魔法のカガミにお願い(承一)
グループ小説の第十四弾『起承転結小説』です。この作品は起、承、転、結でパート振り分けて違う作者が物語を書いていきます。(起)→叶愛夢さん、(承一)→春野、(承二)→神崎さん、(転一)→finoさん、(転二)→伊勢さん、(結)→よぞさんの形になっています。どうぞご覧下さい。
陸上部で鍛えた体。あたしは見た目よりかなり力がある。全身の力をこめて、あたしは半開きの窓を思いっきりこじあけ、体を押し込むようにして部屋の中に入り込んだ。我ながらスゴイと思う……。火事場のバカ力ってやつかな? だって、もう一度ちゃんと鏡を確かめなきゃ!
だって……今さっき、確かにちゃんと映ってたよね! 一瞬だったけど、間違いない! あれは、あれは、あの三人は! あたしの意中の男の子たち! 知的な王子様プリンス荒城先輩と、クールなスポーツマンタメの桐谷くんと、クルクル金髪の超キュートなクリスくん! 心に思い描くだけで胸がキュンとなって、ほんのり幸せな気分になる男の子たち。ああ、また胸がドキドキときめいてきちゃった!!
あたしの顔は自然とにやけてくる。ウフフフフ、思わずヨダレが垂れそうになって口の端を手の甲でゴシゴシと擦った。今の衝撃でオシッコも引っこんじゃった、クククッ……。
……そこまで考えて、あたしはようやく自分がここに何をしに来たのか、今何を見たのか、冷静に考える余裕が出てきた。そう、あたしは真夜中の十二時に『魔法の鏡』に映る運命の人を確かめに来たのだった! そう、あたしの運命の人、それが鏡に映ったの! 荒城先輩、桐谷くん、クリスくん……え? 荒城先輩、桐谷くん、クリスくん……。頭の中で何度もリフレインする三人の名前。
待って、待って、待って! 運命の人が三人……? あたしの運命の人が三人もいるってどういうことよ!!
あたしは怒りにも似た衝撃を受け、もう一度ペンライトでしょぼい鏡を照らしてみた。もちろん、そこにはもう三人の姿はない。そこにはペンライトを向けて睨み付けてるあたしの姿が、ぼんやりと映っている。
「……ちょっと、どういうこと?」
あたしはひびの入った古い鏡に手をかける。
「三人とも大好きだけど、なんで三人が映る訳……?」
もしかして、あたし三人に告白されちゃって、三人と同時につき合えるとか? ええっ! 三股? 頭の中で鮮明な妄想が渦巻き、つい興奮したあたし。同時に、鏡を掴む手に思いっきり力が入ってしまった。
パリンッ!
壊れかけの鏡の小さなひびが、蜘蛛の巣のようにみるみる広がった。
「ギャー!」
あたしの悲鳴とともに、魔法の鏡は粉々に砕け、音を立てて倒れた。どうにか鏡を避けて飛び退き、あたしに怪我はなかった。けど……やばい! どうしよう!
「魔法の鏡壊しちゃったよー!」
あたしの悲痛な大声が暗闇に響く。と、あたしの叫び声に重なるように、別の声が聞こえてきた。男の声……? 暗闇から見知らぬ男の声! あたしの心臓がビクンと跳ねる。真夜中の旧校舎……魔法の鏡に夢中だったけど、こんな時間女の子が一人で来るところじゃない。幽霊? 変質者? 悪魔? あたしの顔は恐怖にひきつり青ざめる。あたしは震える手で、声のする方にペンライトを照らした。
「メガネ、メガネ、メガネ……」
……? ペンライトを照らした先の床に一人の青年が屈み込み、必死で床を探っていた。黒いスーツを身にまとった華奢な青年。髪はボサボサスーツも薄汚れているけど、ライトで照らした青白い横顔はハッとするほど綺麗だった。
「あぁ、ありました。よかった、よかった」
青年はそう言いながら、床に転がっていた黒縁メガネを拾い上げて顔にかけた。その分厚い黒メガネをかけると、一気にいい男レベルが下がり胡散臭い雰囲気になる。いい男にはめっぽう弱いあたし、でもそれ以外には急に強気になる。
「……あんた、誰?」
ちょっとすごんで問いかける。
「私ですか?」
分厚いメガネで青年が見上げる。
「私は鏡の精の、加賀見 誠です」
「はっ……?」
何、その名前? 鏡の精だって?
「あなたが壊した『魔法の鏡』に長年住んでいた者ですよ」
加賀見という男は、スッと立ち上がり、メガネの奥からあたしを見つめる。
「困りました。今日から私の住処がなくなってしまいました。ここは、あなたが責任をもって私の住処を見つけてもらえますか?」
「住処って?」
「鏡ですよ。鏡ならどんな鏡でも構いません。あなたの持っている鏡に私を住まわせてください」
加賀見は冷静な口調でそう言うと、口を歪めて愛想笑いした。
ようやく書けました〜! 前回は美少女三人の登場、今回は美少年三人の登場で楽しくなってきましたね。(^^) ノリと勢いで書きました。ちょっとエネルギーを使いましたが、とても楽しかったです。新しく鏡の精も登場させました。これからの展開がとても楽しみです。
では、神崎さん宜しく!
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