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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫ 作者:Wiz Craft

〆 第一章 『旅立ち』

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 S14 Community<コミュニティ>

 時計の針が18:00を回る。辺りが夕焼けに染まり始めた頃。
 約束の時間の十五分前に到着したエルツは、ただ一人ぼんやりと女神像を眺めていた。それから十分程すると、スウィフトとリンスが二人でやってきた。

「あれ、エルツ早いな。どうだった、自由時間は?」
「なかなか有意義だったよ」

 エルツの装備に気づいたのか、スウィフトが声を上げた。

「装備変わってるし」

 エルツはニヤリと笑みを返した。

「うちらも行ったんだけどさ。高いから今回は敬遠したよ」
「そんな事言ってるといつまで経っても次回に延ばしになるよ。思い立ったら買う! どんどん使わないと。もう今所持金18ELKだし」
「おい」

 「夕食どうするんだよ」と笑いながらスウィフトが突っ込んだその時だった。

「あのう、すみません」

 突然、掛けられた声に三人はふと声の方向へ視線を向けた。
 そこにはにこやかな表情を浮かべた栗色のショートヘアの女の子。その隣には見覚えのある小さな少年の姿があった。

「あれ、君は」

 少年はエルツの視線に女の子の影に隠れる。そう、彼はシャメロットに襲われていたあの少年だった。

「弟を助けて下さったみたいでありがとうございました」

 そう言って頭を下げる女の子にエルツ達も思わず頭を下げた。

「え、弟さん? いやいや、偶然傍に居たんで。でも無事で良かった」

 どうやらお礼を言いに来てくれたようだった。

「ほら、ちゃんとお礼言いなさい、チョッパー」

 その言葉にチョッパーと呼ばれた少年はペコリと頭を下げた。

「いえいえ、気になさらないで下さい」

 襲われている者を通りがかりの冒険者が助ける。それはこの世界ではそう珍しく無い光景だった。
 エルツ達も別に見返りが欲しくて、助けたわけでは無かった。ただ目の前で倒れた少年を見て、自然と身体が動いた。ただそれだけだった。
 お礼を言われ、エルツ達が心地良くその場を立ち去ろうとしたその時だった。

「あの、皆さんはもうどこかコミュニティに所属されてるんですか?」

 少年の姉の言葉にエルツが反応する。

「コミュニティ……というのは?」

 エルツの反応に彼女はにっこりと微笑んだ。

「この世界にはコミュニティと言って冒険者達が立ち上げた組織が無数に存在するんです。コミュニティに所属すると、コミュニティ専用の施設にも入れるようになりますし、先輩冒険者からのアドバイスも受けれますし、その他に色々と特典もついて便利ですよ」
「そうなんですか、そんなのがあったんだ。知らなかった」

 エルツ達はお互いの顔を見合わせて、呟いた。
 そんなエルツ達の様子を見て彼女は温めていた一言を切り出した。

「どうですか? もし良かったらうちのコミュニティに入りませんか? あ、申し遅れてすいません。私White Garden[ホワイト・ガーデン]所属のユミルと言います。うちのコミュは結構人数も多いし、トップの人達もかなり進んでいる人多いので何かと参考になるかと思いますよ」

 それはエルツ達にとっては嬉しい申し出ではあった。

「どうする?」とスウィフト。
「まだ、この世界の事何も分かってないし、そうした組織に入れるのは心強いな確かに。ただ情報が少なすぎて、ここで入ってしまう事がこの先どう影響してくるのかが見えない」とエルツ。

 そんな一同の会話を聞き、ユミルは言葉を付け足した。

「あの、コミュニティの参加脱退は冒険者さんの自由なので、お試し感覚で入って下さっても全然構わないですよ。ちょっと肌に合わないなと思ったら抜けて下さって全然問題ないです」

 彼女のその言葉にスウィフトが口を開いた。

「入っていいんじゃないかな? 僕はどちらかという賛成派だけど」

 スウィフトの言葉にエルツも頷いた。

「リンスはどう?」
「私は正直よくわからないし、二人の判断についていく。それに悪い人達ではなさそう」とリンス。

 その言葉を聞いて、エルツは口を開いた。

「すみません、それじゃユミルさんお願いしてもいいですか?」
「勿論ですよ! 今勧誘メールを送信しますのでちょっと待って下さいね。やったー!」

 彼女は満面に笑みを浮かべると、PBを開き、何やら小慣れた指使いでキーボードを弾き始めた。それから十秒もすると一通のメールが送られてきた。

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 White Garden[ホワイトガーデン] 入団状

 代表:Sin[シン]

 WHITE GARDENへ入団する皆様、初めまして。当コミュニティの代表を務めています Sinシンです。堅苦しい挨拶は早々にして、まずはこのコミュニティの大まかな運営方針について触れておこうと思います。
 このコミュニティの基本理念ですが、それは『初心者から熟練者まで気軽に参加できる交流の場』、そこに何より重点を置いています。勿論、この世界の仕組み上ゲーム攻略は当然します。ですが、その攻略の前提には『ゲームを楽しむ』という大前提があります。ゲームの世界だからといって人間関係を疎かにしては、このゲームは成立しません。

 かといって上記を満たせば何でも有りなの? という疑問は当然浮かぶかと思います。
 そこで、コミュニティの指針を記載させて頂きますのでご参考ください

 ■攻略方針について

 当コミュニティにおいて攻略段階は大きく分けて下記の段階に分けます

  1.スティアルーフ未到達のスターター
  2.Lv10未満の序盤攻略プレイヤー
  3. Lv20未満の熟練者
  4. Lv21以上の上級者プレーヤー
  5. アウグスブルク周回者---立ち回りを理解していることが前提

 一般的に野良でこれらの5段階のプレーヤーにおいて、パーティーを組んで同じコンテンツを楽しむことは不可能です。コミュニティイベントとして楽しむことを前提に無茶をすることは有り得ますが、あくまでこのゲームには経験値を蓄積し、装備を整えて、強くなる、という根本的なRPGの攻略が必要になってきますのでパーティーを組む上では明確な住み分けが必要になります。

 初心者の方々に煩わしい話ですが、段階が上がるごとに、その領域でプレイしているプレーヤー達が求めてくる知識と立ち回り、がえぐくなります。
 なので、楽しいことだけを求めて、技術的な壁にぶつかった場合、上記の段階で諦めてしまうプレイヤーがこのゲームは結構います。パーティーの中で、決められた役割をこなせないことで、責任を追及されるケースは結構多いんです。悲しいことに。
 当コミュニティに属することで、利点がもしあるとしたら、そうした壁にぶつかった時、コミュニティのように親しいもの同士で、高いLvの人間が手助けを行うことができます。
 幸いにも、自分自身も含めて、このコミュニティのトップ層は現状、最難関のアウグスブルクの攻略を終え、周回に入ってます。
 まぁ、俺の切なる望みとしては、うちのコミュニティでアウグスブルクの攻略者が増えることなんですが、まぁ本音は置いときましょうか。

 さて、それでは早速ですが、入団して頂く皆様には以下の事項を守って頂きたいと思います。もし万が一、以下の事項に抵触する行為を発見した場合は、厳重注意、もしくは、強制退団という形を取らせて頂きますので御了承下さい。

 ■禁止事項

 ●特定エリアにおけるモンスターの占有
 ●他プレーヤーに対する不道徳な干渉(迷惑メール・セクハラ・嫌がらせ等)
 ●RMT(ゲーム通貨の換金)
 ●NET SEXネットセックス
 ●PKプレーヤーキラー行為
 ●その他、規約により禁止されている行為、又他プレイヤーの迷惑になる行為

 以上の点を遵守出来る方は下記から入団手続きを行って下さい。

 ▽規約を遵守する
 ▽入団を止める

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 エルツ達がメールの文章に目を通しているとユミルが口を開いた。

「あ、メールの文章はあまり気にしないで下さい。要は楽しく仲良くルールを守って遊びましょう、という内容なんです。うちのリーダーそういうとこ真面目だから、いい人なんですけどね」
「うん、わかるよ。しかも、この人、やばいな。かなりの廃人でしょ。文面だけでなんとなくわかるよ」

 エルツは文章に目を通して笑いながらそう呟いた。

「わかりますか、そうなんですよ。一度アウグスブルク行くと、一週間とか二週間平気で帰ってこないときあるから。入団状では手助けします、なんて体のいい事言っちゃって、団長自身はまったくですよ」
「でも、本当に困ったときは、きっとこの人助けてくれるでしょ?」

 エルツのその言葉にユミルが「ええ、まぁ」とはにかんだ。

「それにしても、ホワイトガーデンか。いい、名前だね。真白な……庭?」とエルツ。
「馬鹿にしてんのか、直訳すんな」と笑いながらスウィフト。
「せめて[庭園]と」続けて笑いを溢すユミル。

「巷では『白庭はくてい』なんて呼ばれることもありますけど。でもあんまりメンバーで使う人はいないかも。団長が白庭に掛けられて、通り名が白帝なんです」

 段々とユミルの口調が砕けてきた事にエルツはちょっとした親近感を覚えていた。
 規約遵守を誓ったところで、ユミルが何やら自分のPBを見つめながら声を上げた。

「あ、きたきた。それじゃ皆さん、デスクトップに新しく追加されたコミュニティのアイコンをクリックして下さい」

 デスクトップに追加されたアイコンには『White Garden』と記されていた。
 選択するとコミュニティフォームが現れ、『Member List』や『BBS』と『Chat』等のコミュニティの項目が表示される。

「主に使うのはBBSですね。これはコミュニティの質問・連絡版になってるので」

 ユミルの言葉にBBSをクリックすると、そこにはツリー型の掲示板画面が広がった。

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 White Garden BBS

 ツリー 表示 1-10 <1/2/3/4/5/6/7/8/9/10 Next>
 ソート 更新順/投稿順/投稿者名順/レス数

ALL 祝☆弟入りました/Yumiru(01/双華/炎/10 18:01)
  →おお!!!/Sneepy(01/双華/炎/10 18:11)
  →それで今朝聞いてたのか/Reebelt(01/双華/炎/10 18:15)
  →よろ〜/Coppel(01/双華/炎/10 18:22)
  →よろしく、団長のドナテロです/Donatello(01/双華/炎/10 18:28)
   →嘘つけ↑吹いたw/Sneepy(01/双華/炎/10 18:33)
    →吹かせた↑/Donatello(01/双華/炎/10 18:36)
     →うるさいわ↑w/Sneepy(01/双華/炎/10 18:39)


ALL あの勧誘について質問なんですが/Yumiru(01/双華/炎/10 8:51)
  →Re:あの勧誘について質問なんですが/Sneepy(01/双華/炎/10 9:07)
  →Sinから入団の時貰ったメールを転送すればOK/Coppel(01/双華/炎/10 9:13)
   →そうなんですか!でも勝手に送っちゃまずいですよね?/Yumiru(01/双華/炎/10 9:20)
    →どうなのかねその辺。特に決まっちゃいないような/Coppel(01/双華/炎/10 9:25)
     →その辺は自己判断に任せますよ/Sin(01/双華/炎/10 9:36)
      →自己判断って曖昧なw/Sneepy(01/双華/炎/10 10:11)
       →入団規約に一通り条件は書いてあるから/Sin(01/双華/炎/10 10:20)
        →なるほど、確かに/Sneepy(01/双華/炎/10 10:31)
        →わかりました、ありがとうございます!/Yumiru(01/双華/炎/10 11:55)


ALL Belbet Horn発見報告/Reebelt(01/双華/炎/9 17:51)
  →Re:Belbet Horn発見報告/Sneepy(01/双華/炎/9 17:55)
  →突っ込め、お前なら逝ける/Donatello(01/双華/炎/9 17:56)
   →haha,huzakeruna!!!/Reebelt(01/双華/炎/9 18:01)
   →え、見たい、見に行ってもいいですか/Yumiru(01/双華/炎/9 18:07)
    →いいけど死ぬよ。かなりの確率で/Reebelt(01/双華/炎/9 18:13)
    →死ぬぞ、止めとけ/Donatello(01/双華/炎/9 18:14)
     →被った/Donatello(01/双華/炎/9 18:17)
     →どうでもいいけど何で題名で会話してんのw/Sneepy(01/双華/炎/9 18:23)
      →いや、その方が分かりやすいかと思ってw/Donatello(01/双華/炎/9 18:28)
       →死ぬのは嫌なので止めときます/Yumiru(01/双華/炎/9 18:36)


ALL 定例会議/Sin(01/双華/炎/9 9:58)
  →Re:定例会議:出席/Leila(01/双華/炎/9 10:03)
  →Re:定例会議:出席/Ninez(01/双華/炎/9 10:05)
  →Re:定例会議:出席/Roze(01/双華/炎/9 10:06)
  →Re:定例会議:出席/Sneepy(01/双華/炎/9 10:08)
  →Re:定例会議:出席/Coppel(01/双華/炎/9 10:09)
  →Re:定例会議:遅刻/Orga(01/双華/炎/9 10:11)

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「今皆に紹介するから待って下さいね。BBS見てる人居るかな」

 ユミルの手が素早くキーボードを弾き始め、そして画面が更新される。

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 White Garen BBS

 ツリー 表示 1-10 <1/2/3/4/5/6/7/8/9/10 Next>
 ソート 更新順/投稿順/投稿者名順/レス数

ALL 新しい方三名追加です/Yumiru(01/双華/炎/11 18:25)


ALL 祝☆弟入りました/Yumiru(01/双華/炎/10 18:01)
  →おお!!!/Sneepy(01/双華/炎/10 18:11)
  →それで今朝聞いてたのか/Reebelt(01/双華/炎/10 18:15)
  →よろ〜/Coppel(01/双華/炎/10 18:22)
  →よろしく、団長のドナテロです/Donatello(01/双華/炎/10 18:28)
   →嘘つけ↑吹いたw/Sneepy(01/双華/炎/10 18:33)
    →吹かせた↑/Donatello(01/双華/炎/10 18:36)
     →うるさいわ↑w/Sneepy(01/双華/炎/10 18:39)


ALL あの勧誘について質問なんですが/Yumiru(01/双華/炎/10 8:51)
  →Re:あの勧誘について質問なんですが/Sneepy(01/双華/炎/10 9:07)
  →Sinから入団の時貰ったメールを転送すればOK/Coppel(01/双華/炎/10 9:13)
   →そうなんですか!でも勝手に送っちゃまずいですよね?/Yumiru(01/双華/炎/10 9:20)
    →どうなのかねその辺。特に決まっちゃいないような/Coppel(01/双華/炎/10 9:25)
     →その辺は自己判断に任せますよ/Sin(01/双華/炎/10 9:36)
      →自己判断って曖昧なw/Sneepy(01/双華/炎/10 10:11)
       →入団規約に一通り条件は書いてあるから/Sin(01/双華/炎/10 10:20)
        →なるほど、確かに/Sneepy(01/双華/炎/10 10:31)
        →わかりました、ありがとうございます!/Yumiru(01/双華/炎/10 11:55)

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

「今皆さんの事紹介しましたから、後はきっと勝手に盛り上がるんで放置しましょう」

 そう冗談めいて、ユミルはPBを閉じた。

「ところで皆さん夕食は取りました?」
「いや、まだです」とエルツ。

 ユミルはにっこりと微笑む。

「それじゃ、レミングスの酒場でご一緒しませんか? そのうち歓迎会があると思いますけど、とりあえず前祝で、ここは私に奢らせて下さい」

 そう言って先陣を切って酒場に向かって歩き出すユミルの後をチョッパーが追って行く。
 唐突な展開に驚きを隠せないエルツ達。だが人の好意をつき返すよりは、その好意に甘んじて感謝した方が、奢る方も奢られる方も気分がいいだろう。エルツ達はその好意に甘える事にした。
 これもまた一つの出会い。こうした出会いの一つ一つがこの世界を形作っている。

「それじゃ、行きますか」

 顔を見合わせたエルツ達はふっと微笑み、酒場へと消えてゆく。
 酒場から漏れる淡い光の中で、そこには新たな仲間達と交わす笑い声が聞こえてくる。
+注意+
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