([STORY]性を超えた人の続編です)
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マンションのエレベーターを出て、
左に曲がると同時に鍵を出そうとした時、
人影に気がついた。
「こんにちは」
「なんであなたが・・・どうやって入ったんですか?」
「人に付いて・・」
「呆れますね!」
「いいから」
「旦那さんは?」
「勝手にしろって」
「あの・・」
「いいの」
「いい加減にして下さい!」
「・・・あなたがこっちに来てから、先輩は寮を出たわよ」
「知ってます」
「あなたが移転した直後ね」
「だから?」
「しかも結婚したわ」
「関係ないです・・・」
「よく言うわよね」
そんな話は知っている。
もう忘れた話だ・・
「何しに来たんです?」
「しばらく居るわ」
「え?」
「居候させてよ」
「だからなんで?」
「だって帰るところないんだもん、あなたに夢中がばれて」
「関係ないです」
「関係あるわよ。受け入れたんだから」
「脅しですか?」
「ええ」
マンションの住人が出てきて、怪訝そうにこちらを見る。
「とりあえず、迷惑だから入ってください!」
マンションのワンルーム。
電気をつけて窓を開ける。
「綺麗だわ!それに夜景も綺麗!」
「都会が好きなんです・・・」
「明日は休みよ」
「だから?」
「どこか行こうよ」
「ばか!・・・寝ます」
「まあいいわ」
頭が痛い、なんでこうなる・・・
仕事でつかれていたせいか、自然と眠りに落ちる。
目覚めたのは昼過ぎだった。
「何をしてるんですか?」
「え、洗濯」
「勝手に・・・」
「お礼よ、気にしないで。主婦は強いんだから」
携帯が鳴る・・
「あたし!連絡くれないなんてひどくない?」
「あや、今は無理なんだ・・」
「マンションの下まで来たわよ。入れて」
悪い癖だ、嘘がつけない。
「・・・じゃあ入れよ」
「ねえ、誰かいるの?」
「いいから入れ」
オートロックのキーを空けた。
エレベーターの音が聞こえる。
どうしたらいいのか・・
めんどくさい、鍵を開けとこう・・
玄関のチャイムが鳴る
「出なくていいの?」
「出ても出なくても同じさ」
玄関を開けて、あやが叫ぶ。
「ねえ!どういう事!・・誰?」
「・・・」
「誰?お姉さん?」
「女兄弟はいないの知っているだろ」
ベランダからにこやかに話しかける。
「こんにちは、あなたは彼女さん?」
「誰ですか?」
「この人のファンよ」
「え?」
「熱烈なね」
「何してるんですか?」
「居候」
「ちょっと!」
「やめてくれ!あや!揉めるなら出てけ」
「何を言っているのよ!、この人なに?」
彼女がニヤリと笑いながら、あやを見据える。
「人妻よ」
「なんですって?ちょっとどういうこと?」
「ストーップ、あや、おまえは俺のなんだ?」
「え?」
「なんだよ?」
「・・・」
「あら?彼女じゃないの?」
「違う」
「なーんだ、じゃああなたも私と同じだわ。この人はね、彼女を作らないの」
「・・・私帰る!」
「負けね」
「な・・・」
「あなたの負け」
大粒の涙を出しながら、あやが飛び出ていく。
「あなたも酷いよね」
「・・・」
「まあ、理由はわかるけど、先輩の事気にならない?」
「関係ないです・・・」
「教えてあげるわ、ただし取引よ」
「なにを・・」
「私を抱きなさい」
「・・・」
「分かった?」
夜中、暗闇に怪しくシルエットが映る。
裸になった姿は確かに美しいが、所詮他人のもの・・
彼女はベットに座る私を見下ろし、静かに口を開けた。
「私の手の中に入りなさい」
「さっさと抱けばいいだろ」
「いいから横になって」
私の身体の上に、覆いかぶさるように彼女に押し倒される。
「ねえ、仕事の話をしてよ」
「なんで?」
「いいから・・・」
少しずつ話はじめると、途端に彼女の表情が変わった。
「うっ・・・」
「私はねぇ、こういう小生意気な頭脳を落としいれるのが快感なの」
「なにを、あ!」
「人妻をなめないで!」
身体のなかに指が…
「動くと腸が傷つくわよ!」
「なにを・・・」
あ、あつ…熱い!
「効いてきた?」
「何を入れた!」
「たいしたもんじゃないわ、前立腺の裏にちょっとね、散剤は効くわね」
熱い…やけそう…
「ふ・・私は騎上位じゃないと燃えないの」
熱い…あ、彼女の身体に飲み込まれる
「ふふ・・・」
薄暗い暗闇に、唇だけが見える。
魔女・・・精を吸われる・・・気が遠くなる・・・
次の日、一日中ダルかった。週末。
この二日間で、すべてを終わりにしたい・・・
周りを見ても彼女は居ない。
なぜ彼女を部屋に入れたのだろう?なぜここに?自分が望んだ?自分のせいだ・・・
涙が止まらない、何をしているのか分からない。
何時間泣いたのだろう・・・
携帯が鳴った
誰?表示を見て、血の気が引いた・・・
出たくない。
出たくない・・・
心とは裏腹に、通話のボタンを押している自分。
「あの・・・」
「元気か?」
「先輩?」
「お前のところに女がいるだろ?」
「なぜ知っているのですか?」
「書置きがある・・あなたから奪うってさ、なんだこれ?」
「わかりません・・・」
「お前、あの人は人妻だ、あの人を頼りにしている旦那がいるんだ、おまえはそれを壊す気か?」
「・・・」
「すぐに追い返せ、じゃないと・・・」
「じゃないとなんですか!」
「どうした?」
「あなたに何か言う権利があるんですか?」
「お前が何を言いたいか分からん」
「私がすべて悪いんですか!」
「お前が悪いだろ?」
「ならなぜ電話してきたんですか!あなたは奥様と家庭を守ればいいでしょう!」
「なにを・・・」
「あなたが私に触れましたか!一度だって触れませんでしたよね!私ばかりあなたに触れていた!」
「もうその話は・・・」
「忘れろと言うんですか!」
「やめよう・・・またかける」
電話が切れた。
涙は出ない。
女性を愛せない、あの人しか見えない。
私は・・・存在もない・・・
身体も、心も、触れなかった・・触れたのは・・
「だだいま!主婦は買い物は上手よ〜 あれ?どこ行ったのかな?」
ひんやりとした部屋。
一枚の紙がベットの上に・・
副都心、夜景は何か迷いの様に、妖しく煌めく。
ここは、よく1人で来た。
思いを馳せながら、1人、この屋上まで、何かあると勇気を貰いに来ていた。
さあ、勇気をくれ・・・この街の、記憶になりたい・・・
空はどこまでも暗く、星は都心の明かりで見えない・・・
視点はそこにしか無く、何かが後ろから押しているようだ・・・
口が思わず開いた。
「先輩の・・・ばーか・・・」
少しの涙と微笑みが漏れた
これで終わる
屋上の片隅から
足が外れた
地上まで
わずか数秒
私の記憶は
そこで途切れた
マンションの部屋で、不思議そうに彼女がベットに近寄る。
「これ・・・起き手紙?」
え?なんで?なんでよ!?
なんで・・・どうしてそこまで・・・
私にやれというの?こんな事できるわけないじゃない・・・
救急車のサイレンが鳴り響く。
彼女の顔から血が引く。
そのまま裸足で部屋を駆け出た。
赤いサイレンと人だかり。
真っ青な顔で人を押しのけて、ブルーシートに近づく。
「お知り合いですか?」
救急隊員の言葉も耳に入らない。
おもむろにシートをどける・・
・・・どうして?・・・
あなた、馬鹿よ・・・あの人は、捨てるわ。例えあなたの骨の一部だって・・・
石ころのように捨てるわ・・・
それを届けて欲しいなんて・・・
どこまで馬鹿なの?
記憶にも残らないわ・・・
ばかよ・・・ばか・・・
彼女の手から一枚の紙が風で飛んだ・・
かすれそうに書かれた文字
(お願いです、私が焼かれた後、指の灰を・・)
「バカーーーーーー!!!」
都心の喧騒は、そんな叫び声すらすぐにかき消す。
何も起こっていないかった。
最初から何も・・・
ただ、一つの記憶が消えただけ。
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