はつかめないが、とりあえず、委員長のお父さんも協力してくれるらしい。

 

「っていうか、そもそもなんで俺襲われてるんだ?」

「それは、龍海もわからんと言っていた。何らかの勘違いや偶然が重なったのかもしれんな」

「勘違いや偶然って……」


 ありえ…なくもないか。神様に生き返らせてもらうよりかは、確率あるな。


「聞ければその理由も聞いてこよう。とりあえず、今はその娘を見守ってあげるといい。儂はまた少し出かけてくる」

「聞いてくるって……えっ、またどっか行くのか?」

「うむ、ちょっとした野暮用だ。シロも借りていくぞ」

「カー」


 シロも行くのか。動物集会みたいのが開かれるのだろうか?


「まぁ、気をつけてな」

「うむ。では行ってくる」

「カー!」


 そう言い、クロとシロは出かけて行った。

 襲ってきた連中の概要とか今後の対策とか、もっと具体的な話をしたかったのだが……全然できなかったな。

 とりあえず、クロとシロが帰ってきたら、また話し合うとするか。


「……あれ?」


 そういえば、リンが居ない。

 またイサさんの家にお邪魔してるのだろうか?


「もうすぐ日もくれるしなぁ」


 心配だ。クロ達が戻ってきても帰ってこないようなら、探しにいくとするかな。













「戦闘が可能なランクCは1階に配置しなさい!強化や加工の異能を持つ者は、支部をできる限り補強するのよ。敵が何を仕掛けてくるかわからないわ、建物の強度は最大限まで高めなさい!」


 チエの指示のもと、階数15階にも及ぶ高層ビル型の仮設支部内では、組織の構成員が慌ただしく走り回っていた。

 その理由は、結城幸助の家から支部へ向かってくる集団の存在を、チエが感知したためである。


「金色の獅子と白いカラス。そして、白髪の幼女ね……新手を3体も仕向けてくるなんて、相手の指揮官は中々面白い趣向を持っているようね」


 向かってくる集団の姿を感知しながら、チエはひとり呟いた。

 その言葉には、たった3体で襲撃を仕掛けてくる相手の自信への焦りも含まれている。


(おそらく、3体とも只者ではないのでしょうね。金色の獅子と白いカラスは、黒い猫と同じ妖かしら?だとすると、相当厄介だわ)


 実のところ、チエは金色の獅子と黒い猫が同じ存在である事を知らない。

 結城幸助宅への襲撃の際、チエが見た時には既に、セフェク達3人はJRタワー屋上に放置されていた。そして、襲撃を行なったセフェク達自身も、倒された後の出来事をはっきりと覚えていなかったのである。


 そのため、金色の獅子をチエは新手と判断してしまったのだ。


 そんな考えを巡らせている中、チエのもとへ部下が報告に訪れる。


「攻撃と防御に特化したランクC異能者13名、一般戦闘員30名、1階への配置完了しました」

「建物の補強が行えるランクC異能者と一般戦闘員、各階に配置完了しました」

「わかったわ。あなた達も配置につきなさい」

「「はっ!」」


 チエへの報告を終えた部下は、すぐさま自身の待機位置へと戻っていった。


「トイ、メルト、あなた達は1階につきなさい。1階の指揮はトイに任せるわ。セフェク、あなたは私と共に8階で待機よ」

「了解なのである」

「はーい」

「了解しました」


 ディエスが未だ戻らない中、仮設支部内で最も強力な戦力である3名も、チエの指示のもと配置へとつく。


「……チエさん。これほど急なタイミングで仕掛けてくるということは、相手にも相当な自信があるという事。本当に大丈夫なのでしょうか?」


 襲撃に備える中、トイとメルトが去っていった室内で、セフェクは抱えている不安を口にした。


「大丈夫……とは、言えないわね」


 セフェクへ向けて、チエは率直な感想を口にする。チエ自身も同じ不安を抱えていたためだ。


「それでも、このビルに施した人員を突破して8階までくるのは、相当困難なはずよ」

「確かに……そうですね」


 チエの言葉に、セフェクは配置された人員の技量を考える。

 1階にいる異能者はランクCとはいえ、戦闘に特化した異能を持つ戦いのプロである。そして、異能を持たない一般戦闘員も、特殊な訓練を受けた戦闘のプロなのだ。


「それだけじゃないわ。こちらには『付与』と『寒熱』の人質もいる。彼らがいる限り、ビルを倒壊させるような派手なことは出来ない筈よ。そして、空を飛んで途中階や屋上から進入しようとすれば、強化を施した迎撃システムが作動するわ」

「確かに……戦闘系のランクA異能者が複数人で迫って来ない限りは、対処できそうですね」


 チエの言葉に、セフェクの不安は少しだけ晴れる。


「……そうよ。たとえ何があっても、対処してみせるわ」


 セフェクへ説明を行なったチエ自身も支部の防衛力を再確認し、襲撃者と対峙する覚悟を固めるのだった。



「ビルを倒壊させるような派手なことは出来ない筈よ」

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