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最終舞台は華やかに
作:国沢裕



チャプター・11 ほーりゅう


 文化祭。既にいろんな所で催しが始まっている中、私は校内の廊下をクラスの他の女子と一緒にジプシーを追いかけながら、夢乃の言葉を思い出す。

<舞台の宣伝なんだから。ジプシーに追いつかないように追いかけ回すのよ。学校中の特に女子に彼の女装姿を見せて、興味を持ってもらうのよ。絶対捕まえず見失わず、とことん追い回すのよ!>

 夢乃って意外と鬼のような性格なんだなぁと思いながら、言われた通りに追いかける。幸い、ジプシーは着慣れないジュリエットの衣装を着ているので、とっても走りにくそうだ。どうにか見失わずに行けそう。
 こんな簡単な計画に引っかかるなんて、ジプシーって案外ドジなんだなぁ。
 つい笑いそうになりながら廊下を走っていると、急に後ろから、今すれ違った人に腕をつかまれた。
 思わず振り返る。
 最初に眼に入ったのは、私の腕をつかんでいるその人の、背中の半ばまである髪を一つに編んでいる三つ編み。だが、顔を見上げると、面白いモノを見たと言った感じで笑っている眼をした男の子だった。
「今の彼、君のクラスの男子?」
 声もちゃんと男の子だ。同い年位かな? 私服だから、この高校の生徒じゃなさそう。
「そうよ。十一時過ぎから講堂の舞台で劇をするの。観に来てよ」
 その男の子は更に笑いつつ言った。
「今の彼に伝えてよ。俺が今まで会った女性の中で、君は二番目に綺麗だって」
 私もつられて笑いながら聞いた。
「あんたの出会った中で、一番綺麗な人って誰?」
 男の子は、ちょっと私に近づいて耳元で答えた。
「もちろん、俺の母親さ」
 笑いながらそう言うと、男の子は片手を振りつつ背中を向けて離れていった。
 私は、何だかとても楽しくなった。なので笑いながら逆方向に、見失ったジプシーを探しに走って行った。
 うん。いろんな出来事があって、文化祭は何か楽しいな。

 その時、校内放送が聞こえた。
『一年の佐伯夢乃さん。職員室まで来てください』
 夢乃が呼ばれた。なんか用事なのかな? 委員長のジプシーがこんな状態だから、副委員長は用事が増えるよね。
 なんて思いつつ、さて、ジプシーはどっちに行ったのかなと考える。
 ……なんだ、結局私一人だけ、まかれちゃったよ。

 夢乃は職員室に入って行った。校内放送用の機械が置いてある場所に近づく。夢乃を放送で呼び出した女性教師が気が付いた。
「あ、佐伯さん。今、おうちから電話が入っているのよ」
「ありがとうございます」
 夢乃は教師に礼を言って、電話の受話器をとる。
「夢乃です。……お父さん」
 警視庁に籍を置く父親からだった。そして、話を聞く夢乃の表情が強張る。
 それと同時に、職員室の片隅に置かれていたFAXが受信を始めた。
 夢乃は、電話の途中で先程の教師を振り返って言った。
「先生、急ぎの用があるので、私が校内放送で呼び出しをして構いませんか?」
 教師が頷くのを確認してから、夢乃は電話に向かう。
「お父さん、今呼ぶから、このまま保留をお願い」
 夢乃は校内放送のマイクの電源を入れる。

『一年の江沼聡君、至急職員室まで来てください』

 数分後、職員室の前からざわめきが聞こえた。職員室の皆が何事かとドアの方へ注目する。そこへ、一人の少女が姿を現した。
 クラシックなドレスに身を包んだ、ロングヘアーの可愛らしい女の子。その可愛さに思わず周囲から感嘆の声まで上がった。その少女の瞳が探し物をするように職員室の中を見回す。
 はっと一人の学年主任が気が付いた。
「お前、一年の江沼か! なんて格好をしておる!」
 その言葉に、職員室とドアの付近にいた者が更にざわめく。 
 夢乃を確認し、職員室の中へ進みながら、ジプシーはアルトの声で言った。
「すみません。舞台の衣装合わせの途中で、至急と言われたものですから」
 夢乃のそばまで来ると、彼女の表情に気が付いたようにジプシーの表情が一変する。事態を把握したらしい。
「お父さんから電話が入っているわ」
 頷いてジプシーは受話器をとる。
「代わりました」
 その間に夢乃は教師に聞いて、届いているであろうFAXを受け取りに行った。







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