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ラッセンの訪問

 


 悠斗がレジェンドブラッドのメンバーとの共闘により、白虎を打ち破ってから数日が過ぎた。


 あれからというもの悠斗は何時もと何ら変わらない平穏な日常を過ごしている。


 自宅のベッドの上で横になりながらも、悠斗は物思いにふけっていた。



(それにしても……どうして白虎は愛菜の存在を知っていたのだろう)



 事情を聞こうにも、白虎は既にこの世にはいない。


 いっそのことソフィアに頼んで蘇生してもらえば良かったのだろうか?


 ハッキリとした情報を掴むことが出来ずに悠斗の胸の中には、モヤモヤとした感情だけが残っていた。



(ん……? なんだろう。これ……?)



 人の気配を感じ、ふと視線を上げる二つの球体がそこにあった。 


 

 試しに両手を伸ばして掴んでみようと試みる。



 ――が、激しい殺気を感じたので寸前のところで思い留まることになった。


 よくよく見てみると、そこにあったのは女性の大きな胸であった。



 ラッセン・シガーレット

 種族:ヒューマ

 職業:冒険者

 固有能力:読心


 読心@レア度 ☆☆☆☆☆☆

(対象の心の状態を視覚で捉えることを可能にするスキル)



「自宅だからと言って少々だらけ過ぎでないか? キミらしくない。私が暗殺者だったら今頃キミは地獄行きだな」


「俺みたいな善人を捕まえて何を言っているんですか。せめてそこは天国と言って下さいよ」


「……キミの場合、本気でそう思っていそうだから性質が悪いな」


「???」



 ウェスタンハットを被った女性の名前はラッセン・シガーレット。

 悠斗とはエクスペインの冒険者として先輩・後輩の関係を築いている。


 冒険者という肩書とは別に凄腕の情報屋でもある彼女には、悠斗もこれまで様々な面で助けられてきた。



「珍しいですね。ラッセンさんが家に遊びに来るなんて」


「いや。なに……ちょうど近くを立ち寄る用事があってね。せっかくだからキミの様子でも見ておこうかと思ったのだよ」


「どうして俺なんです?」


「聞くところによると近頃のキミは全く元気がないそうじゃないか。スピカ君やシルフィア君がキミのことを心配しているよ」


「あ~……」



 痛いところを突かれてしまった。

 このところ悠斗は愛菜のことが気になってしまい、何事に対しても無気力な日々が続いていたのである。


 聞くところによればスピカとシルフィアは、ラッセンと休日に3人で遊びに出かけることもあるらしい。


 いわゆる女子会というやつである。

 何時も屋敷の中に閉じ込めておいてもストレスが溜まってしまうだろうし、たまには自分のいないところで羽を伸ばす時間も必要だろう。


 悠斗としてはラッセンが同行してくれるならば、悪い男が近づかないだろうという思惑もあった。



「ルナだってそうだ。このところキミは冒険者ギルドにも顔を出していないそうじゃないか」


「面目ない。色々な人に迷惑をかけちゃったみたいですね」



 十分に休暇も取ったことだし明日あたりからは、冒険者としての活動を再開していくことにしよう。



「ところでコイツは私からの土産だ。受け取ってくれ」


「ん? なんだこれ……?」 



 そこでラッセンが悠斗に手渡したのは1枚の紙切れである。

 


【エクスペイン主催! 武術トーナメント参加チケット!】



 チケットにはそんな文章が書かれていた。


 優勝賞金は驚きの100万リア。

 現代日本に換算すると1000万円近い額になる。


 賞金の規模から考えても大きな大会であることは間違いなさそうであった。



「キミのことだ。元の調子に戻るには戦いの中に身を置くのが良いと思ってね。出場予定だった知り合いが欠場したので余ったチケットを貰っておいたのだよ。

ちょうど明日から予戦が始まるみたいだし、暇があるならキミも参加してみてはどうだろうか?」


「おお……! 面白そうですね!」



 チケットに書かれている詳細によると、この大会には古今東西から様々な流派・種族の武人たちが集まり鎬を削る合うらしい。


 近衛流體術の継承者としては、興味をそそられる内容であった。



「ククク。さてはキミ。既にもう大会で優勝した気になっているな?」



 悠斗の綻んだ表情を目撃したラッセンは、ジト目になりながらツッコミを入れる。



「いえ。そういうわけではないのですが……」


「簡単に優勝できるなどとは思わない方がいい。なんと言っても今回の大会には《無敗の拳法家》――ジャック・リーが参戦するそうだからね。いくらキミが強くてもリーの強さには及ぶまい」


「誰です? それ?」


「まさかキミ……。武闘家のくせにリーの名前も知らないのか」



 悠斗の質問を受けたラッセンは驚きと呆れが入り混じったような表情を浮かべる。



「ジャック・リーは、トライワイドで4年に1度だけ開催される武術の祭典――世界武術決闘大会ワールド・コロシアムで3連覇中の武闘家だよ。

 その絶対的な力は見るものを魅了し、リーの開いた道場には毎年多くの若者が訪れている」


「へぇ。そんな人がいるんですね」



 悠斗の中では『強い武人』というのは、『可愛い女の子』の次くらいに興味を引かれるフレーズである。

 

 ラッセンにそこまで言わせる人物がいかほどのものなのか――。

 悠斗は大会に対して益々と興味を抱いていた。



「でも俺も負けないですよ。絶対にそのリーって人に勝ってラッセンさんをギャフンと言わせてみせます」


「ふんっ……。やっと何時ものキミらしくなってきたじゃないか。やはりキミは少し不遜なくらいの態度が1番似合っていると思うぞ」

 

「…………」



 その時、悠斗は今回の一件が全て自分を元気つけるためにラッセンが計画したものであることを朧気ながらも理解する。



(本当に面倒見が良いんだよな。この人……)



 ラッセンの気遣いを受けた悠斗はポカポカと温かい気持ちになっていた。



「色々と心配してくれて有難うございます。もしかしてラッセンさんって俺のこと好き……」


「は?」


「ごめんなさい。調子乗りました」



 あまりに本気で嫌そうな顔をするので思わず真面目に謝罪してしまう。



(ラッセンさんのアンチ・チョロインっぷりは相変わらずだなぁ……)



 可愛がってくれているのは間違いないはずなのだが、ラッセンとだけは男女の関係になるビジョンが湧かない。


 どうやら彼女とフラグが立つ日はまだまだ先の話らしい。


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