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最終舞台は華やかに
作:国沢裕



チャプター・13 京一郎


 目の前の、式神召喚の陣。
 その前で両膝をつき、両手で印契を結んで真言を唱えている、クラシックな衣装に身を包んだ黒髪の可愛らしい美少女、に化けている男。
 ……変な絵。
 なんて考えている場合じゃない。俺には、もう一つ気になる事があった。
 俺も夢乃も、そちら方面の能力が全くない為に、ジプシーの召喚する式神は見えない。
 しかし、超能力を持っているというほーりゅうには、果たしてジャンル違いのそれが見えるのだろうか。
 
 皆で陣を見つめているその時、ジプシーの目線が陣からはずれ、すっと上を向いた。
 夢乃が、ジプシーの動作に気が付いて、見えてはいないのだろうが同じように上を向く。
 だが、ほーりゅうはワクワクした表情で、まだ陣を見つめていた。
 ……こいつも式神は見えていないんだ。残念なような、同類で嬉しいような。
 眼で式神を追っていたらしいジプシーが、立ち上がった。
「向かいの職員室棟、四階の理科室前」
 独鈷を一つ掴んで、ジプシーは屋上から階段へ続く扉へ向かって走りだした。
「くそっ! マジで強盗犯がいたのか!」
 俺も夢乃も、一つずつ独鈷を掴み、奴の後を追って走り出す。
「あ〜! 私だけ、何か名前知らないけれどソレがない〜!」
 ゲーム中に一つ足りない物を取り損ねた様な事を言いつつ、ほーりゅうは仕方なくFAX用紙を拾って走り出した。

 階段を駆け降りながら、夢乃が言う。
「理科室って、もしかして強盗犯は持ち出し禁止の薬品狙い?」
「理科室は偶然かもしれないが。文化祭で生徒棟と講堂と運動場は今、一般客も溢れている。開放していない職員室棟の上の階は、そういう意味では人がいない」
 四階には渡り廊下がない校舎構造なので、三階まで降りて渡り廊下を走る。
 その途中で俺はスピードをあげ、夢乃を引き離して走り、裾の長いドレスで走りにくそうなジプシーに追いつく。
「……四階へ続く階段を上がった直後に一人」
 ジプシーが言う。FAXで送られて来ていた、二人の男の顔写真を思い出す。
 直感。多分待ち構えているのは、筋肉質の男の方だ。なら、こちらに分があるのは、力よりもスピード。
 俺は動きにくいジプシーより先に階段を駆け上がる。
 四階に着く直前、曲がり角で待ち構えていたらしい男が姿を現し、上から俺に飛びかかって来た。

 聞いていたお陰で俺は予定通り、階段途中で一瞬左へ身体をかわし、男の腹に思い切り右足を振って蹴り上げる。相手は俺の動きを予測をしていなかったのだろう。綺麗に振蹴が決まり、男の体勢がバランスを崩して低くなる。俺はそのまま駆け上がりつつ、すれ違いざま、後ろから体重をかけて右の腕刀を延髄に叩きつける。
 男は前のめりにふらついた。そこへジプシーが追いつく。
 ジプシーは右手を差し出し、前のめりになっていた男の右手を握手するかのように握る。そのまま身体を反転させて握手の下を左下からくぐり、男を階段下へ投げ飛ばした。仰向けに倒れる男の鳩尾に、間髪入れず飛び降りたジプシーの片膝が食い込む。
 俺の勢いに任せた攻撃に加えて、ジプシーの基本忠実で正確な技が決まる。予想通りだった筋肉質の方の男は、間違いなく意識不明だ。やり過ぎの感があったが、何と言っても相手は強盗犯。確実に倒す為だ。仕方がない。
 俺とジプシーはお互いに、無言で親指を立ててOKの合図を交わす。

 ほーりゅうと夢乃が追いついた。
「何? もう終っちゃった? この人、泡吹いてんじゃん。大丈夫なの?」
 残念そうに言うほーりゅうの口を、夢乃が慌てて押さえる。
 そうだ。もう一人いる。多分この筋肉男より頭の回りそうな、ずる賢いイメージの男。
 今度は、全員でゆっくりと足音を立てないように、階段を上がる。
 階段を上りきった所でジプシーが、曲がり角から顔を出して、廊下と片側に並ぶ教室の様子をみた。
「……気配が無い」
「今の間に逃げたか? 式神は?」
「……廊下向こうの突き当たりに、上着が落ちている。……何かしらのトラップかな。式神はその上に乗っている……俺を確認して、今消えた」
 俺も覗くが、当然式神は見えず、遠くの方で落ちている服だけが見えた。
 廊下の片側は全て外に向かった窓。開いたりしまったりしているが、特に何かが仕掛けられている様子はない。
 埒が明かないと思ったか、ジプシーがゆっくりと廊下へ踏み出した。
 俺は、開きっぱなしのドアから、一番近い教室の中を覗きながら夢乃に言う。
「お前ら二人はここで待っていろ。絶対に動くなよ」
 俺は夢乃が頷くのを確認してから教室の中へ、気配を確認しつつ忍び込んだ。







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