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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫ 作者:Wiz Craft

〆 第七章 『夢・絆』

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 S5 試される勇気

 Acid Slymeの突然の襲撃を辛くも逃れた二人はあれからすぐにその場を離れていた。

「でもどうして急に襲われたんですかね。来た時は確かに何も居なかったのに」
「多分あのクラークの白骨を調べる事がAcid Slyme出現のフラグだったんだ」

 エルツの言葉に「なるほど」と頷き手提げランプで辺りの様子を注意深く窺うフランク。 
 現場に残されていた二枚のカード「Acid Slymeの体液」。おそらくはこのアイテムがこの調査イベントの証拠品となるのだろう。岩盤の下敷きになっていた遺体の不自然な白骨化はAcid Slymeによるものだったのだ。
 カードを回収した二人はあの黒のシルエットを求めて岩盤の上へと登った。だが、既にそこに人の姿は無かった。
 礼が言いたかった二人にとって、窮地を救い消え去ったあの人物には実に不思議な感覚を覚えていた。窮地になった時に救世主が現れるというのは漫画やドラマではありがちな展開だ。日常では当たり前のように見流している展開だが、実際に自らがそうした立場に追い込まれた時に救いの手を差し出してくれたあの人物の姿は二人にとってはとても印象的なものだった。
 二人はPBを開きながら帰り道を確認すると、ふとここへ来たもう一つの目的を思い出す。

「ついでだから、探索クエストも今日こなしちゃいましょうか」
「そうだね、緑穴グリーンホールだっけ?」

 二人は今日ここラクトン採掘場を訪れる際に二つのクエストを請け負ってきていた。一つは拡張クエスト「Coolerd Clerkの行方」。そしてもう一つが探索クエスト「緑穴グリーンホール」。
 何でもこのラクトン採掘場から通じる秘境らしいのだが、掲示板からはその内容の詳細を確認する事は出来なかった。何でもその場所へ到達するために、度胸試しがあるとの事だが。

「度胸試しって何だろうね」

 エルツの疑問に首を傾げるフランク。

「まぁ、行ってみれば分かりますよ。場所は分かってますし。ここから然程遠くないです」

 そうしてフランクの先導の元、再び入り組んだ洞窟内を歩き始める二人。地下三層から再び二層の迷宮へと上がったPBでルートを確認しながら複雑な分岐路を一つ一つ下って行く。
 いつの間にか整備されていた鉱山道は再び荒削りな岩盤へと移り変わり、二人はランプの灯りが消えないように慎重に急な段差を折り始める。耳奥では僅かに水が流れるような音が響いていた。その証明に岩盤に手を付くとやや湿っていた。やはり、この辺りに水脈が通っているようだ。

「この辺りの筈なんだけど」

 次第に大きくなる水流の音を聴きながら、二人が暗闇の先の折曲がり地点を越えたその時だった。突然足元の開けたその空間を前に身体のバランスを崩し後方へ倒れ込む二人。

「うわ、っとすいませんエルツさん」

 倒れ込んだフランクの身体を受けて自らも尻を着いたエルツは彼の身体を起こしながらゆっくりと立ち上がる。
 今二人の目の前には暗闇の地下空間を流れる巨大な水脈が広がっていた。轟々と流れるその勢い溢れた水の流れは激流と呼ぶに相応しい。

「地下水脈か。これが秘境なのか」

 エルツの言葉に浮かない表情で水脈を見つめるフランク。

「いや、目的のポイントはここからさらに地下にあるみたいです」
「ここからさらに地下? でも道途切れてるよ」

 そう呟いた所で脳裏を過ぎった嫌な予感に目の前の激流を見つめるエルツ。

「……まさかとは思うけどさ」
「そのまさかですよ。エルツさん、目的地まではこの水脈下るみたいですね」

 フランクの言葉に衝撃の色を隠せないエルツ。

「これ下るってさ。有り得なくない、この流れだよ」
「だから度胸試し、っていう事なんじゃないですか? こういう意味か。ちょっと予想外だったな」

 冷静なフランクもこれには流石に動揺の色を隠せないようだった。

「どうします?」

 フランクの問い掛けに激流を見つめながら固まるエルツ。

「折角ここまで来たんだからやりたいの山々なんだけど。激流に飲まれて死んだりしないかな」

 この激流を目の当たりにすると流石に判断は鈍る。

「たとえ溺れてもこの流れはセントクリス川に通じてるみたいなんで、運が良ければ外界に浮かび上がりますよ」

 さらりと恐ろしい事を告げるフランクは徐にPBを開くと装備を外し始める。

「折角来たんで俺はやってみます」

 フランクの言葉にエルツもそこで決意せざるを得なくなった。彼がやるというのに年上のエルツは諦めて帰るというのはあまりにも情けない話だ。

「覚悟決めるか」

 そうして、装備していた武器防具を外し麻の下着姿になった二人は激流を見つめる。

「流れに乗ってれば自動的にポイントに着くらしいので」
「オーケー。じゃお互い無事にそこで会おう」

 エルツの言葉に二人は微笑を浮かべると、激流に向かって構える。

「掛け声入ります?」とフランク。

 それぞれ自分のタイミングで飛び込んだ方がいいかとも思ったが仮にフランクが先に飛び込んで残された場合、どうしようもなくなる場合がある。

「お願いするよ」

 エルツの言葉に頷き構えるフランク。

「それじゃ行きます、3カウントで」

 そして静かにカウントを始めるフランク。

「……1」

 心の準備は既に出来ている。あとはきっかけだけだ。
 何も恐れる事は無い。この世界での死など何の意味も持たない。

「……2」

 二つ目のカウント、フランクには既にもはや迷いは無いのだろうか。こうなったらもはや後は飛ぶだけだ。
 エルツは自分にそう必至に言い聞かせながら残されたカウントをただ待ち構える。

「……3」

 カウントと同時に勢い良く隣で水流に飛び込むフランクの姿。
 それを見たエルツもつられて、身体を激流に向かって投げる。

「なるようになれ!」

 二つの着水音は激流によって掻き消され、二人の姿もまたその中であっという間に消えて行った。
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