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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫ 作者:Wiz Craft

〆 第三章 『変わり行く世界』

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 S27 パピィ星人現る!?

 集合時間はPM1:00。キャンプ場の入り口立て札にて集合との事だった。
 たっぷりと休息を取ったエルツは、時間の十分前から立て札前でパーソナルブックを開き、掲示板の書き込みログを見つめていた。

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 City BBS
▼パーティのお誘い掲示板

 □投稿者 Puppy キノコ星人狩りに行くパピィ#

 勇敢な冒険者諸君、よく来たパピィ
 本日13:oOよりキノコ星人狩りを敢行するパピィ
 パピィとしては、少しでも奴等を駆逐する事が使命だと感じてるのだパピィ
 パピィと同じ志を持つ冒険者は是非ここに集うが良いパピィ!
 歓迎するパピィ。大いに書き込むパピィ#

 □返信 Apple 

 参加したいのだアポゥ。
 当方、キノコ星人狩り経験者だアポゥ。
 一生懸命頑張るからよろしくアポゥ。

 □返信 Puppy

 うむ、参加を認めるパピィ
 存分にその力を発揮するがいいパピィ
 楽しみにしてるパピィ#

 □返信 Elz

 あの、すみません。
 当方、Lv7出戻り組のエルツと言います。
 一度、キノコ狩りについては経験してるので、
 立ち回りについては問題無いと思います。
 よろしければパーティ参加させてもらえないでしょうか?

 □返信 Puppy

 うむ、エルツ隊員の参加を認めるパピィ
 抜かる事無く、一生懸命に励むといいのだパピィ
 ここで集合についてのお知らせパピィ

 ○集合場所:トロイの森前キャンプ場(入り口立て札付近)
 ○集合時間:13:oO

 もし、時間に遅れたら地中引きずり回すから覚悟しとくといいのだパピィ
 以上、質問は許さないパピィ

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「きっとあの書き込みはふざけてただけだよな……うん、きっとそうだ」

 そんな呟きを漏らしながら約束の時をただじっと待つ。
 周りのプレイヤーからの青白い視線を受けてふと呟きを止めるエルツ。

――もしもの事もある……万が一の時はどうする?――

 丁度、その時だった。遠くから陽気な歌い声が聞こえてきたのは。

「パーピパピ パーピパピ わーたしは陽気なパピィ!さんはい!」

 近くに居た冒険者を巻き込んで、強引にオリジナルソングを合唱させようとするその少女。おそらくはウィル達と同い年くらいだろう。桃色の髪の両脇を二つのお団子でまとめ、ウーピィとコカトリス装備を織り交ぜたその見るからにファンシーなその姿と、その一瞬の立ち回りからエルツはその人物像をはっきりと感じ取る事が出来た。

――よし、帰ろう――

 そうして、エルツが本気で帰ろうかと足を踏み出しかけたその時だった。

「あー!エルツ隊員発見」

 語尾に音符が付きそうなほど、陽気な大声でそう言い放った少女は笑顔でエルツの元へとやってきた。

「いや、あの……人違いじゃないですか?エルツって誰です?僕Elzと書いてエルゼットって言うんですけど。それじゃ」

 そうして、エルツが彼女に背を向けて立ち去ろうとしたその時、その手首が後ろからギュッと掴まれた。

「合格!エルツ隊員おもろい!」

 真正面からその満面の笑顔を直視する。桃色の髪とは漫画ではよく成立しているものの、実際に目の当たりにしてみると、なかなか筆舌にし難いものがある。そして、エルツはそんな彼女を見ていてある事実に気付いた。
 同時にそう思ってしまった自分に激しく後悔する。この女の子、見目はすごく可愛いのだ。あどけない、その幼い顔立ちは、ある種の者達からすれば垂涎の的だろう。だが、残念ながらエルツにはそんな趣味は無い。
 今、エルツの思考の中はいかにこの窮地を乗り切るか、その一点だった。
 こうした状況を予想出来なかったわけではない。ただ、エルツが持ち合わせていた最悪の想定の一歩右斜め上を突いたに過ぎない。
 そんなエルツの苦悩も他所に、そこへもう一人の人物が登場する。
 コカトリスのフェザー装備に身を包んで現れたのは、緑髪の青年だった。

「こんにちは。アップルです。アップルはアップルでもグリーンアップルです。今日は一日よろしくですアポゥ」

――いや、意味がわからん――

 恐らくリーベルトやフランクと同い年くらい、高校生といったところか。やや幼顔の青年。ポンキチと並べたら、同い年にも見えかねないが、自分は騙されるつもりは無い。
 湧き起こる妙な敵対心を必至に抑えつつエルツは彼らに笑顔を向ける。

「パピィさん、アップルさん今日は一日よろしくお願いします」
「違ーう!」

 エルツのその言葉に、少女が大声を張り上げる。

「違うって……何がでしょうか」

 思わず敬語で聞き返すエルツ。

「わたしの事は、パピィ隊長と呼ぶように」

 そう言い切ったパピィにエルツが呆然としていると、隣でアップルが声高らかに叫んだ。

「はい、パピィ隊長!今日は一日よろしくお願いしますアポゥ!」
「うむ、よろしいアップル隊員。君も合格!」

 なんだ、この流れは。かつてない身の危険が迫っている気がする。

「あのう、パ……パピィ隊長」
「なんだね、エルツ隊員」

 恐る恐るその名を口にしたエルツに、さも当然といった表情を返すパピィ。

「今日のメンバーって……これで全員ですか?」
「うむ、その通り」

 身も蓋もないあっけらかんとしたその返答に俯くエルツ。

――本当に……この三人で?――

「じゃ、行くよ。はい、じゃ皆歌って。パーピパピ、パーピパピ とーっても陽気な探検隊!はい!」

 隣から上がるアップルの歌い声。

「パーピパピ パーピパピ 僕らは陽気な探検隊!」
「エルツ隊員、声が聞こえない!」

 上がるパピィの怒声にエルツが思わず突っ込む。

「アホか!」
「誰が美人だ!」

 誰がいつ美人と言った。心の中でそんな悲しい突っ込みをしつつ、エルツは覚悟を決めた。
 何事も経験だ。自分とは大よそ、関わり合いの無いような人々との交流からこそ、きっと得られる経験値は多いだろう。

「エールーツー隊ー員ー!!歌って!」

 覗き込むパピィの顔。
 エルツは真剣な眼差しで彼女に頷いた。
 その表情にパピィがふと閃いたように口を開く。

「そっか。あれ、もしかして歌いにくい?三拍子にする?」

――いや、事態が悪化するから四拍子でお願いします――

 そうして一同はキャンプ場からトロイの森へと出発したのだった。

「パーピパピ パーピパピ トーロイの森でーキーノコ狩りー」

 草原に響くはエルツの悲しき歌声。
 だが、重ねて言おう。何事も経験なのだ。
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