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ARCADIA
作:Wiz Craft



 S11 赤信号は危険の証


 先の戦闘から得た貴重な情報を元に、エルツは推論をこれから取り得る自分達の行動選択へと一つの結論へ結びつけていた。

「多分、現段階ではパーティーを組んで強いモンスターを狙うより、ソロでレベル1のモンスターを狩った方が効率がいい」
「確かにあれだけ苦戦して経験値1じゃな。それにソロならアイテムの分配の問題も無いしね」

 スウィフトが賛同する傍らでリンスはやや不安気な表情を見せていた。それに気づいたエルツはこんな言葉を付け足した。

「獲物には困らないし暫くこの辺でソロ狩りしよう。もしもの時を考えていつでも三人がフォローし合える様にあまり離れないように」

 その言葉に二人が了承し、そうしてパーティーが解散されたその時だった。

「うわぁ!」

 突然聞こえた悲鳴に三人の視線がその声の主を追う。それはここへ来た時に先約としてソロ狩りしていた少年だった。

「どうしたんだ!?」

 おそらくは、運悪く自分よりも格上のシャメロットを釣ってしまったのだろう。
 シャメロットに必死の形相で切り掛かる少年。だが、悲しいかな硬い甲殻に弾き返されて少年はその場に倒れ込んだ。そこへ容赦なく突きつけられる岩蟹のハサミ。
 少年はダメージを食らいながらも何とかその身を起こすと、再び懸命にナイフを振りかざした。その時。

「……え、何これ」

 少年は突然赤く発光し点滅を始めた自らの身体にたじろぐ。
 その光の意味を悟る前に、少年は大声で叫んでいた。

「助けて!」

 その言葉にエルツ達が一斉に少年の元へ駆け出した。
 今再び少年に叩きつけられるハサミ。少年の発光する光が危険信号であるという事は、説明を受けなくても三人の眼には明らかだった。

「こんにゃろう!!」

 少年の身体が再び地面に転がされるのを見て、駆け寄ったエルツは力任せにシャメロットを蹴り飛ばした。だが、シャメロットは若干体勢を崩すだけで、転ぶには到らなかった。その気配から察するにおそらくはLv3。普通に攻撃しては歯が立たない。
 リンスが少年に駆け寄るのを確認すると、エルツは向ってくる目の前の敵を再び捉えた。スウィフトが加勢し、二人で何とか転ばす隙を作ろうと足を使う。

「くそ、隙が出来ない」

 スウィフトが呟いたその時、シャメロットの凶鋏がエルツを真心で捉えた。
 体勢を崩して、膝を着くエルツ。そしてエルツが体勢を立て直そうと起き上がったところで、自らの異変に気づいた。

「まさか……」

 赤色に点滅するエルツの身体。それは生命の危険を発する信号である。
 直前にLv3のシャメロットと対峙していたエルツ達にとってこの連戦は厳しい戦いだった。

「エルツ、ここは僕に任せて離れろ!」
「馬鹿言うな、一人で勝てる相手じゃないぞ!」

 スウィフトの掛け声にエルツは真顔で返した。
 隙が作れないまま無情にも削られてゆく二人の体力。
 気がつけばスウィフトの身体もまた赤点滅を始めていた。

――どうする!どうすればいい!――

 エルツの頭が今この場で出来るあらゆる策を模索する。
 だが、隙が出来ない以上、打てる手は無い。

「くそ、こんなところで!」

 二人が死を覚悟したその時だった。
 エルツ目掛けて、鋏を大振りしたシャメロットの身体がよろめいた。
 その一瞬の隙をスウィフトは見逃さなかった。

「これでどうだ!!」

 シャメロットの身体の下に強引に手を滑らせたスウィフトは、そのまま強引にひっくり返した。もがくシャメロット目掛けて渾身の力を込めて、攻撃する二人。そこへ慌てた様子でリンスも加わった。

「ごめんね、遅れて!」

 リンスが加わった事で、怒涛の攻撃が始まる。
 そして三人の集中攻撃によって、静かに粒子化を始めるシャメロット。

「勝った……」

 溜息にも近いその言葉。立ち昇ってゆくその光を三人は満身創痍まんしんそういで眺めていた。
 ふと、後ろを振り返るとそこに少年の姿は無かった。どうやら、戦っている間に逃げてしまったらしい。

「逃げちゃったか……でも無事で良かった」とエルツ。
「そうだね」とスウィフトが頷いた。

 そして、エルツとスウィフトは赤点滅するお互いの身体を見合って失笑した。
 二人はパーソナルブックを手に取り、自分のステータスを確認する。

「危なっ!HP13か」とスウィフトが声を上げた。
「こっちHP5」とエルツが続けて、二人は大笑いを始める。

 そんな様子をリンスは微笑ましく見つめていた。

「危うく死ぬとこだった。いやぁ、むやみに善意で突っ込むもんじゃないね」
「いやいや、瀕死で助けに突っ込むその姿程美しいものはないですよ。何ていうの、犠牲心ってやつ」とスウィフト。

 満身創痍ではありながらも、三人は満足していた。
 それはただの自己満足かもしれない。
 それでも、三人にとってこうした経験の一つ一つが貴重な宝物だった。







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