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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第一章「陰陽術編」
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15話「怖いから。それ捨ててっ」





「くそっ!」


 気炎は『散炎弾』を放ち、とぐろを巻く龍から全力で距離をとる。


「時間がない……龍王!」

「グオァアアアアア!」


 龍は咆哮を上げながら、気炎へと迫る。


 『無上・龍王顕現』。それは、水上家に伝わる術の中でも最高位の秘術である。

 式神術の要素を持つこの術は、龍王を一時的に顕現し、使役することができる。しかし、その持続時間はあまりにも短い。

 潤叶の並外れた霊力操作と、保有霊力の全てを持ってしても、顕現できる時間は1分が限界である。だがーーー


「おいおい、とんでもねぇな……」


 ーーーその破壊力はまさに、一撃必殺と呼ぶに相応しい。

 気炎が先ほどまで立っていた場所は、龍の突進で跡形もなく消し飛んだ。その衝撃は、結界全体を震わせる。


「はーい。火野山ちゃん、アウト〜」


 緊張感の無い声が会場に響くが、それを聞いている者は誰1人として居ない。龍王の圧倒的な存在感によって、誰もが意識をそらせずにいるためだ。


「そいつは今の俺じゃ倒せねぇが、術者がやられりゃ消えるだろ!」


 気炎は潤叶へと接近を試みるが、龍王は主人を守るようにとぐろを巻き、それを阻む。


「くそっ。だが、長くは持たねぇはずだ。かかって来いよ!全て避けきってやるぜ!」

「言われなくても、龍王!」

「グォアアアアアアアアア!」


 すでに、龍の尾は消えかかっている。潤叶に残された時間は、あと僅かもない。

 だが、龍王を十全に操ることのできない潤叶には、気炎を捉えることはできなかった。


「もう、限界……」

「ごめんね、お姉ちゃん。私の霊力が渡せれば……」


 潤叶と潤奈は霊力の波長が似ているため、互いの霊力を共有することができる。しかし、それは姉である潤叶の霊力操作があってこそ可能な技であり、霊力操作の苦手な潤奈では渡すことができない。

 もちろん、龍王を操作している潤叶には、そんな余裕などないのだ。


「大丈夫よ……次の一撃で……状況を変えてみせる!」


 歯を食いしばりながら必死に意識を保ち、半透明の龍王に最後の命令を与える。


「グォアアアアアアアアアアアア!!!!」


 その覚悟に応えるかのように、龍王も消えつつある体で最後の突撃を行なった。


「あ?声がでかくなっただけじゃねぇか」


 気炎はつまらなそうな表情を浮かべ、龍王の突進を難なく躱す。しかし、目標を失ったにも関わらず進むのをやめない龍王の姿に、気炎は気づいた。


「爆鬼!避けろ!!」

「ガ!?グガアッ!!」


 爆鬼は場外へと吹き飛ばされ、身代り札が崩れ去る。


「はーい。爆鬼ちゃんもアウト〜」


 そして、炎の壁とともに龍王の姿は消えていった。


「チッ、最初から炎壁と爆鬼を狙ってたのか。やられたぜ」


 そうは言いながらも満足げな表情を浮かべる気炎は、さらに言葉を続ける。


「もうお前らは戦えねぇだろ。そこで大人しくしてろ。俺は三鶴城のところへ行く」


 そう言い終え、さらなる異変に気炎は気づいた。龍王の姿に意識を奪われていた観客も、その異変に気づく。


「あれは……誰?」


 その言葉を発したのは、霊力を使い果たしながらも辛うじて意識を保つ潤叶だった。


 炎の壁が消えた先には、尻餅をついている仮面の術師と膝をつく三鶴城幽炎。そして、切り落とされた三刀像の首を持つ、白髪の幼女が立っていた。











「君は……俺の式神なのか?」

「……」


 腰に短刀を携えた幼女は、黙ったままコクリと頷き、可愛く駆け寄ってくる……武者の首を持ちながら。


「ちょっ、怖いから。それ捨ててっ」

「……」


 残念そうな表情を浮かべながら、幼女は首を放り投げた……怖っ。

 

「あ、消えた」


 武者の胴体と首が、光の粒子みたいなのを放ちながら消えていった。式神って、倒されるとああいう風に消えるのか。


「私の三刀像が……一瞬で?その式神は、その式神は一体何なのですか!?」


 眼鏡スーツが叫ぶが、俺にもわからん。

 そもそも、武者の術式を真似て生まれたんだ、こっちが聞きたいわ。


「あ、炎の壁も消えてる」


 いつの間にか、俺と水上姉妹を隔てていた炎の壁が消えている。

 そして、散炎弾の人と水上姉妹が、驚愕の表情でこちらを見ていた。

 

「驚愕してるのは、俺の方だけどな……」


 炎の壁を発生させた後、俺は震える手で術式を完成させた。しかし、召喚の寸前に壁を突破され、大太刀が迫ってきたのだ。その時はビビって尻餅をついてしまった。

 だが、突然響き渡った大音量の咆哮によって眼鏡スーツの意識が逸れ、その隙に式神を召喚できたのである。


 誰の咆哮かは知らないが、感謝だな。


 そのあとは、姿が現れる前の式神に「武者を倒してくれ!」と叫び、気がつくと……武者の首と胴体がお別れしていたのだ。


「三鶴城!!」

「はっ、私としたことが……術者を直接狙います!気炎、あなたは空中から攻めてください!」

「了解だ!」


 散炎弾の人の声でフリーズ状態の眼鏡スーツが目を覚まし、2人で突っ込んできた。

 っていうか、散炎弾の人、空飛んでる!?あんな使い方もあるんだな。いつかやってみよう。


「はっ、そんな事考えてる場合じゃない!し、式神!あいつらを倒してくれ!」

「……」


 幼女はコクリと頷き、腰の短刀に手を添える。そしてーーー



「キャー!」

「みんな逃げろ!退避だ!」

「非常口はこちらです!はやくっ!」



ーーー鈴のような音色が響き渡り、つどーむの屋根が崩れ落ちた。






 たくさんの感想、誠にありがとうございます!

 指摘コメントは為になりますし、応援コメントは作者の原動力です!

 できる限り返信はしたいのですが、作者は時間の使い方が下手なので、返せない場合もあるかと思います。そこは、ご了承ください。すみません。

 ですが、感想は全て読ませてもらっています!今後とも、応援よろしくお願いします。

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