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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第二章「異能編」
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21話「神の異能」





 公民の授業を受けながら、とある悩みが頭の中を埋め尽くしていた。


「戸籍と住民票……かぁ」


 その悩みとは、リンの戸籍と住民票についてである。リンは式神だが、普通の式神と違って消える気配がない。

 クロづてで委員長のお父さんにも聞いてみたが、そんな前例がないため、消し方もわからないそうだ。

 ということは、これからも俺と一緒に暮らしていく事になる。そうなると、身分証明が必要になる事態は、必ず訪れるだろう。


「どうするかなぁ……記憶操作できる術とか、無いのかなぁ……」


 催眠術の動画はいくつも見たが、習得はできなかった。どうやら、事前の暗示が重要な技能らしく、動画で見た範囲では習得に至るほどの情報が得られなかったのだ。

 陰陽術については、委員長のお父さんにまた聞いてみようとも思うが、すでにお世話になり過ぎてしまっている。身元を明かさずにこれ以上頼むのは、さすがに忍びない。

 ま、今の所は問題ないし、追い追い何とかするか。

 

「幸助、こんな問題もわからないのか?うっわー」

「うるせぇ、これくらいわかるわ!」


 宿題のプリントを開きながら悩んでいたせいで、滝川に勘違いされた。


「静かにしろ、そろそろ次の授業が始まるぞ」

「授業、めんどくせー」

「次の授業……あ!」


 石田に注意されて思い出した。滝川は気づいていないようだが、次の総合の時間はーーー


「ーーーみなさん、席についてくださーい。来月の『宿泊レクリエーション』の説明を行います」


 委員長が発した『宿泊レクリエーション』という言葉に、教室が騒がしくなった。


 『宿泊レクリエーション』とは、入学してからひと月後、来月初めに行われる2泊3日の宿泊授業である。

 ウチの高校は、1年に『宿泊レクリエーション』と『臨海学校』。2年に『林間学校』と『修学旅行』があり、宿泊系の行事が豊富なのだ。普段の授業がハードな分、息抜きは盛大に、というスタンスらしい。そして、数多くある市内の高校の中で、俺がわざわざここを選んだ理由の1つでもある。


「配ったプリントの通り、今日は班分けを行いたいと思います。5人で1班、それぞれの班に男女2名以上は入るようにしてください」


 教室がより一層騒がしくなった。

 お、チーム『リア充』が早速動き出したようだ。


「一緒に組もうぜ」

「トモくん!いいよー」


 リア充を筆頭に、他のグループも次々と動き出す。


幸助(こうすけ)成行(なりゆき)。俺たちも早く女子に声かけないと……」

「滝川、落ち着け」

「石田の言う通りだぞ。落ち着け落ち着け」


 俺たち3人が組む前提で考えると、女子が2人必要となる。だが、心配はいらない。ウチのクラスは、男子20人女子20人の計40人なのだ。最終的には、余った女子が話し掛けてくれるはずである。


「そんな悠長にしてたら、可愛い子取られちゃうだろ!」

「ふっ、今更何を言っているんだ」


 石田の言う通りだ。こいつは、今更何を言っているのだろうか。


 このクラスの男子は大きく分けて4つのグループに分かれており、暗黙のクラス内カーストというものが存在する。

 その中で最も階級が高く、発言力も高いグループが、チャラ男からいじられキャラまで様々なメンバーが集まっているチーム『リア充』だ。

 次に、野球部が中心となって構成されている、チーム『運動部』。アニメ漫画に問わず、様々な趣味人の集まるチーム『オタ』と続き……最後がここ、俺たち3人によって構成されている、チーム『有象無象』なのである。

 そのため、こちらから女子を誘ったところで結果は変わらないのだ。


「ちくしょう、なんでこのグループに……」

「去る者は追わないぞ」

「滝川、達者でな」

「このグループにいられて嬉しいなぁ!」


 ちなみに、カースト最下位だからといっていじめられるという事はない。リア充や運動部メンバーとも、普段は普通に話したりする。

 ただ、こういった班分けで余り物となるだけだ。


「み、水上さん。う、うちの班に入らない!?」


 おお!闇の組織(ファンクラブ)の視線に屈さず、チームリア充の1人が委員長を誘った!

 ちなみに、闇の組織の構成員はそれぞれのチームに満遍なく存在するので、その規模は不明である。


「その、誘ってくれてありがとう。でも、誘いたい相手がいるから、ごめんね」

「「「「!!!!?」」」」


 教室が一瞬、静まり返った。

 すぐさま、何事もなかったかのように話し声が戻り始めたが、聞こえるのは「いい天気だねー」「そうだねー」といった気の無い会話ばかりだ。

 話をするフリをしながら、みんなの意識は委員長へと向けられているのである。


「水上さんが……誘いたい相手?」

「落ち着け。我々は、あの方の幸せを願う組織。相手が誰であろうと、広い心でそれを見守る事こそが、我らの役目」


 たくさんの話し声の中から、なんかかっこいいセリフが聞こえてきた。おそらく、闇の組織の連中だろう。

 それを横目に教室を見渡すと、自分が選ばれるのではと期待に満ちた表情をしている者や、信じられないといった表情で固まっている者まで、色々な反応を示している。

 おもしろいクラスだ。


「あいちゃん、ごめんね」

「別にいいよ、もともと潤叶(うるか)に合わせるつもりだったし。それで?男子は誰を誘うつもりなの?」


 委員長と共に、あいちゃんこと相原栄華(あいはら・えいか)さんが歩き出す。

 身長は170近くあり、ショートカットでスポーツ万能な相原さんは、女性陣から絶大な人気を誇るイケメン女子だ。時折見せる可愛さのギャップによって、男子人気も相当高い。委員長に次ぐこのクラスのNo.2である。

 にしても、2人が並んで歩くと……凄いな。


「モーゼの、十戒だ」


 滝川が妙な事を口にしているが、まさにその通りだ。2人の歩みを止めないよう、人混みが割れて道が出来ていく。

 そして、2人が通り過ぎた後に立つ男子は、選ばれなかったショックで次々とうな垂れていく。


「ん?」


 どうやら、委員長はこちらへ向かってきているようだ。他のクラスメイトと同じように、静かに道を開ける。

 

「ゆ、結城くん」

「は、はひ?」


 俺の前で立ち止まった委員長が、名前を呼んできた。


「あの……」


 相原さんが、「がんばれ」とでも言うように委員長の背中を叩く。


「あの。結城くん達の班に入れてもらっても、いい?」

「えっ……よ、よろこんで」

「ありがとう!」


 俺の返事を聞いて、委員長が満面の笑みを見せた。状況を飲み込めないが、とりあえず可愛いっ。


「く、悔しいけど、ナイスだ幸助!」

「相原さんも含めてちょうど5人か。これで班は決まったな」


 滝川と石田も納得しているようなので、これで俺たちの班は決まりだ。

 それよりも、周囲の反応が気になって仕方ない。


「キャー!潤叶ちゃん大胆」

「……殺」


 女子からはキャーキャーと騒がれ、男子からは血涙を流しそうな目で睨まれる。

 なんだこの状況?デジャヴを感じる。

 

「結城……すげぇな」

「男は外見じゃない、ということか」


 チームリア充からは、失礼な感想が聞こえた気がする……。


「結城」


 ん?チームリア充のリーダー、トモくんこと佐藤知幸(さとう・ともゆき)が話し掛けてきた。


「認めるよ、結城。このクラスは、任せたぜ」

「……え?」


 この日、チーム『有象無象』はクラス内カースト1位の座に輝いた。



 




 






「トウリートウリー。ねぇねぇ、見て見て」

「ユイ、どうした?」


 西日本某所にある道の駅。その駐車場に停められたキャンピングカーの中では、1人の少女が興奮した様子でパソコンの画面を眺めていた。


「今ね今ね、組織の活動記録にハッキング仕掛けたのね」

「お前……あっちにも『電脳』の異能者がいるんだぞ?」

「大丈夫大丈夫。ランクB以下のひよっ子達には、負けない負けない。ま、活動記録掠めとるのでギリギリだったけどねー」


 今の生活を揺るがすような行為を何気なく行なっていたユイに、トウリは呆れたような表情を向ける。


「それより。これこれ、見て見て」


 トウリと呼ばれた青年は、パソコンの画面を覗き込む。


「これはっ、組織の連中が日本に来てるのか!?それに、札幌って」

「うん……雫ちゃん達がいる所だね」


 トウリの表情が歪む。


「今すぐ助けに……」

「ダメダメ!これ見てっ。ランクBが2人に、ランクAが3人も来てるんだよ!?トウリは強いけど、この5人が相手じゃ無理だよ」

「だが、このままではあいつらが捕らえられる。そうなれば、この世界が組織の手に落ちるかもしれない」


 トウリは悔しげな表情を見せながら呟く。


「その前に、これこれ、見て見て」


 ユイと呼ばれる少女は、トウリへ再びパソコンの画面を向けた。


「なんか、異能を持ってる黒い猫ちゃんが、ランクBの2人とランクAの1人を倒したんだってさ。しかも、瞬殺」

「なっ!」


 トウリは、その事実に驚愕する。

 報告書には「油断から生じた隙を突かれ……」とあるが、その程度で瞬殺されるような3人ではないことを、トウリは知っているためだ。


「それだけじゃないよ。黒い猫ちゃんの仲間っぽい高校生くんが、ディエスくんを倒したんだってさ」

「ディエスをか!?」


 ランクA、ディエス。普段はやる気がないが、こと戦闘においては組織の中でもトップクラスの実力を誇る異能者である。

 トウリ自身も、覚悟を持って挑まなければ勝てない相手だ。


「それにね。倒されたって言うより、気がついたら留置所に居たらしいよ。検挙した警察さんも、詳しい状況は思い出せないんだってさ。捕まえた理由も覚えてないんだって……まるで、無理矢理辻褄を(・・・)合わせた(・・・・)みたいに」

「それって……」

「うん。もしかすると、『事象の書き換え』かもしれないね」


 ユイは真剣な表情で語る。その言葉を聞いたトウリは目を見開き、声を荒げた。


「組織の目的、『神の異能』じゃないか!」

「もしかするとだよ、もしかするとっ。だからね、その高校生くんに、雫ちゃん達をお願いしようかな〜って思ってさ」

「なっ!」


 「何を言っているんだ!」と叫びかけ、トウリは押し黙る。重要な決断において、ユイが適当な考えを口にする人間ではないことを理解しているためだ。


「大丈夫大丈夫、ちゃんと考えての事だよ。この高校生くん、結城くんって言うんだけどね。経歴を調べたら、普通だったんだよ。どこからどう調べても普通、平凡な一般人そのもの」

「……『神の異能』を使って、偽りの経歴に書き換えたんじゃないのか?」

「その可能性はあるけど、それでも一般人を演じているって事は、悪い人じゃないと思うよ?制限や条件があるのかもしれないけど、金持ち!とか、ハーレム!とかなら簡単に叶えられそうだし」

「なるほど……」


 悪意や欲望に忠実な人間が『神の異能』を持っていれば、平凡な一般人を演じている可能性は低い。そう考え、トウリはユイの言葉に一応の納得を示す。


「ま、全部推測だけどね。取り敢えず今わかってる事は、結城くんには雫ちゃん達を助けられる力があって、組織とは敵対している。そして、私達には助けられる力はない。ってことかな」

「選択肢は、他に無いか……」


 ユイの説明を聞いたトウリは少しだけ考えた後、その提案に賛同することを決めた。


「それじゃあ、この人に助けを求めてみるね」

「わかった。だが、何かあった時は俺も動くぞ?」


 組織が『神の異能』を手にすれば、今の生活は確実に崩れ去る。ユイと話せるこの瞬間すらも尊いと思うトウリは、そう考え、静かに覚悟を決めた。

 

「大丈夫だよトウリ。もう、私たちの自由は奪わせない。誰にも、絶対に……」


 強く握られたトウリの拳を、ユイの手が優しく包み込むのだった。





 ディエスの正体は、2話目で主人公が捕まえた事になっている『凶悪犯』です。

 詳しい説明がなく、申し訳ありません。


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