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森の結界



「おはようございます。ご主人さま」


 スピカの一声により悠斗の意識は鮮明になる。

 その日の悠斗の目覚めは、正午を過ぎた時刻であった。



「ぬ。ヌルヌルは……ヌルヌルだけは勘弁してくれ……」



 シルフィアは未だに目を覚ましていないようだ。

 何やら悪夢にうなされているような声を発していた。


(昨夜の触手攻めで……1番ハッスルしていたのがシルフィアだもんな……)


 暫くはソッとしておいた方が良さそうである。



 それから。

 悠斗たちはリリナの作った昼食を取りながらも今後の予定を話し合っていた。


「……神樹?」


「ああ。神樹というのはケットシーの村で祭られている木のことだ。神樹からは色々な種類のレアなアイテムが収穫できるって話だぜ。ユートはこの村の大切な客人だからな。今日1日だけ、自由にアイテムを取っても良いという約束を取り付けてきた」


「おお! マジか!」


「あの……サーニャも神樹を見たいのです! 冒険者さん。サーニャも一緒に連れて行って欲しいのです!」


「別に構わないが、サーニャは何時でも見れるものじゃないのか?」


 尋ねるとリリナは首を振り。


「いや。神樹の付近は、特別な事がない限り村人たちも出入りが禁止されている。神樹から収穫できるアイテムはこの街の貴重な収入源になっているから、こういう機会がないと立ち寄ることが出来ないんだよ」


「……なるほど」


 村全体に利益を与える木の実とは一体どのようなものなのだろうか?


 リリナの話を聞いた悠斗は、神樹の存在に対して益々と興味を抱いていた。


 5人で昼食を取った後。

 悠斗たちは神樹の植えられている村の深部を目指すことにした。



 ~~~~~~~~~~~~



「なあ。リリナ。この地面から立ち昇っているモヤモヤした物体は何なんだ?」


 神樹に向かって歩いている最中。

 悠斗は不可思議な物体の存在に気付く。


「ああ。それは村全体を覆っている結界だよ」


「結界って言うと……。このモヤモヤには魔物を寄せ付けないための効果があったりするのか?」


「大体そんな感じだ。こういうのは口で説明するより1度外に出てみる方が早いと思うのだが……」


 リリナの言葉を受けた悠斗は名案を閃いたかのようにポンと手を叩く。



「良いこと思いついた! スピカ。試しにお前が結界の外に出てみろよ!」



「わ、私ですか!?」


 唐突に話を振られたスピカは動揺していた。


「おう。そうと決まったら早く早く!」


「なっ。えっ。ちょっ!? ご主人さま!?」


 悠斗は強引に背中を押してスピカを結界の外に追い出した。

 二人のやり取りを見たリリナとシルフィアは、悠斗に対して白い視線を送っていた。


 その場のノリでスピカのことを結界の外に追い出したものの――。

 悠斗たちの側からは特にこれと言った変化が見られなかった。



「……あれ? ご主人さま? ご主人さまは一体どこですか!?」



 一方でスピカの方は別である。

 結界の外に出たスピカは、すぐ傍にいるはずの悠斗たちの姿を完全に見失っていた。


 その原因が結界の外に出たことにあると判断したスピカは、元いた場所に戻るために森の中をフラフラと彷徨い回る。


(……妙だな)


 スピカが森の中の隅々を歩き回っていたのだが、不思議なことに結界の中に辿り着くことはなかった。


「これで分かっただろ? 結界の外にいる人間は内側の人間を認識することが出来なくなるんだ。中に入るには、こういうネックレスが必要になる。つまりはこの結界の中にいる限りオレたちは絶対に安全というわけさ」



 解封の魔石@レア度 ☆☆

(結界の内側に入るために必要な魔石。石に特定の文字を刻むことで鍵としての役割を果たす)



「……なるほど」


 リリナの説明を聞いた悠斗は冷静に頷く。

 一口に魔石と言っても様々な種類のものが存在しているらしい。


「うぅぅ。ご主人さま……シルフィアさん。……何処でしょうか?」 


 一方のスピカは半泣きであった。

 森の中をフラフラと彷徨い歩いているが、その足取りに力はなかった。



「びえぇっ。びええ……」



 10分近く森の中に放置されたスピカは、その場にうずくまり泣き崩れてしまう。

 ネガティブ思考のスピカは悠斗に見捨てられたのではないかと考えたのであった。


「大丈夫。俺は此処にいるぞ」


 流石に放置し過ぎたかと判断した悠斗は、その場にいた誰よりも先に結界の外に出る。


「ご、ご主人さま!?」


「悪かったよ。少し悪戯の度が過ぎた」


「め、滅相も御座いません! こうしてご主人さまに、声をかけて頂けるだけで私は幸せです!」


「よしよし。可愛いやつだな」


「はぅ……」


 悪戯をした後のアフターケアとして悠斗は、スピカの頭を撫でることにした。


 すると、先程までの絶望的な表情から一転。

 スピカは途端に幸せそうな表情を浮かべていた。


「不思議なのです。どうして冒険者さんは……スピカお姉ちゃんに意地悪をするのでしょうか?」


「知らねえよっ! んなもんオレが知るかっ!」


 サーニャの純真な質問を受けたリリナは取り乱していた。


 昨日の夜。

 隣の部屋から聞こえてくる悠斗たちの声をこっそりと聞いていたリリナは、そのことを思い出して、一層と顔を赤くする。


「……おそらく。サーニャ殿も大人になれば知るときがくるだろう」


「ふにゅ~。なんだか釈然としないのです」


 悠斗とスピカの不可解なやり取りを目の当りにして、サーニャは小首を傾げるのであった。





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