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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫ 作者:Wiz Craft

〆 第二章 『星々の輝き』

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 S24 VS Cocatris<コカトリス>

 聳える白亜の門<西門>。晴れた日差しを煌びやかに照り返すその門の周りは冒険者で溢れていた。

「すごい人だ。五分前か。もう居るかな」

 エルツはそんな事を呟きながらパーソナルブックを開きMapScanで名前を探す。

――Aries――居た――

 そこには真っ白な綿装備<ウーピィシリーズ>に身を包んだ青年が、もう一人バロック装備に身を固めた青年とが向かい合っていた。
 バロック装備の青年がもう一人のメンバー、あのCarmaという冒険者だろう。
 エルツは恐る恐る近づき、そして声を掛ける。

「あの、すみません。アリエスさんですか?」

 エルツの言葉に振り向く青髪の青年。
 青年はエルツの存在に気づくと一礼をする。

「エルツさんですね、アリエスと言います。宜しくお願いします」

 アリエスが爽やかな笑顔をエルツに向ける隣で、無関心そうな表情で、長い黒髪を後ろで束ねた青年。青年は舐めるようにエルツを頭から爪先まで見下ろす。

「エルツです。よろしくお願いします」

 エルツの自己紹介にバロック装備の青年カルマはただ一言「どうも」と面倒くさそうに呟いた。

「エルツさんは確かコカ狩り初めてでしたよね」
「ええ、はい。そうです」

 アリエスの言葉にエルツは頷いた。

「コカ狩りはセパ、いわゆるセパレイトパーティを組むのが主流なんですけど。セパレイトパーティってご存知ですか?」

 エルツはアリエスの質問に首を捻った。大体のその構想は予想はつくものの、まだはっきりとは理解していない。ここはここで教えて貰いきちんと理解しといた方がいいだろう。
 エルツが首を横に振るのを見て、アリエスは口を開いた。

「セパレイトパーティというのは、パーティを組まない状態で組むチームの事です。群れで行動するコカトリスのようなモンスターに対して有効な隊列なんですけれど、そうする事によって1VS1の状況を作り出す事が出来ます。セパレイトパーティでの絶対条件はそれぞれが一匹の獲物を最初から最後まで責任を持って倒す事、これができないとセパは崩壊します」
「なるほど、参考になります」

 エルツがそう言う傍らで、カルマがふっと微笑を漏らした。

「そのくらい事前に調べてくるべきだと思うけど」

 カルマの言葉にエルツは頭を下げる。

「すみません、事前準備が足りませんでした」

 素直に謝るエルツに対して、鼻であしらうカルマ。
 それをフォローするようにアリエスが口を開いた。

「まぁ、初めは皆初心者ですから。私も一週間前までは、セパなんて微塵も知りませんでしたし、初めはそうやって覚えていくものですよ」
「でも狩りの足引っ張ってもらっちゃ困るんだけど……大丈夫かな」

 そう言って疑わしい目を向けてくるカルマにエルツはただ苦笑いを返す。
 どうも、このカルマという青年の言動の節々にはトゲがあるようだ。まあ、触らぬ神に祟りなしと言うし、あまり関わらないようにするのが吉か。
 エルツはそんな事を考えながらその場を取り繕っていた。

「さて、それじゃ行きましょうか」

 アリエスの言葉に門をくぐる一同。

 草原を別段、特に会話も無いまま歩く三人。今まで味わってきたこの世界のアットホームな雰囲気からすると、随分静かなパーティだったが、別段エルツは驚きもしなかった。会話が無いのは寂しいものだが、今までに経験したオンラインゲームのLv上げパーティを考えれば、無言パーティとはそう珍しくもない。無機質にただ狩る事だけを目的としたパーティ、その事を考えれば、楽しい会話というのは利害の外の事なのだ。今までの経験が、この世界でも適応されるというならば、Lv上げパーティは大きく四つに分別する事が出来る。

 1.会話も盛り上がり、経験値効率も高い理想のパーティ
 2.会話はないが、経験値効率は高い効率重視パーティ
 3.経験値効率は悪いが、何よりパーティの雰囲気を重視するパーティ
 4.会話も無く、経験値効率も悪い。一般的に「外れ」と呼ばれるパーティ

 以上の四つだ。基本的には今までの経験からすると、オンラインゲームの世界では2番のパターンが多い傾向にある。自らがパーティ参加という受け手になる限り、1番のような理想のパーティにはなかなかお目に掛かれない。理想のパーティを常時組むには、自らがパーティの引率者になる事が望ましい。だが、それを行うにはまだエルツはこの世界に対して無知であった。圧倒的な情報不足、それを補う自らの姿勢が、先ほどカルマにも指摘されたが、今のエルツには薄いのだ。
 そんな自分自身の甘さにエルツは気づいていた。

――そろそろ本腰を入れてゲームに取り組むか――

 オンライン特有の無機質なパーティに触れる事で、エルツはかつての自分の姿を思い出しつつあった。
 草原の中を歩みながら、エルツは遠めに見えてきたコカトリスの姿をその目に映す。
 無機質なパーティでは敢えて、自らが率先して会話を盛り上げる必要は無い。何故なら、アリエスは会話を嫌うタイプではないだろうが、このカルマのようなタイプは会話をして効率が下がろうものなら、即座にそれはクレームに繋がるだろう。それが、起因してパーティが致命的に崩壊する可能性だってある。

「ちょうど三匹ですね、三匹ともLv5。近場にもう一つ群れがありますけど、リンクしないようにここまで釣りますね」

 見晴らしのいい草地で語るアリエス。

「釣りは私がやります。手前の狙うのでお二人は後ろの二匹お願いします」

 アリエスの言葉に頷くカルマとエルツ。

「それじゃ行きますよ。Waterウォーター) Sphere(スフィア

 アリエスの印言と共に発生する水の球体。球体は真っ直ぐな放物線を描いて獲物に目掛けて飛んでゆく。
 水が弾ける音と共にコカトリスの鳴き声が大きく響き渡った。
 大きく首を振りながら、一斉に襲い掛かってくる三匹のコカトリスを前に三人は散開する。
 三匹が揃ってアリエスに攻撃しようとする中、まずカルマが残りの二匹の一匹をバロックナイフ切りつけてターゲットを取った。それに続いてエルツの、一メートル程の大きな肢体目掛けてバロックソードで斬りつける。

Kueeee(クエェェェェ)!」

 コカトリスの一匹を引きつけたエルツは走りながら距離を取る。
 ある程度の距離をとったところで、コカトリスと向き直り、戦闘体勢へ。
 いきりたかって首を振り上げ鋭いくちばしをつきつけるコカトリス。コカトリスの攻撃動作はこの一つしかない。だが、モンスターの強さとは攻撃動作の数には比例しない。単純だからこそ避けがたい攻撃も存在する。その典型がまさにこのコカトリスの「つっつき」である。柔軟に伸び軌道自在のその首から繰り出される嘴攻撃は、予想をつけにくい。
 エルツはコカトリスの嘴を手持ちの盾で巧みにいなしながら、反撃を加える。Forcted(フォルクテッド Barokバロックで購入したバロックシールドは、このコカトリス戦では必須アイテムのように思えた。
 初コカトリスではあったが、予想以上にエルツの動きはキレていた。
 エルツは確かな手応えを感じながらコカトリスを追い詰めてゆく。

Kueee(クェェェ)!!!」

 断末魔の悲鳴と共に最後に大きく首を振ってきたコカトリスの攻撃を盾で弾き返すエルツ。無情にもエルツのバロックソードの前に、コカトリスはゆっくりと地に崩れ、そして粒子化を始める。
 装備を変えたのは大正解だった。初めは旅人装備に比べて重量感のあるバロック装備に戸惑ったものの、慣れればこの上なく心強い装備だと実戦の中で認識する事が出来た。
 獲物を仕留めたエルツはふと周囲を見渡す。そこでは、依然コカトリスと奮闘する二人の冒険者の姿があった。意外な事にも、一番早く獲物を狩り、仕留めたのはコカトリス戦初のエルツであった。
 距離を取りながら、水球をヒットさせては突進してきたコカトリスの死角に回り、また距離を稼ぎ、ウォータースフィアによる魔法攻撃を繰り返すアリエス。その後方では、コカトリスとまるで戯れているのかのように、短剣を翳し、くっついては離れ、離れてはくっついてを繰り返すカルマ。短剣という武器の選択から機動力を重視したであろうカルマは盾を持っていなかった。いくら、機動力を重視したところでコカトリスのあの変幻自在な攻撃軌道から逃れるのは難しいだろう。エルツの予想通り、カルマはなんとかコカトリスを倒したものの、だいぶダメージを食らっているようだった。ちょうどカルマが獲物を倒すと同時期に、アリエスもまた一匹を狩り終えたようだった。

「無事皆狩れたみたいですね」

 アリエスの言葉に三人は休み、体力の回復に入る。エルツ自身はほとんどダメージを受けていなかったが、他一人でもダメージを受けていれば狩りを始めるわけにはいかない。アリエスもダメージは受けていない様子だが、スキルポイントの回復に努めているようだった。

「エルツさん、初戦って割には全然ダメージ受けていないようですけど?」

 アリエスの言葉にエルツはふと顔を上げた。

「ああ、盾があったんで、これのおかげですよ」

 そう言ってエルツは盾を翳して見せた。それを何とも言えない表情で見つめるカルマ。
 それは明らかに不服の視線だったが、エルツには責められる覚えもない。コカトリス戦でどういった立ち回りが有効なのか、それこそ事前調査で、ましてや経験者なら分かりそうなものだが。
 エルツは敢えてカルマと視線をなるべく合わせないように俯いていた。

 それから、再び狩りを始める一同。
 そして、静かな狩りが続く中、突然そのトラブルはやってきた。

「釣ります」

 アリエスがそう言って、コカトリスの群れに攻撃を仕掛けたその時だった。
 三匹の群を確認したアリエスが放った攻撃の直後、重なっていた影からもう一匹が姿を現したのだった。

「四匹いるぞ! 何やってんだバカ!!」

 カルマが声を荒げて叫んだ。が、既に時は遅い。一体に放たれた水球に反応して、四匹が同時に振り返る。襲い掛かってくる四匹に対して、一同は攻撃態勢も忘れて茫然としていた。その戸惑いが逃げる時間さえも失わせた。
 あっという間に四匹に囲まれた一同は、やむを得ず武器を構える。

「やるしかない……!」とエルツ。
「マジでふざけんな、死んだら責任とれんのかよ」

 声を荒げるカルマ。確かに、この戦いは厳しいものだった。こちらが三人に対して相手は四匹、この戦いでは必ず1対1以上の状況が発生するのだ。一匹を相手にしても苦戦を強いられるコカトリス戦で一人が複数を相手にするのは至難である。
 そして、ある事実に気づいたカルマが声を張り上げる。

「しかも、Lv6がまざってるぞ!」

 コカトリスのLv帯は5〜6。ここでLv6の獲物が混ざっているという事実はエルツ達にとって危険の上乗せ以外の何物でもなかった。

「アリエス、あんたが責任持って二匹ターゲットとれよ!」
「わかってます。元よりそうするつもりです」

 カルマの言葉に必死に頷くアリエス。
 そして、突進してくるコカトリス達の動きに合わせて一同は散開する。
 まずは一匹のターゲットをとったエルツは、最速で獲物に斬りかかる。

――早くコイツを始末しないと――

 エルツの頭の中は次の一匹の事で一杯だった。そうした危機感からくる焦りがエルツの狩りを狂わせる。先程までには冷静に捌けていたコカトリスのつっつきを受けながらエルツは必死に剣を振るう。こうなったらダメージは覚悟の上だった。少しでも早く、こいつを倒して次の獲物を相手にしないと。

Kueee(クェェェ)!!」

 一匹のコカトリスともつれ合いながら鳴き喚く獲物の肢体に剣を振るい今止めを刺す。粒子化が始まるや否やエルツは振り向いた。そこでは、必死にコカトリスに短剣を振るうカルマの姿が。相手にしている大きさからしてLv6のコカトリスだろう。そして、その先では、二匹のコカトリスに挟まれ、赤点滅レッドブリンクを始める倒れこんだアリエスの姿があった。

「アリエス!」

 振り上げられた二匹の首がアリエスを捉えたその時、エルツはアリエスの身体をすくい上げるように、抱き起こしその場から間一髪離れていた。

「エルツさん……すいません」
「礼を言うのはまだ早いですよ。こいつらなんとかしないと。一匹やれますか?」

 エルツの問いにアリエスは服を払いながら静かに頷く。
 そして、再び狩りが開始する。今度は1対1。だがエルツが相手にする獲物の大きさからして、Lvは『5』ではない。おそらく『6』。

「落ち着け……やれる。絶対やれる」

 エルツは自分にそう言い聞かせるように獲物を今睨みつける。
 振り翳される大きな首から放たれる嘴を盾で跳ね返す。重い衝撃を感じながらも、エルツは即座に反撃を返していく。
 暫しの攻防を重ねると、エルツの身体が赤点滅を始めた。ここから先は、無駄なダメージは一切許されない。細心の注意を払って臨む必要がある。

――こんなとこでヤラレテたまるか――

 コカトリスのつっつきを読み、大きく身体を右に流す。

――今だ――

 突きたてられる赤銅の剣(バロックソード。そして、今ゆっくりとコカトリスの身体が崩れ落ちる。
 ふと、振り返るとそこには今獲物を打ち倒し、満身創痍で立ち尽くす二人の姿があった。

「……られるか」

 呟くようにカルマは再びその言葉を口にする。

「こんなパーティ……やってられるか!」

 そう捨て台詞を残し、カルマは去っていった。
 残されたエルツとアリエスはただ無言でその場にうずくまる。
 暫くの間をおいてアリエスは静かに口を開く。

「申し訳ないです、私のミスで嫌な想いをさせてしまって」
「アリエスさんの責任じゃありませんよ。僕にも三匹に見えてたし、僕が釣りなら同じ事やってましたよ。ただの事故です」

 エルツの言葉に俯いていた顔をアリエスが上げる。

「でも、凄いですね。初めてのコカ狩りで一人で二匹のリンク処理するなんて」
「死に物狂いでしたから。何やったか覚えてませんけど、ただのまぐれですよ」

 エルツの言葉に微笑するアリエス。

「二人になってしまいましたね。本当に申し訳ないです。残念ですけど、これじゃ狩りを続けるのは無理です。私達も街へ戻りましょう」

 アリエスの言葉にエルツも頷き立ち上がる。
 そして、街へ向かって立ち上がったエルツにアリエスがふと声を掛ける。

「エルツさん、良かったらフレンドになってくれませんか?」

 アリエスの言葉に一瞬エルツは虚を突かれた。

「え?」

 別段、返答に悩む必要は無かった。アリエスが悪い奴でない事は分かっていたし、何よりこうしたフレンド登録はエルツも望んでいた事だった。

「あ、はい。僕で良ければ」

 アリエスから届いたフレンド申請に受諾メールを返すエルツ。

 どうやら初めてのコカ狩りは経験値以外にも、重要な成果を残してくれたようだ。
 結果として、経験値も会話もないパーティとなってしまったが、エルツはこれを「はずれ」だとは思わなかった。ただの場合分けでは計れない事もある。
 話によると、アリエスはAlchemistsアルケミストというコミュニティに所属しているようだった。コミュで同じLv帯の冒険者が居なかったので、止むを得ずこうしてCity BBSでメンバーを募っていたらしい。お互いに自分のコミュニティに誘えなかった事を少し残念に思いながらも、二人は帰途につく。
 二人はオンラインフレンドに上がった互いの名前を確認すると、談笑を交えながら街へと引き返し、そしてパーティを解散した。
■作者コメント

 いつも本作品を読んで下さり本当にありがとうございます。読者の皆様には本当に感謝の念に尽きません。
 先日ですが、私宛にあるメッセージが一通届きました。その内容はとても温かい言葉に満ち溢れていて、私自身、本当にそのメッセージに救われました。返信先が記されていなかったので、こちらで心からお礼を述べさせて頂きます。本当に嬉しかったです。ありがとうございました。
 何より、この作品をここまで書き進めてこられたのは私一人の力では無いという事を改めて実感しました。たくさんの方の温かい感想に支えられて、ここまで書き進める事が出来ました。本当にありがとうございます。
 今後も誠心誠意、ARCADIAの執筆にあたらせて頂きたいと思います。綺麗事ばかり並べているようで、たまにそんなある意味取り繕った自分自身に嫌気が差す事もありましたが、ここまでやってこれたのも読者の皆様のおかげです。
 拙作ではありますが、今後も何卒ARCADIAをよろしくお願い致します。
+注意+
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