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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫ 作者:Wiz Craft

〆 第二章 『星々の輝き』

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 S36 星の送別会

 送別会は終始笑いに絶えなかった。皆笑顔で今までの思い出を口々に振り返り、絶えない笑いの中で思い出を昇華させる。これは終わりではなく新しい旅立ち、オルガだけでなく皆にとっての再出発でもある。

「結局、最後までオルガさんには勝てず終い。勝ち逃げは卑怯だって、この前も言ったんですけどね。もう少しすりゃ抜く予定だったのに残念」

 そんなドナテロの語りに、笑みを漏らす一同。

「オルガ、最後なんだから相手してやったらどうかね?」

 コッペルのその言葉にオルガが微笑する。

「そうだな。少々酔ってはいるがそれでも良ければ行くかドナテロ?」
「マジすか」

 半分冗談で言ったドナテロは予想外の展開に笑みを零していたが、満更でもない様子だった。そんな話の展開に思わず声を漏らす者が居た。

「いいな、僕もやりたい」とスニーピィ。

 スニーピィの言葉に次々と意思表示を挙げていくコミュニティメンバー達。

「おいおい、お前等。オルガの事、超人かなんかと勘違いしてんじゃねぇか。いくら何でもこの人数は」

 とナインツが愉快そうに笑い声を漏らすと、オルガは「構わんよ」と笑顔で一言そう呟いた。本当に皆オルガが好きなのだ。普段はあまり口数は多くなく、あまり前に出るタイプではないが、その存在感は人一倍だった。
 成り行きから決まった手合わせに一同は胸を躍らせて外へと飛び出て行く。
 中央広場へと出た一同。それぞれの想いを胸に装備を整えるメンバー達。エルツの視線の先にはあの時見た全身鎧のオルガの姿があった。

「嬉しいね。あの装備本気だぜ。今日闘う奴は覚悟しないとな」

 そう嬉しそうに笑みを漏らすドナテロ。本気装備を纏ったオルガに対してまずトップバッターをきったのはドナテロだった。万全の状態同士で最期にオルガと手合わせしたい。ドナテロのその想いは強烈な突きとなってオルガに繰り出される。オルガはその突きを真正面から受け止め、両腕に握りしめた両手斧を振るう。その攻撃を寸前でかわし再び距離を取るドナテロ。

「オルガさん、タダじゃ辞めさせませんよ」

 ドナテロの言葉に全身鎧の向こう側でオルガが微笑したような、エルツにはそんな気がした。
 再び武器を交える二人。一進一退の壮絶な攻防を繰り広げながら、二人は言葉を交わす。

「ドナテロ、お前がこのコミュニティに入ってきた時から、その戦闘センスには驚かされたものだ」

 一撃を交える度に、オルガはドナテロに言葉を投げ掛ける。

「どこか飄々としていて、時にはおどけ皆を楽しませ。しかし、物事を冷静に見極めるその観察眼は並外れたものだ。これからは、このコミュニティを先導するような、願わくば背負う者としての自覚を身に付けて欲しい」
「俺にそんな大層なモノ背負えますかね」

 そう言いながら、ドナテロは槍を頭上で回転させ始める。

「その答えを見せてくれ」

 オルガの言葉にドナテロは応えるかのように、あの構えへ。

「出るぞ、ステラフリッツ……」

 ケヴィンの呟きに皆は息を呑んで様子を見守る。
 皆の視線を切り裂くように、至高の突きが今オルガ目掛けて放たれる。

「Stera Flitz[ステラ・フリッツ]!!」

 ドナテロの掛け声と共に槍に対して両手斧を横に構えるオルガ。

「真正面から受け止める気だ!?」

 スニーピィが驚きの声を上げる中、シンはその光景にふっと微笑を漏らした。ステラフリッツを防ぐ最善の方法は出される前の予備動作で潰す事。オルガともなれば、そんな事は百も承知の事だろう。それでも、オルガは敢えてこの技をドナテロに出させたのは、真っ向からドナテロの気持ちを受け取るために他ならない。だが、そんな理由でステラフリッツの直撃を正面から受けようなどとは、正気の沙汰ではない。シンが笑ったのはそのためである。

「鉄壁のオルガともあろう者が、考えられない光景だな」とナインツ。
「だけど私は嫌いじゃないわ。こういうの」

 そう微笑を浮かべながら呟くレイラ。
 一同が見つめる視線の先では、一直線に放たれたドナテロの突きを受け止め、立ち尽くすオルガの姿があった。

「いい突きだった……今まで受けた中で最高のな」
「今はまだ届かなくても、いずれその後姿、追い越して見せますよ。必ずね」

 槍を下ろすドナテロを静かに見つめるオルガ。鎧越しにもその優しい眼差しは見ている者達にも伝わってきた。エルツはオルガに指導を受けたあの時向けられた笑みを今一度思い返していた。
 降参を宣言するドナテロに続いたのはスニーピィだった。

「オルガさん、お願いします」

 連戦にも関わらず、快く立ち上がり再び構えるオルガ。
 開幕からFire Ballを的確にオルガに重ねるスニーピィに対して、両手斧を盾にゆっくりとじわじわ距離を詰めてゆくオルガ。
 オルガの防御法は魔法ダメージを無にするものではない。あくまでダメージを軽減しているだけである。そんなオルガのプレイスタイルを支えているものは強靭な精神力、不屈の精神である。精神面が不安定で、揺さぶられやすいスニーピイにとって、いつも真剣で強い志を宿したオルガの眼差しは輝きに満ちたものだった。だが、その尊敬して止まないオルガは今日でこの世界から姿を消す。

「スニーピィ、お前の欠点はその優しさだ」
「え?」

 今や目前に迫るオルガに対してスニーピィは攻撃を加えていた手を緩める。

「戦闘において、その優しさは致命的な隙になる。相手を傷つけないように、どこか力を加減しながら闘うその姿勢は、相手に余裕を与えるだろう」

 そう言って斧を振りかぶるオルガ。スニーピィは目前に迫るその動きを感知しながらも微動だに出来ずにいた。
 だが振り下ろされた斧は、スニーピィの目前でその動きを止める。

「だが、その優しさはお前の最大の長所でもある。これからも、その優しさで皆を引っ張っていって欲しい。心の遣い方を間違えないようにな」
「ありがとうございました……!」

 深く礼をするスニーピィ。
 そして、続くはウィルとシュラク、そしてチョッパーの三人の子供達だった。オルガは腕を振り回すウィルとチョッパーを柔らかにいなしながら、シュラクの魔法攻撃への警戒も怠らない。攻めきれない三人に対して一瞬も手を抜く事なくオルガは対戦を終えた。そしてリーベルトとフランクがペアで続く。巧みな連携を見せる二人に対しても、オルガは冷静にその動きを読み、二人を追い詰めてゆく。その後に続いてユミルとケヴィンが挑み、オルガの暖かい言葉にユミルが涙する場面もあった。
 そして、残るはエルツ、スウィフト、リンスの三名。たじろぐエルツ達を見てレイラが声を上げた。

「また三人で挑ませてあげたら?」

 レイラの言葉にオルガは兜を縦に振った。
 皆の視線が集まる中、エルツ達は三角陣トライアングルでオルガを取り囲む。

「オルガさん、行きます」

 エルツの言葉に無言で両手斧を構えるオルガ。
 威圧感から動けないスウィフトとリンスの前で、先陣をきって斬りかかったのはエルツだった。エルツの正面からの一撃を両手斧の柄で弾き返すオルガ。
 間髪入れず第二撃を叩き込もうとするエルツの勇姿に、二人も動き出す。一斉に斬りかかろうとする一同に対して、オルガの豪腕が大きく円を描く。その直撃を受けて弾き飛ばされる三人。
 エルツは忘れていた。今ここに居るのはこの前指導をつけてくれた時のオルガではない。本気のオルガだという事を。そのあまりの迫力に気圧されしたのか、スウィフトとリンスは今の一撃で戦意を失ったようだった。

「時には引くという事も賢い選択だ」

 オルガの言葉に二人が武器を下ろしたその時、エルツが吠えた。

「はぁぁ!!」

 走り込み、力任せにオルガに剣を振るう。
 当然、闇雲な剣はオルガの前には通用しない。だが、エルツは剣を振るう事を止めなかった。一撃目は初めから当てるつもりなどない。ただのフェイント。

 一斬。右肩から肢体の左下の向けての一閃。
 二斬。相対する左肩から肢体の右下へ向けての一閃。

三散華さざんかか」

 呟くオルガに対して、三斬。頭から肢体下に向けて振り下ろしの一閃。
 だが、その刃は光らない。全ての剣撃はオルガの鉄壁の守りの前に弾き返されていた。

「三散華は初段と二段目の剣撃がヒットして初めて三段目が三散華としての効果を生む。それを知っている者ならば、易々とは撃たせてはくれんぞ?」

 そう言いながらオルガの両手斧がエルツの身体を弾き飛ばした。
 強烈な衝撃に身を打たれながらも、エルツは残る最後の技に全てを込める。

――せめて一矢――

 この世界から去ってしまう前にオルガさんに認めてもらいたい。それがエルツの切な願いだった。
 WAウェポンアーツの発動体勢に入るエルツ。バロックソードを逆手に打ち出すその技の名は。

「Biker Slash[バイカー・スラッシュ]!」

 弾き飛ばされながら溜めた、着地してからほぼノータイムなその剣閃。
 だが、健闘空しく、その剣閃はオルガに冷静に対処され弾き返された。
 やれる事はもうない、現時点で持てる全ての力は出し切られたのだ。一矢も報いる事が出来なかったのは残念だが、悔いは残っていなかった。文字通り全力を尽くしたのだ。
 手合わせ後、オルガと握手をかわすエルツ達。そんな中、オルガはエルツに声を掛けてくれた。

「いい剣筋だった。またいつか手合わせしたいものだな」

 オルガのその言葉に顔を綻ばすエルツ。それはエルツにとって最高の賛辞だった。

「ありがとうございました!」

 笑顔に満ち溢れる一同。
 そして、全ての闘いが終わった時、その時はやってきた。
 誰もがその時が来る事を考えようとしなかった。

――別れの時――

 皆を前にオルガは兜を外し、その表情を晒していた。

「長いようで短かった。ここへ来てから数年。シンと出会い、このコミュニティを創設してまさかここまで大所帯のコミュニティになるとは夢にも思わなかった」

 誰もがオルガのその言葉に真っ直ぐに耳を傾けていた。

「本当に、これまで色々な事があった。仲間と力を合わせて様々な強敵に挑み、そして笑い。時には、プレイヤー間の問題で、悔しい想いをした事もあった。だが、そんな時必ず……」

 そう言ってオルガはシンを見つめた。

「シン、お前が諌めてくれたな。揉めた時は一歩引く、そんな譲り合いの精神は、当たり前の事であるようで、なんと難しい事か」

 オルガの言葉にふっと思い出に微笑を見せるシン。

「本心を言うならば、最後までこのコミュニティに身を添えたい。心からそう想う。だが、不器用かな。現実に守るべきものが出来た今、この世界へ身を置くのは難しくなった」

 そう言ってオルガは顔を一瞬伏せた。

「この世界に居れば、否応なしにでも抑えきれない探究心、冒険心が心をくすぐる。大切な者を守りながら、理想の世界に身を置く等、それこそ『理想』というものだろう。傲慢だという事は自分でも承知の上だ。だが残念だが、今日を以って俺は引退させてもらう」

 その言葉に皆が伏せていた顔を一斉に上げた。

「俺が抜けた穴については、正直心配していない。このコミュニティには優秀な跡継ぎが居るからな」

 そう言ってオルガはドナテロとスニーピィの二人に視線を振った。
 その視線に精一杯の笑顔を返す二人。

「それから、俺がこの世界で溜めた資金については、既にシンに渡してある。後ほど、分配の話があるだろう。任せて悪いな、シン」
「このくらいやらせてもらわないとな」とシン。

 すすり泣きが聞こえてくる中、ウィルが大声で叫んだ。

「おっちゃん辞めんなよ!」
「おい、ウィル、大人には大人の事情ってもんがあるんだよ」とシュラク。

 そんな様子にオルガは優しい笑みの中に悲しさを浮かべて俯いた。

「オルガさん、いつかお子さん大きくなったら、その時は家族でまたここへ戻ってきて下さいね」

 スニーピィのその言葉に皆が賛同する。

「そうだよ、オルガさん。俺達ずっと待ってますから!」とケヴィン。
「この世界で言うと何百年先の話だ?」と笑いながらナインツ。

 だが、オルガは嬉しそうに笑顔で「ありがとう」とただ一言そう告げた。
 そして、オルガは皆が見つめる中、粒子化を始めた。

「ここで生まれたたくさんの記憶は、たとえ記憶としては残らずとも、心に刻もう」

 そうして、オルガの身体が光に包まれる。

「最高の仲間達に囲まれたこの日々を、忘れはしないさ」

――今まで本当に……ありがとう――

 それが、オルガの最後の言葉だった。
 眩い真白な光の中にオルガの姿が溶け込み、そして、光は星々が輝ける夜空に向けて静かに拡散して行く。それは美しくも幻想的な光景だった。
 残された者達は、その幻想的な光を、一人の冒険者の旅路の末を、いつまでも見守っていた。
[2008年 作者コメント]

 ■第二章を終えて

 いつもARCADIAを読んで下さり本当にありがとうございます。読者の皆様には感謝の念に尽きません。たくさんの御感想やメッセージ、本当に励みになっております。

 第二章も随分と長くなって参りました。本来ならば、実はこの章で100話近い構成を考えていたのですが、流石に見栄えも悪いので構成を変更する事にしました。本話を以って、一旦第ニ章の幕を閉じさせて頂き、つきまして第ニ章の章タイトルを「星々の輝き」と変更させて頂きます。

 来る者もあれば去る者も居る。冒険者を星に例えるならば、きっとその星の輝きも千差万別ですよね。なんて三流詩人みたいな事抜かしてすみません、次のプロットを早々に作り直します。今までの構成についても見直したいところがあります。

 今後の方針ですが、これから少々今までの構成の見直し(情報不足なところを含め描写の追加等)、また今後のプロットの見直しをさせて頂きたいと思います。
 再開日についてはいつとは現時点では申せませんが、近いうちにまた新章を披露させて頂きたいと思っています。次章からはバージョンアップ等、物語のシステム関連についていじっていきたいと思っています。

 拙作ではありますが、今後も何卒ARCADIAを宜しくお願い致します。誠心誠意頑張らせて頂きます!
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