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異世界転生…されてねぇ!  作者: タンサン
第一章「陰陽術編」
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13話「Y◯uTube様、ありがとう!」




 でかい紫色の武者が、すごい勢いで迫ってくる。めっちゃ怖い。


「ほっ!おわっ!よいしょっ!」


 振り下ろし、横薙ぎ、切り上げ。武者の持つ大太刀から繰り出される技を、紙一重で全て避ける。


「なるほど、体術の心得もあるようですね」

「ああ、見様見真似だけどな!」


 結構ギリギリだった、容赦なさすぎるだろ!この身代わり札とやら、本当に大丈夫なのだろうか……不安になってきた。


「おわっ!」


 今の袈裟斬り、マジでやばかった。

 式神といえど、剣術の腕は一流らしい。いや、大太刀2本振り回せる膂力と体格も考えると、一流以上だな。


 そんな化け物の斬撃をなぜ避けれるのかというと、人気動画サイト、Y◯uTube(◯ーチューブ)様のお陰だ。

 試合参加を決めてからの2日間、俺はあらゆる武術動画を見漁った。そのおかげで、初動からの攻撃予測、適切な回避と足運び、相手の攻撃しづらい立ち回り、そのどれもを高いレベルで再現できる。

 神様、Y◯uTube様、ありがとう!


 そんな調子で斬撃をくぐり抜けていると、無駄だと悟ったのか、攻撃が止んだ。

 今がチャンスだな。武者の間合いから離れ、この隙に俺も式神を出すことにする。


「半紙っ、半……痛っ!」


 直感的に避けたのだが、躱しきれなかったようだ。左肩から先の袖が、無くなった。

 あわてて腕を確認するが、切れてはいない。身代わり札、疑ってごめん。


「にしても、何だ今の?」


 斬られた事は確かだが、間合いからは離れていた。刀身は1メートルちょっとなので、体を傾けながら腕を伸ばしても、間合いは3メートルも無いはずだ。

 それを見越して5メートルは離れていたのだが……まさか、斬撃を飛ばしたのか?


「ふむふむ、刀身に霊力を纏わせて、斬撃と共に飛ばしたのか。威力は距離に応じて減衰していく感じね」


 神様のくれた習得能力、すごいな。技をちゃんと見ていなかったために理解が遅れたが、技の発動後でもある程度理解し、習得できるらしい。

 だが、ピンチなのは変わらない。いくら減衰するとは言え、あの膂力なら試合場の端から端まで斬撃を飛ばしても充分な威力になるだろう。


「うおっ!またか……って、半紙!筆ペン!」


 また斬撃が飛んできた。だが、狙いは半紙と筆ペンだったらしい。俺に術を使わせないつもりか。それと、手がインクでベトベトだ。


「筆ペンも半紙も、まだ予備があるけど……」


 このままじゃ、式神を出す暇がない。何か攻撃の手段でもあれば違うんだが……。


「……あ!」


 炎の壁の向こうから聞こえてくる戦闘音で気づいた。もしかして……あれって、術式だったのか!


「何か閃いたようですね。ですが、半紙に術式を描く暇など与えませんよ」

「いや、意地でも描かせてもらう!」


 幸助と三鶴城の攻防は続く。










爆鬼(ばっき)、壁を維持しとけ」

「ガウッ!」


 気炎の命令を受け、爆鬼(ばっき)は炎の壁へと霊力を流し始めた。


「あれが、爆炎の鬼……」

「安心しろ、爆鬼(ばっき)は壁の維持で使えねぇ。相手は俺だけだぜ」


 潤叶の言葉に、気炎が答える。


「お、俺もいるぞ!気炎!」

「あー……そうだな。とりあえず、当主様は後ろに下がっててくれや」

「わ、わかった。危ない時はいつでも呼べ、加勢するぞ!」

「へいへい」


 自らの(あるじ)を適当にあしらい、気炎は水上姉妹へと向き直る。


「待たせたな、早速いかせてもらうぜ。『散炎弾』!」

「ディーネ、お願い!『ウォール』!」


 迫り来る炎の散弾を、潤奈は水の壁を出現させることで防いだ。


「それが西洋の『精霊術』ってやつか。お前の周りを飛んでる青い玉が、精霊ってやつなのか?」

「精霊じゃなくて妖精(・・)よ!」


 気炎の疑問に、訂正を加えつつ潤奈は答えた。

 水上潤奈は、水の妖精『ディーネ』を介して精霊術を行使する精霊術師なのである。


「ま、精霊だろうが妖精だろうが、どっちでもいいけどな。さっさとお前らを倒して仮面野郎とやりたかったんだが、お前の術も中々面白そうだ。せいぜい楽しませてくれや!」

「余裕でいられるのも今のうちよ!ディーネ、『ランス』!」


 空中に巨大な水の槍が生成され、気炎へと放たれる。

 精霊術にはいくつかの欠点がある代わりに、少ない霊力で強力な術を行使できる特性があるのだ。


「『散炎弾』!!』


 水の槍を、気炎は炎の散弾で迎撃する。

 精霊術による強力な一撃。さらに、火と水による相性の優位性。通常であれば、その程度の火術で防ぐことなど不可能である。しかしーーー


「今の術は、まあまあだったな」

「そんな……」


ーーーそこには、無傷の気炎が立っていた。

 観客席からは歓声が響き渡る。

 相性の優位性をもってしても水の槍が届かなかった理由は、圧倒的な経験値の差である。

 初見でありながら、槍の形状から構造の不安定な箇所を見極め、その一点を重点的に撃ち抜いたのだ。気炎自身は何も考えていない。だが、経験からくる直感で、それらの芸当を無意識に行なっているのである。

 

「潤奈、よくやったわ。次は私の番よ」


 落ち込む妹の肩を叩きながら、潤叶が札を取り出す。


「水、槍、撃、『連水槍』!」


 潤叶も水の槍を生成し、気炎へと放つ。その数は3本。だが、1つ1つの大きさは潤奈が生成した槍よりもはるかに小さい。


「おいおい、舐めてんのか?」


 先ほどと同じく、炎の散弾が3本の槍を迎撃した。


「き、気炎!」

「あ?ぐあっ!」


 気炎のはるか後方にいた火野山が異常に気づき、声を上げる。だが、遅かった。


 気炎の体を、背後から迫る2本の槍が貫いた。


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