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最終舞台は華やかに
作:国沢裕



チャプター・3 ほーりゅう


「去年の後夜祭ライブに出てきた飛び入りグループ?」
 夢乃が聞き返してきたので、私は続けて言った。
「そう。とってもかっこいいグループだったらしいんだ! 明子ちゃんが今年も出るはずって言うんだけど」
 夢乃は、う〜んと考えながら紅茶を入れる。
 私は夢乃の家で、学校帰りにお茶をする習慣が出来ていた。居間では、夢乃お気に入りの紅茶・マリアージュ・フレールのマルコ・ポーロの香りが漂い始める。そのそばで、京一郎とジプシーが何処からかギターと楽譜を持ってきて、なにやらいじっている。
「確かに、格好良かったグループかと聞かれれば、その場の雰囲気もあるからね。そう見えたかな」
「え? 夢乃も去年、そのグループを見たの?」
「去年のこの時期には、私はもうこの高校を受験する気でいたから、下見がてら文化祭に行ったのよ。続けて後夜祭も全部みたわね」
「へぇ〜。……私もそのグループ、見たいな! 今年も出るんかな?」
 夢乃はお盆にストレートティを二つのせて、京一郎達に運びながら聞いた。
「今年も出るわよね」
「出るよ」
「出る出る」
 二人の声が上がる。

 ……何で、京一郎とジプシーが、はっきり断言するんだろう。
「その顔、わかってねぇだろ」
 京一郎が、私を振り返って言った。わかっていない。というか、今思い当たったが、まさかなぁ。
「去年飛び入りしたのは俺らだよ」
 ちょっと、いや、かなり自慢げに京一郎が言った。
「……うっそだぁ」
 こいつら、頭が良い上に、人に聴かせられる位の音楽まで出来るのか? それに聞いた話では、京一郎とジプシーは違う中学出身のはず。なんで去年グループを組んで出られるの?
「……クラスの連中、お前と同じで、高校で俺らが初めて顔を合わしたと思ってんじゃねぇの。学校だけが付き合いの場じゃねぇからな。俺らが出会ったのは、二年……二年半位前か」
 音の調律をしているジプシーが、顔を上げずに言う。
「中二の夏前位だったな」
 そうか。皆、高校に入る前からの知り合いだったんだ。バンドつながりかな?
 そう思ったので、京一郎に聞いてみた。
「いや、それは単なる共通の趣味の一つ。結構俺ら、重なる趣味が多くてさ」
 そう言いつつ、嫌そうに京一郎が続ける。
「こいつと勝負モノで競って、剣道以外で勝てた事がないのが気に食わねぇ」
 私は笑いながらも感心しつつ言った。
「へぇ……ジプシーって、勉強や音楽だけじゃなくて何でも出来るんだ。って、京一郎は剣道するんだ」
「剣道だけは、小さい頃から親に習わされていたからな。……そうそう、去年の後夜祭は、俺の先輩がお膳立てしてくれたから、飛び入りで出られたんだよ。今年は在校生だから、正式に申し込めるよなぁ」
 ……京一郎の先輩とは、やっぱり族の方ですか……。聞かないでおこう。
「でも、うちのクラス、文化祭で舞台するって聞いたし、委員長としてはジプシー、忙しくなるんじゃない? いろいろ練習もしないといけないんでしょ」
 私は、紅茶に砂糖を二杯入れてぐるぐるかき回しながら言った。フルーティーな香りが立ち上る。私の言葉を聞いているのかいないのか、ジプシーの返事は無い。
 代わりに夢乃が、小さな声で私に言った。
「ジプシーは、忙しい毎日がいいのよ。わざと用事を入れて忙しくしている。……余計な事を考えなくて済むから」
 
 ……そんなに青春時代を一生懸命しなくても。いや、青春時代だから一生懸命するのか。でもまあ、なんでも出来る人は忙しいんだ。もう少し、のんびり過ごす時間があってもいいのにね。







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