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■悠久の世界
  アルカディア■

 青い水平線の彼方に連なるその影は

 人々の想いを乗せて運ぶ箱舟のようにも見える
    
(ヨハン=エルゼウス 『箱舟』より)
〆第一章 『旅立ち』
 青く透き通った海原と白き砂浜。その二つが織り成す海岸線はどこまでも美しく、旅立ちの場としてはこの上ない壮景が広がっていた。
 ここは<旅立ちの砂浜>。冒険者達がこの世界に来た時必ず通る出発点である。
 今ここに空から舞い降りた一つの輝きがあった。ゆるやかな軌跡を描き、地表に降り立ったその光は次第に収縮し、中から一人の青年が姿を現す。

「ここが、ゲームの世界か」

 真白な砂浜に短くまとめられた黒髪が映える。背丈は中背といったところか、麻布をまとったその旅人らしいその姿はここでは珍しくもない光景であった。
 青年の名はエルツ。彼もまたこのゲームの冒険者プレーヤーの一人だった。白い砂浜の上に降り立った彼は、その大地を確かめるように、砂地を踏みしめた。砂浜に残された足跡はそのまま海へと向かって伸びてゆく。

「噂には聞いてたけど、本当に綺麗だな」

 僅かに茶色味を帯びた瞳の先に広がる雄大な海原。
 冒険者にとって目に映る景色は貴重な財産である。エルツにとってもまた、この光景は何にも変えられない貴重な体験だった。実際に目で見て感じ、身体で世界を感じる。それが出来る事が、VRバーチャルリアリティシステムの最大の特徴だ。そして、その体験こそがここへやってくる冒険者達が求めているリアリティなのである。
 ひとしきり目の前の景色をでると、当然冒険者プレーヤーである限り、旅立つ事になる。エルツもまたそんな冒険者達の例外では無かった。

「さて、これからどうするか。まずは街とか村を探すのがセオリーかな。今持っている装備とかアイテムも確認しといた方がいいかな」

 腰元には一本の銅製のナイフが備え付けられていた。他に装着しているものと言えば、身に纏った麻布以外、他に見当たらない。

「いわゆる初期装備ってやつか」

 護身用のナイフを手に取り、何振りかして、その重量と質感を確かめてみる。ナイフは思ったよりも軽く扱いやすいようにエルツには思えた。

「戦闘か。楽しみだな。今のとこモンスターらしき影は見当たらないけど、まあ、まずは早いとこ街を探して、この世界の情報を集めよう」

 そうして旅人はその本来の姿を取り戻す。
 一人の冒険者の新たな門出。
 波に打たれるその白い砂浜にはしっかりとその足跡が残されていた。
【作者コメント】

 この度連載小説を書かせて頂く事にしました。予てよりRPG風小説を書きたいと思っていたのですが、なかなか世界観の構想が形にならず断念しておりました。ですが悩むくらいなら書いて少しでも形にした方が良いと思い、書かなければわからない事もありますし、こうして今に到った次第です。こうして、公開させて頂いた以上、作者としては読者の皆様のお目汚しにならないようにとただ望むばかりです。
 執筆ペースはおそらく不定期になると思います。何分拙作ではありますが、今後の展開を温かく見守って頂ければ幸いです。何卒宜しくお願い致します。

 ■修正事項■

 ○6/27修正
 重複する描写を一部修正しました。
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