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王都エクスペイン



 それから。

 かれこれ二時間ほど歩いただろうか。


 道中、何匹か魔物に出くわしたものの街を目指すことを最優先に掲げていたので悠斗は、それらを無視して歩みを進めていた。

 悠斗が街に着いたころには、辺りはすっかりと暗くなり、視界が悪くなっていた。


(……危なかった)


 欲をかいて魔物の討伐を続けていれば、日が落ちるまでに街に着くことは困難だっただろう。


《ロードランド領 王都エクスペイン》


 街の入口にはそんな看板が掲げられていた。

 書かれていた文字は日本語ではない――全く見覚えのない言語であったが、どういう訳か悠斗はそれを読むことが出来た。


(きっと……この世界に召喚された時に翻訳魔法でもかけられたのだろう)


 悠斗は都合の良いように脳内補完をすると本日の寝床を探すことにした。



 ~~~~~~~~~~~~



 宿屋《宵闇の根城》


 暫く街を探索した後。

 悠斗はそんな名前の宿屋を選ぶことにした。


 理由は単純に最初に見つけたのがこの店だったからだ。

 1泊するだけの宿を選ぶのに時間をかけていても仕方がないだろうと、悠斗は判断したのであった。


「いらっしゃいませ。こんばんは」


 中に足を踏み入れると一人の少女が悠斗のことを出迎えてくれた。



 スピカ・ブルーネル

 種族:ライカン

 職業:女中

 固有能力:なし



 歳の頃は15歳に満たないくらいだろうか。

 身長は150センチを少し超える程である。

 頭からピョコンと生えた犬耳が愛らしい少女であった。


 惜しむべきは彼女の外見が、あまりにもみすぼらしいところだろうか。


 長い間、手入れをしていないのだろう。

 頭髪は全体的にバサついており、その前髪は彼女のクリクリとした二重の双眸を隠すほどに伸びきっていた。


 着用している衣服は、襤褸(ぼろ)としか形容できないほど薄汚れており、一種の哀愁さえ感じられる。


(うーん。勿体ないな)


 身なりさえキチンと整えれば、かなりの美少女に変貌を遂げそうな逸材であるのに本人にその気が見られないのが惜しいところである。


「旅のお方でしょうか? 当店のご利用は初めてでしょうか?」


「ああ。今晩泊まれる宿を探しているのだが……1泊すると幾らになるのか聞いてもいいか?」


「はい。個室での宿泊を御希望でしたら一泊400リアで朝食付きになっています。相部屋での雑魚寝でよろしければ1泊100リアになります」


「……なるほど。では個室の方を頼む」


 いくら節約になるとは言っても、知らないオッサンと寝床を共にするのは勘弁願いたい。


「かしこまりました。ただいま鍵の方を用意しますのでこちらの書類にお名前を御記入下さい」


 スピカは愛想よく笑顔を浮かべると犬耳をピコピコと動かしながらも悠斗の元を離れて行く。


(一泊朝食付きで400リアか)


 鞄の中にはオークたちから奪い取った59350リアの資金がある。

 つまりは他に浪費がなければ5カ月近くは宿に滞在することが可能である。


 もっとも……異世界で生活するには何かと他に必要経費が発生するだろう。

 このまま稼ぎがないと意外と直ぐに資金は底をついてしまうのではないかと悠斗は予想する。


「お待たせしました。こちらは203号室の鍵でございます」


「有難う。かなり細かくなるけど、支払はこれで」


 悠斗は鉄貨40枚を魔法のバッグから取り出して支払を済ませることにした。


「かしこまりました。枚数を確認しますので少々お待ちください」


 スピカは1枚1枚丁寧に鉄貨の枚数を数えていく。

 40枚分の鉄貨を取り出したことにより魔法のバッグからは幾分、重さがなくなっていた。



「確認が終了致しました。400リアちょうどになります。どうかゆっくりと御くつろぎ下さいませ」



 スピカから鍵を受け取った悠斗はさっそく階段を上がり指定された部屋の中に入ることにした。



「うわ……。これは酷いな……」



 部屋の中は個室と言えば聞こえが良いが、六畳ほどの空間の中にワラ布団が敷かれただけの質素なものであった。

 日本という国で生まれ育ちフカフカのベッドに慣れていた悠斗にとってこの環境は些か厳しいものがあった。


 けれども、今更不満を言ったところで仕方あるまい。

 悠斗は岩のように固い床の上でゴロンと横になる。


 自分で思っていたよりも体に疲れが溜まっていたからだろうか。 

 悠斗の意識が闇に落ちるまでにそれほど時間はかからなかった。



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