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  別世界の道化師 作者:神薙
一章
第十八幕 道化師と魔法使い
 揺れる馬車の中、もう少しで夕暮れということもあってか、中は疲れた雰囲気に満たされていた。
 かく言う俺も、馬車は当然初めて乗ったので尻がかなり痛い。なんか、この馬車は早い代わりに馬の気性が少し荒いらしく、さっきから何度も大きな石を踏んでいるので馬車がかなり揺れる。
これがなかなかきつく、何度か瞬間移動を使ってやろうかとも思ったが、場所も分からないうえに、そもそもこんなに大勢の人数を連れていけるとも限らない。
 一日中馬車に乗り続けると、屈強な騎士でも少しは疲れるらしく、辺りも暗くなり始めた事もあって今日は何個かの小隊に別れて野宿をする事になった。
 つまり、当然部隊に分かれなきゃならないわけで当然ファンネル達とは一緒になれるとは限らないわけだ。

「どうしてこうなった・・・」

 俺の目の前にいるのは、二人の俺と同じくらいの少女とリックだった。

「しょうがないじゃないですか。フィアさんは副隊長と居たいって言うし・・・。それに、あなた方と僕の部隊の人数でちょうどバランスが取れるんです」
「私はヒエンと居られるだけで十分だもん」
「ありがとう、マウ」

 俺は、そう言ってマウの頭を撫でるとマウは嬉しそうにえへへと笑う。
そして、リックの横では二人の少女が俺の方を見ながら、小声で話をしている。まあ、俺にはダダ漏れなわけだが。

「で、そこの二人の名前は?」
「あ、はい。そこの二人の名前は―――」
「よろしく、ミーラ。レニー」

 いや、だって口に出さなくても分かるし。そんな、あからさまに体育座りで啜り泣きされてもねえ・・・。

「あの・・・」

 弱々しく俺に声をかけてきたのは、背が低めで髪の毛の色は赤っぽい茶色の娘だった。眼の色も髪の毛と同じように、赤っぽい茶色をしている。確か名前は―――。

「レニーであってるよね。どうかした?」

 やっぱり女の子には優しくしないとな。

「えっと、リック隊長の魔法で無傷だったって本当なんですか・・・?」
「うん、ホントだよ」

 俺がそう言うと二人は不審そうな顔をした。
 ・・・まあ、当然だよな。リックは一応隊長みたいだし。

「二人共、失礼だよ。緋焔さんは僕の目の前で、確かに最強魔法をくらっても無傷だったんだから」

 まあ、一応喰らったんじゃなくて打ち消したんだけどな。わざわざ言って、ややこしくする必要も無いだろ。

「でも、こんな幼女趣・・・いきなり現れた人がリック隊長の魔法で無傷だったなんて」

 そう失礼な台詞を口走りそうになったのは、ミーラ。
 見た目は、黄緑みたいな黄色みたいな色をした髪をしていて、長さは長くもなく短くもなくといった感じで、金色の瞳をしている。

「そんなに言うなら二人とも、俺に自分の使える最強の魔法を使ってみるといいよ」

 こうするのが一番手っ取り早いし、何より二人の話していた内容が気に入らないし。ロリコン呼ばわりしておいて・・・。俺にも、多少我慢の限界はある。
 俺がそう言うと、レニーは少し困った感じでリックを見るがリックはただ微笑むだけ。ミーラは不敵な笑みを浮かべる。

「二人とも問題は無いみたいだし・・・。緋焔さん、お願いできますか?」
「もちろん」

 俺はそう言うと同時に辺りに結界を張る。更に、リックとマウだけを小型の少し強力な結界で包む。

「凄い・・・。これだけの護法壁を一瞬で・・・」
「で、どっちからにする?」
「レニーからお願いします」
「って、ミーラは言ってるけど、レニーはそれでいい?」
「はい。大丈夫です」

 俺はレニーに確認をとってから、ミーラにマウ達をガードしているのと同じ結界を張る。
 なんか護法壁ぐらい、自分で張れるとか言ってるけど、とりあえず無視。

「準備はいい?」
「はい、大丈夫です」

 レニーはそう言うと、ローブの中からかなり厚いハードカバーの本を取り出す。

「それは・・・?」
「これは魔導書です。魔法を使うときの補助に使ったりするんですよ」
「へえ〜」

 魔導書か・・・持っていて損は無いかな。

「それじゃあ、いきますね」
「あ、そうだ。魔力がほとんど空になるような魔法使ってもいいから」
「はい」

 レニーはそう言うと、魔導書のページをパラパラとめくり始める。そして、目的のページを見つけたのか、ページをめくるのを止め静かに目を閉じる。

「《彼の者に癒される事の無き炎を》」

 レニーが歌うように言った瞬間、魔導書が光り巨大な炎が酸素を大量に消費しながら俺に襲い掛かる。

「対象の放つ魔法を消滅」

 レニーの炎が俺とレニーのちょうど中間に来た頃に、俺はレニーの炎を消滅させる。

「あ・・・」
「おっと」

 俺はレニーが倒れる事を見越して、レニーの後ろに瞬間移動する。すると、ちょうどいいタイミングでレニーが倒れそうになるので、後ろから支える。

「リック、レニーの魔力量ってどれくらいだ?」
「僕よりちょっと少ないくらいです」

 俺はレニーの魔力量を確認すると、レニーに俺の魔力を分ける。

「あ・・・、凄い。こんなに魔力が戻るなんて・・・」
「どう?魔力は戻った?」
「はい。もう大丈夫です」

 と、いつの間にかお姫様抱っこの形になっていたので、意識されない内に降ろす。
 ちょっと残念だけど・・・。

「あ・・・」

 俺が降ろそうと体勢を低くしたところで、気付いてしまったのかレニーの顔が耳まで赤くなる。

「・・・悪い」
「あ、いえ。大丈夫です」

 俺は内心残念だったが、マウ達にとやかく言われたくないので出来るだけ優しくさっさと下ろす。
俺はミーラの結界を解こうと振り返ると、レニーが後ろから声をかけてきた。

「あの・・・。お、重く無かったですか?」
「全然。むしろ軽すぎるくらいだよ。ご飯はしっかり食べた方がいいよ」

 今思い返すと、レニーはめちゃめちゃ軽かったと思う。年齢的にはもっとあっていい筈なのに、まるで小さい子を持っているみたいに軽かった。

「そうですか」

 俺がそう答えると、レニーはホッとしたような仕種を見せたので、俺はミーラの結界を解きレニーに結界を張り、リック達のいる所まで移動させる。

「よし・・・。次はミーラだったよね」

 俺は遠くから走ってくるミーラのすぐ近くに瞬間移動する。

「よし。じゃあ、始めようか」
「え? 今、向こうにいたのになんで・・・」
「細かい事は気にしない。いつでもいいよ」

 俺はそう言いながら、自分に害を与える魔法を無力化する結界を体に沿うように張る。

「それじゃあ・・・遠慮無く行かせてもらうわよ!」

 ミーラはそう言うとローブの中に手を突っ込み、二十センチくらいの棒を取り出す。

「《彼の者に火炎の熱を》!」

 ミーラが叫ぶと、俺を中心とした辺り数メートルの草が蒸気を発しながら、茹で上がる。
もちろん、俺には一切効いてないけど。

「これは・・・水分の熱を操作してるのか」

 その状態が数秒続くが、ミーラの体が大きく揺れるのと同時に草からも蒸気は出なくなり、熱気も引いていく。
 俺はミーラの近くに瞬間移動し、すぐにミーラの肩に手を置き魔力を分ける。

「これでいいな。大丈夫?」

 俺は肩から手を離し、ミーラの無事を確認する。

「・・・・んでした」
「ん、何?」

 ミーラが何か言ったのは聞こえたけど、内容までは聞き取れなかったので聞き返す。

「失礼な事を言ってすみませんでした!」
「別にいいよ。そこまで怒ってないから」

 そりゃあ、ロリコン扱いされれば我慢は出来ないけど、相手は女の子だし、勘忍袋の緒をぶった切った訳でも無いし。

「ほら、顔を上げて。皆の所に戻って晩御飯にしよう」
「はい!」
「・・・このまま歩いて行ったら転ぶよな。きっと」

 ちょっと遊びすぎたのか、辺りは暗く十メートルくらい先のリック達を見るのも、一苦労なくらいの暗さになってしまっている。
 このままじゃあ、足元がよく見えなくて転ぶ心配があると感じた俺は、能力を使って空中に浮くライトを創る。それをとりあえず一直線に前に飛ばしながら、マウ達を捜し近くに待機させる。

「よし。これでオッケー。ミーラ、ちょっと掴まってて」

 俺はミーラが手を握ったのを確認し、マウ達の近くに待機させてある光りの近くに瞬間移動する。

「ただいま」
「おかえり、ヒエン」

 俺達が転移すると、ちょうどマウ達の前に着いた。
 俺は隣で呆然としているミーラの意識を戻す。

「お〜い、ミーラ? 大丈夫か?」
「今のって・・・瞬間移動ですよね?」
「そうだな」

 ある座標から別の座標に瞬間的に飛んでるんだから、瞬間移動だよな。

「そんな・・・それって既に次元魔法の部類ですよ。なんで、緋焔さんが・・・」
「なんでって言われてもな・・・」

 正直に話しても問題無い気はするが、やっぱり言わない方がいいな。一応、リックの隊員とはいえ上司には逆らえ無いからな。

「正確には瞬間移動じゃなくてな、脚に魔力を溜めて移動時にその魔力をバネにして跳んでるだけなんだ。その時に出る衝撃は全部魔力で緩和してある」

 説明はこんな感じでいいか。それにしても、随分それっぽい説明がすっと頭に浮かんだな。・・・まあ、この場を切り抜けられたんだからよしとするか。

「でも・・・」
「ほら、ミーラもいつまでも緋焔さんを困らせないで。遅くなったけど晩御飯にしよう」
「・・・はい」

 説明にイマイチ納得していないミーラが、反論をしようとするが、それまでずっと空気だったリックがミーラの声を遮るように身を乗り出して言ったので、ミーラもそれ以上追求する気は失せてしまったようだった。
俺にとっては都合がよかったから、嬉しい誤算だったけど・・・。

 マウ達女性陣が晩御飯を作ることになった為、俺とリックは馬車の中に押し込まれてしまった。
 余談だが、俺は一人暮らしするのに困らない程度に、家事は出来るがマウは俺がそこそこ料理が出来ることを知らない。

「リック」
「なんですか?」
「なんか分からないけど、ものすごく眠いんだ」
「そうですか」

 俺はぼんやりとした頭を無理矢理働かせながら、どうでもよさそうに空を見ているリックに、目を閉じながら伝える。

「晩御飯が出来たら起こしてくれ。でも、マウに起こされても起きなかったら起きないから」
「分かりました。おやすみなさい」
「おやすみ」

 俺はその言葉を言った後、薄れ行く意識を手放し、まどろみの中へと沈んで行った。



作者「まず、始めに。更新が遅くなってしまってすみませんでした」
エセ「今回はいつになく遅れたんやないか」
作者「・・・面目ない」
エセ「で、次は?」
作者「次は本編じゃなくて、キャラクター紹介をしようと思います。まだまだキャラも増えるし」
エセ「どのくらい増えるんや?」
作者「主になるキャラが今の所3人位。あと、一話限りのモブキャラもでるだろうから、後10人近くかな」
エセ「・・・・・・」
作者「それでは皆様、今後ともよろしくお願いします」

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