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ARCADIA ver.openβ≪Playing by Elz≫ 作者:Wiz Craft

〆 第五章 『双華祭』

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 S7 コルク射的

 水飴と冷やし飴で寛いだ一行は再び、人込みの中へと繰り出していた。
 中央の櫓を反時計回りに今度はB&B側の出店を見回る。その中の一つの出店で一同は足を止めた。店の中には二つの軸に取り付けられた三段の丸板がクルクルと回転していた。冒険者達は皆その丸板の上に乗せられた景品目掛けてコルク銃を撃つのだ。

「お、射的か」

 昼間とは異なり、夜は大賑わいの様子だった。
 一同はゆっくりと出店の方に歩いていき、懐から祭貨を一枚取り出す。店の中では半被を纏った茶髪の若い兄さんが、忙しそうに働いていた。

「お兄さん、こっちに銃四本お願いします」
「あいよ。兄さんと嬢ちゃん方ちょっと待っててな」

 それからすぐに店主と見られるその若男は、エルツ達に銃を持ってやってきた。

「一本につきチャンスは三回だ。よ〜く狙って撃ってくれよ」

 そうしてエルツ達は手渡された銃を受け取ると、それぞれ銃口にコルクを詰め始める。

「うわ〜、懐かしいな。何年振りだろな。射的なんて」
「エルツさんの地元ではお祭りとか無いんですか?」

 ユミルのその素朴な質問にエルツは頷く。

「うん、一人暮らし始めてから、周りに神社も無かったしお祭りなんて全然縁が無かったんだ」

 その言葉を聞いて意地悪く微笑むケヴィン。 

「寂しい奴だな、じゃもしかして大晦日も一人でカウントダウンするタイプか?」

 その言葉に真正面からケヴィンを見つめるエルツ。

「否定はしない」
「否定しろよ。しかも真正面から見つめられてそう断言されても」

 そんなやりとりを交わしながら、いち早くコルクを詰め終わったエルツが回転する木板に狙いを定める。台に腕を固定して、しっかりと景品を見定めていく。
 高さ的に、まずは三段のうち二段目の板が狙い目だろう。見た感じ、謎の人形(用途不明)、SR祭貨三枚組ケース、コルク弾三発セット、謎のコケシ(用途不明)、風鈴となかなか理解に苦しむ景品が揃っていた。一体、どういう趣旨なのか、特に人形やコケシは一体……風鈴はマイルームにでも飾るのだろうか?

「とりあえずはあれが狙い目だな」

 まず一発目を様子見として、狙った対象目掛けて撃ち込む。が、見事に外れた。
 隣ではケヴィン達も皆、それぞれ銃を構え始めていた。そんな中エルツは一人考察を始める。
 撃った感じ、狙った的の銃口一つ分、弾道が下に逸れるようだった。横軸については手元がしっかりしていれば問題は無い。一発目の反省点をきちんと踏まえ、改めて対象目掛けて引き金を絞るエルツ。
 パンという乾いた音と共に、弾き飛ばされたコルクは直線的な放物線を描き、見事対象を撃ち倒した。狙った対象は、コルク弾三発セット。コルクが三つ縦に積み重ねられただけのケースだった。これならば軽いし的は細く小さいものの当てさえすれば倒れる、そう踏んだのだ。そして、見事エルツはそれを成し遂げた。

「あいよ。コルク弾三発、おめでとう兄ちゃん」

 エルツは景品を受け取ると、すぐにコルク弾を補充する。

「すごいエルツさん!景品取ったんですか!?」
「コルク弾だけどね。撃てる回数が増えただけ。景品とは言えないかも」

 そして、エルツは今度は景品と呼べるモノに的を定める。
 マイルームもある事だし、風鈴はちょっと欲しいな。そう考えたエルツは長細い金属棒の上に丸く乗せられた風鈴の傘目掛けて銃口を向けるのだった。
 物理的に考えれば、地面と接触している以上、支点は接触部になるのだから対象の頭を狙った方が倒す確率は上がるはずだろうと、その目算で打ち込んだエルツのコルクは見事風鈴の傘で弾き返され無情にも地面に転がった。

「あれ倒せるのか……」

 頭を撃って倒せない以上、他の方法を考えねばなるまい。
 見たところ風鈴は軸が細く上に風鈴が乗せられた頭でっかちな形状となっているため、バランスが悪い。となればだ、試してみる方法はもう一つある。
 エルツは再び銃を構え、対象目掛けて打ち込んだ。狙いは対象の接触部、つまり支点を狙った軸ずらしだ。重心バランスが悪い、特にこの風鈴のような形状ならば軸そのものを狙ってやった方が効率が良い。そう踏んだのだった。そして、エルツの狙いは再び見事に的中する。
 心地よい風鈴の音が辺りに響き渡ると、店主は落ちた風鈴を拾い上げマテリアライズで景品をカード化するとエルツに差し出してきた。

「エルツさん、すごい! また落とした!?」
「何かコツあるんですか?」

 驚きの声を上げるユミルとミサにエルツは銃口一個分、上を狙うように二人に指示を始める。その横では丁度ケヴィンがもう一コイン祭貨を店主に差し出しているところであった。

「ケヴィン何狙ってるの?」
「あの、下駄欲しいんだけど。撃ってもビクともしねぇんだよアレ。絶対詐欺だ」

 ケヴィンの言葉に、彼が指し示す最上段で回る桐下駄を見つめるエルツ。

――なるほど、あれは難しそうだな――

 残りは二発。既に目当ての景品は一つ落としているし、ここはケヴィンに協力するか。
 そうして、エルツは桐下駄の上部目掛けてコルク銃を構える。
 狙いはもはや完璧だった。今なら寸分の狂いも無く狙ったところへ撃ち込む事が出来る。そしてエルツの指が今引き金を引く。放たれたコルクは狙い通り桐下駄の上部目掛けて一直線に伸び、そして真芯を捉えた。

「当たった」

 だが、立てられた下駄は前後に緩やかに揺れるだけで、それ以上のリアクションを返さなかった。

「何でだ、条件的には完璧だったはずなのに」

 開いた指を顎にあてて悩むエルツ。
 確かにエルツの言うとおり、コルクは桐下駄の最上部真芯を捉え、倒す条件としては完璧だった。
 隣ではケヴィンが桐下駄を捉えるものの、ビクともしないその様子に唸りを上げていた。

「こんなの倒せんのかよ、くそむかつく!」

 今にもコルク銃を投げ捨てそうなケヴィンのそんな様子を見ていてエルツはその時ふと思い付いた。

「ケヴィン」
「何だよ?」

 怒るケヴィンにエルツはニヤリと笑みを返す。

「協力しない?」

 そう、エルツの提案は一人では実行する事が出来ない。二人揃って初めて実行できるのだ。残る弾数は二人共あと一発。エルツの提案内容を聞いて、微笑み頷くケヴィン。

「なるほどな、やってやろうじゃないか」

 二人は同時に対象目掛けて銃を構える。狙う先は桐下駄最上部の左右。

「行くよ、用意いい?」
「オーケー。カウント頼む」

 ケヴィンの促しにエルツが静かにカウントを始める。

「1……2……」

 そして二人が同時に引き金に指を掛ける。

「……3!」

 エルツの掛け声と同時に放たれたコルクが桐下駄の最上部目掛けて一直線に飛ぶ。二人のタイミングに多少のラグはあったもののそのタイミングはほぼ同時だった。そうなればあとは当たるか、である。
 だが、そんな危惧の中、見事に二つのコルクは桐下駄の最上部を捉えた。そう、一つで威力が足りないなら衝撃を与える弾の数を増やせばいい。

「よし、当たった!」

 二人が歓声を上げる中、桐下駄は大きくバランスを崩し、そして後ろへと倒れ込む。カラカラと乾いた音と共に桐下駄が床に転がると、店主の若男は驚いた顔をして二人を見つめる。桐下駄を拾い上げマテリアライズする若店主。

「下駄落とすなんて、なかなかやるねぇ。ほら景品だ」
「おっしゃ!」

 ケヴィンはカードを受け取ると、それを高らかに掲げて叫んだ。
 その様子を後ろで微笑ましく見つめるエルツ達。ケヴィンはPB上で入手したカードを確認しながら、何やら操作を始めた。

「何やってんの、ケヴィン」
「この落とした下駄、装備できるらしい」

 その直後、ケヴィンの足元が光に包まれ、草履から桐下駄へと装備が変更された。

「ただの飾りアイテムじゃなかったんだ」

 ちょっとした意外性に驚くエルツ。となると、出店には桐下駄と同じように装備品があちこちに隠れているのかもしれない。そう考えると少しエルツは胸の高鳴りを感じた。

「まだ色んなアイテムこの祭りに隠れてるのかな?」
「新規追加されたアイテムとかもあるかもな。探してみようぜ」

 そうして、一同は一度広場から離れて、港へと向かってみる事に決めた。
 街全体を包み込んだ淡い赤灯に身を映し、その姿を再び人込みの中へと消してゆく四人。
 現実と変わりない祭の風景。ここが仮想世界である事も忘れて一同はただただ祭を楽しんでいた。
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