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VS 吸血鬼2



「ああ……! イイ……! やはりキミは良いよ! それでこそ僕の見込んだ男だ!」


 ギーシュの妖刀と悠斗のロングソードが激しく衝突。

 外部の世界から隔離されたかのような錯覚さえ受ける静粛な屋敷の中には、2つの金属音が錯綜していた。



(これは一体……どういうことだ? まさか吸血鬼と此処まで戦える人間が実在していたとは……?)



 両者の攻防を目の当りにしていたシルフィアは愕然としていた。


 シルフィア・ルーゲンベルクは幼少の砌より父親から古よりルーメルに伝わる宮廷剣術を習得しており――。

 剣を握らせれば、屈強な冒険者たちをも圧倒する卓越した腕前を誇っていた。


 けれども。

 そんなシルフィアの眼から見ても尚。


 悠斗の剣捌きは過去に比肩する者が皆目、見当が付かないほどの実力を秘めているように思えた。



「ふふ。まさか魔族である僕と互角に刃を交える人間がいるとはね。少し驚いたよ」



 剣戟の最中。

 ギーシュはそんな台詞を口にして悠斗との距離を取る。


「おおかた肉体強化系の固有能力を所持しているのだろう? けれども、残念だったね。キミは100パーセント僕には勝つことは出来ないよ。今からその理由を教えてあげようか?」


「おう。タダで教えてくれるなら聞いておいてやるよ」


「……ふふ。キミが僕に勝つことの出来ない理由は3つある」


 あくまで余裕の笑みを崩さない悠斗。

 そんな悠斗の態度に対して怪訝な表情を浮かべながらギーシュは続ける。


「1つ目は種族の差だ。僕は魔族の中でも取り分け生命力に優れた吸血鬼という種族でね。人間とは基本的な体の構造からして違うのだよ。キミたち人間は心臓を刀で貫かれただけで絶命してしまうのだろう? まったくもって……同情してしまうよ」


「ふむふむ。それで……?」


「2つ目は装備の差だ。我が愛刀は魔族の間でもその雷名を轟かせている業物でね。たったの1回の攻撃でキミの体に致命傷を負わせることが出来るのだよ」


「なるほど、なるほど」


 悠斗は既に魔眼スキルを使って敵対する相手の装備を見透かしていた。

 従ってギーシュの言葉は、悠斗に驚きを与えるものではなかった。



 簒奪王の太刀@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆

(攻撃した相手の『自由』を奪うことの出来る刀剣。斬り付けた相手を麻痺状態にする効果がある)



 貴族のタキシード@レア度 ☆☆

(防具としての性能には乏しいが、装飾性に優れている)



 貴族のブーツ@レア度 ☆☆

(防具としての性能には乏しいが、装飾性に優れている)

 


「3つ目は準備の差だ。僕はキミが来ることを事前に予測して、とあるトラップを用意させて貰っている。

 このトラップは僕の意思1つで何時でも作動できる。仮に作動すれば、ただでさえ限りなく0パーセントに近かったキミの勝率が完全に0になるという算段なのさ」


「ふーん。そのトラップって言うのは……あのシャンデリアのことか?」



 沈黙の灯火 レア度@ ☆☆☆

(照らされた人間の固有能力、及び魔術の使用を禁止するロウソク。火を灯した人間には効果が及ばない。レアリティ詳細不明の固有能力は無効にすることが出来ない)



 悠斗は魔眼のスキルを用いてギーシュの仕掛けたトラップを一瞬で看破した。



「……!? 貴様……まさか《魔眼》のスキルホルダーか!?」



 ギーシュは戦慄した。

 森羅万象の本質を見抜く《魔眼》のスキルは、その汎用性の高さから非常に希少価値の高い固有能力としてその名を知られていた。


 相手が《魔眼》のスキルを所持している以上、こちらの固有能力は既に知られてしまっていることを意味していた。


「そんなことはどうでもいいからさ。早くそのトラップっていうのを作動して見せてくれよ。まあ、どうせ勝負の結果は変わらないんだろうけどさ」


「ふん。後悔するなよ! 人間風情がっ!」


 ギーシュが激昂した次の瞬間。

 魔眼のスキルを封じられた悠斗は、先程まで見えていたステータス画面が途端に確認できなくなった。


 試しにウィンドの魔術を使用しようと試みるもこれも失敗。

 どうやら《固有能力》と《魔法》を封じるという沈黙の灯火の効果は、正常に作動しているようであった。


「……バ、バカな。ありえん。ありえんぞっ!」


 だがしかし。

 自ら仕掛けた罠に相手を追い込んだにもかかわらず。


 取り乱しているのはギーシュの方であった。


「なあ。お前がどうして焦っているのか当ててやろうか?」


 悠斗はそこで以前に確認したギーシュの所持する固有能力について思い出す。



 警鐘@レア度 ☆☆☆☆☆

(命の危機が迫った時にスキルホルダーにのみ聞こえる音を鳴らすスキル。危険度に応じて音のボリュームは上昇する)



「もしかして……さっきからお前の頭の中でピーピーと警鐘が鳴っているんじゃねえのか?」


「……!?」


「大方トラップさえ発動させれば音が消えるとでも思っていたんだろう? けれども、その様子だと相変わらず警鐘のスキルは発動し続けているみたいだな」


 図星を突かれたギーシュは言葉を失った。


 けれども、一体何故?

 固有能力と魔法を封じたにもかかわらず警鐘のスキルが反応するのか――。


 ギーシュには理解が出来なかった。



「ああ。どうやら僕はまだ……キミのことを過小評価していたようだ」



 そう告げるとギーシュの肉体は吸血鬼としての本来の姿に形を変えていく。

 背中からは巨大な蝙蝠の翅が現れ、口からは獣のように鋭い牙が生える。



「悪いが……ここからは先は、本気で殺らせてもらおう」



 妖刀《簒奪王の太刀》を握り締めたギーシュは、天井に届くような勢いで跳躍。

 2枚の翅を羽ばたかせ、空高くより悠斗に攻撃を仕掛ける。


 人の姿を捨てたギーシュの剣圧は、明らかにその威力を増していた。 

 

 悠斗は咄嗟に攻撃を手にしたロングソードで受け止める。

 

 勢いよく金属が擦れ合い火花が散る。

 両者の戦いは更にその激しさを増していった。






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