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異世界と外世界
作:てん丸



28、降誕 シルリア母




一つ一つが高級感漂うローリスヴィン家に入り、玄関で出迎えてくれたのは物腰柔らかそうな女性。

「ふふふ、いらっしゃい。」

成熟した感じがあり、外見的にシルリアの姉だろうか、ニコニコと楽しそうに微笑んでいる。

「シルちゃんがお友達を家に呼ぶなんて何年振りかしら。」

ほんわかした様子でこちらに歩いて来て、手を伸ばす。

「はじめまして、シルちゃんの母のラフィリミアです。」

そう言って悠斗、ティルと握手をし…

「「母!?」」

なんかミルトの時も同じような事があった気がするが、それはともかく。

「あら、意外?大人っぽく見えないのかしら…」

しょんぼりと首を落とすラフィリミア。

その全身から落ち込んでますオーラが発せられている

「い、いえ、二児の親には見えない程若々しく見えただけですっ!」

「ふふふ、お上手ね。」

悠斗が慌てて弁解すると、さっきまでしょんぼりしていたのが嘘のように口に手を当てて笑い出す。

「ミルちゃんから聞いてるわ。あなたたちがユウちゃんとティルちゃんね。どれくらい滞在してくれるのかしら?」

自分が決める事ではないので、悠斗はティルの方を見る。

「えっと、未定ですが長くなるかもしれません。」

「まあ、そうなの!」

お客さん〜お客さん〜…♪と歌いながらラフィリミアはウキウキした足取りで歩いていく。

色々とシアワセそうな言動というか、突然のハイテンションの襲来が終わり溜め息を一つ。



「友達、か…」

悠斗はポツリと漏らす。

「何か問題でも?」

「問題はないんだが何か違う気がして。」

ティルは何だろう、と悠斗を見る。

「ならユウトにとって私は何かしら?」

そうだな…と考えつつ天井を仰ぎ見る。

その目に映るのはシルリアとの記憶。

庭先に倒れていた謎の少年として興味を持たれて拾われ、地球の事を根掘り葉掘り訊かれ、あらゆる生活の基盤を無償で提供してくれ、ちょっとした興味にも応えてくれ……

それは…

「…仲間……?」

いや、違う。

「ゴメン。まだ上手く言葉に出来ないや。」

「そう。それならゆっくりと考えて答えを出せばいいわ。時間はあるから。」

シルリアの目は遠く何かを見つめるように細められていた。




※※※




ティルはバルコニーに出ていた。

シルリアに部屋の案内をされていたティルをラフィリミアが捕まえ引きずってきたのが約二分前。

そのラフィリミアは現在鼻唄を唄いながら随分と慣れた手付きで二人分の紅茶を用意している。

なんでもお客さんのことを知りたいらしく、それならユウトも呼べばいいのにと苦言を呈したのだが、ラフィリミアはユウちゃんとは後でお話するからまずはティルちゃんの番と受け付けず、お茶をしながら色々教えてねとなった次第である。

カタン、とティルの前にソーサーが置かれる。

「それじゃあ初めに、シルちゃんと会ったのはどれくらい前?」

「9日前です。」

ユウトと初めて会った日なのでちゃんと覚えている。

「ユウちゃんとは?」

「同じ日ですけど。」

そう答えるとラフィリミアは何故かふふふと笑う。

「じゃあ次の質問ね。」

ラフィリミアは、じーっとティルの顔を見つめながら、紅茶を飲む。

ティルもその動作につられて紅茶を口に含む。

「ティルちゃんはユウちゃんのどんなところが好きになったの?」

ティルは紅茶が吹き出すのを全力で堪え、ケホケホとむせる。

ふふふふふ、と悪戯が成功した子供のような顔で笑うラフィリミア。

「いつ好きになったの?どういう経緯で好きになったの?どういうところが好き?どこを直して欲しい?一番の思い出は?ユウちゃんに知って欲しい事は?逆に知られたくない事は?ユウちゃんにして欲しい事は?ユウちゃんはティルちゃんにとってどんな存在?ユウちゃんのことを考えるとどんな気持ちになる?ユウちゃんはティルちゃんの事どう思っているの?二人の関係はどこまで進んだ?キスはした?どんな味だった?将来の予定は?結婚式はいつ?子供は何人がいい?その他の家族計画は?…」

「ちょっ、ちょっと待ってよ!一度にそんなにも質問されても答えられないってっ!」

怒濤の質問ラッシュを慌てた様子で止めに入るティル。

「それじゃあ一つずつなら答えてくれるのね。」

「…あぅ…」

答える答えないの問題のはずなのだが、質問の仕方を変えようと提案するあたりにラフィリミアの性格が伺えると言えよう。

「……少し…だけなら…」

キラン、とラフィリミアの目が光る。

「二人はどこまで進んだの?」

「どこまでって……その……」

口篭るティルに、

「初夜は済んだ?」

超ストレート発言。

「しょ!?しょしょしょしょしょしょしょしょしょっしょー!?」

家出していようとも王族の娘、丁寧に育てられていたティルには(いささ)か刺激が強く過ぎた。

「あら、その反応じゃあまだみたいね…」

何故かしょんぼりするラフィリミア。

「それじゃあギュッてされたりキスしたりは?」

ブンブンと勢いよく首を横に振り…

(あ、でもデイスに来てすぐの事はギュッてされた内に入るのかな…)

首の動きが緩慢になり…

(背中に両腕が回されていたし……あぁ、あの時のことあんまり詳しく覚えてない。もっとユウトの感触を味わっておくべきだった…)

思考の脱線と共に首の動きが止まり、ポーッと何もない壁を見つめて…


…ティルとその視線の先を一往復させたラフィリミアが一言。

「キスはしたのね。」

再びブンブン首を振るティル。

「キスしてないの?だとしたらさっきの反応は…抱き締められたってこと?抱き締められてキスされないってどんな無粋な邪魔が入ったのかしら。」

あなたの娘が現れたんです、とは言えず。

「…次の質問ね。ユウちゃんのどんなところが好きになったの?」

「……それは…あの……えーっと……」

またも口篭るティル。

今度のラフィリミアは具体的な発言を控え、クリスマスにプレゼントを待つ子供のような顔でティルを見続ける

「……ええと…答えないというのは…?」

「ここは誰の家かしら?」

………。

その後の口篭ること数分。ようやく意を決し、自分に言い聞かせるように頷いてラフィリミアを見る。

「…それは…「あ、ティル。」……え?」

遮るように被せられた声の元を見れば、そこにいたのは話題に上っていた…

「ユ、ユユユウト!?」

どうかした?といった軽く首を傾げ、ティルが驚いて名前を呼んだだけだということが分かるとラフィリミアに顔を向けシルリアがどこにいるのかを尋ねる。

「シルちゃんなら地下の書庫にいると思うわよ。」

ラフィリミアが答えると悠斗は礼を言って去っていってしまった。

ティルはそれを確認するとフゥと息を吐き

「…話……聞いたのかな?」

「その点は大丈夫よ。」

何やら自信気にうん、とラフィリミアは頷いた。



「聞こえてなかったら私がユウちゃんに話し…」

「ダメッ!!!」







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