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魂創造



 それから。

 悠斗が史上最悪のネームドモンスター《タナトス》を討伐してから、5日ほどが過ぎた。


 先日の死闘が嘘のように悠斗の元にはまったりとした平穏が訪れていた。



「はぁぁぁっ……! 現れよ! 我がしもべよ!」



 今現在。

 悠斗は屋敷の庭でタナトスから奪った《魂創造》のスキルを検証している最中である。



 魂創造 レア度@☆☆☆☆☆☆☆☆☆

(器に魂を込めるスキル)



 悠斗が池の中に魔力を変換して作った魂を注ぐ込むと、やがてそこには1匹のモンスターが出現する。



 水の化身 脅威LV1 状態 (テイミング)



「プク! プク!」


 悠斗が作成した《水の化身》は、その名の通り水の体を持ったモンスターである。


 その体長はおよそ10センチほど。

 2足歩行で立っていて何処か妖精のような雰囲気がある。



「ふぅ~。こんなところかぁ」



 暫く作業を続けて、合計で30匹の《水の化身》を生み出すことに成功した悠斗はホッと一息を吐く。


 自身の魔力を魂に変換する効果のある《魂創造》のスキルは、慣れていないと必要以上に魔力を持っていくらしい。


 初日は5体の《水の化身》を作るだけで息切れしていたことを考えると、随分と成長したものである。



(生み出しておいてアレだけど……こいつらの使い道は本当に見当たらないんだよなぁ)



 悠斗の検証によれば《水の化身》が姿を維持していられる時間は、今のところ2時間が限界であった。


 つまりは放っておくと、姿が劣化していき2時間ほどで普通の水に戻ってしまうのである。


 修行を重ねてもう少し体を維持していられるようになれば、屋敷の警備を任せられることもあるかもしれないのだが――。


 今のところ《水の化身》の使い道は、《魂創造》の練習以外には無さそうではあった。



 ~~~~~~~~~~~~



「よし。休憩だ。木の化身! リンゴを分けてくれ」


 一息ついたところで悠斗は、地面に腰を下ろして意味深な言葉を口にする。



 木の化身 脅威LV13 状態 (テイミング)



「モソ……モソ……」


 悠斗の言葉を受けた《木の化身》は、自身の体からリンゴを落下させる。


 この《木の化身》は悠斗が昨日、リンゴの木に対して《魂創造》のスキルを使用したことで生み出されたモンスターであった。


 その外見は普通の木と比較をして目と口のようなものがプラスされた以外に、特に違いはない。



(水の化身と比べて木の化身は……全く劣化しないみたいだな)



 ここ数日の間に《魂創造》のスキルの検証して分かったことがある。


 このスキルは物体に魂を込めて生物を作りだすことを可能にする効果があるが、適当な器を選んでも戦力になってはくれない。


 何故ならば――。

 長く魂を定着させるのには、それに適した器を選択しなければならないからである。


 今にして思えばタナトスが人間の死体を収集していたのは、人の体というものが魂を留めておくのに適した器だったからなのだろう。


 何の変哲もない池の水からでは、スライムより弱くて直ぐに死んでしまう《水の化身》しか生み出すことが出来ないというわけである。



「ご主人さま! リリナさんが夕飯の準備が出来たと言っていましたよ~!」



 突如として馴染みのある声が聞こえてくる。



「これはまずいっ」



 悠斗は焦っていた。

 

 何故ならば――。

 自由に生物を生み出すことが出来る《魂創造》のスキルは、人間の禁忌に触れているのではないかと考えていたのである。


 そういう事情もあって悠斗は、これまで《魂創造》のスキルを検証している場面を絶対に他人に見られないようにしていたのだった。



「なっ……」



 スピカは絶句した。


 悠斗の周囲には既に30匹の《水の化身》がウロウロと彷徨い歩いている。

 屋敷の中に見慣れないモンスターが大量に発生していたのだから、当然のリアクションであった。



「ご主人さま。これは一体……?」


「ククク。どうやら貴様は絶対に触れてはならない……禁忌に触れてしまったようだな……!」



 見られてしまったからには仕方があるまい。


 そういうわけで悠斗は開き直ってスピカをいじって遊ぶことにした。



「身の程を弁えない娘が……。貴様は絶対に開けてはならないパンドラの箱を開けてしまったのだ!」


「えーっと。ご主人さま……何を言っているのでしょうか?」


「かかれ! 水の化身よ! そいつをひっ捕らえろ!」


「「「プク! プク!」」」



 悠斗から命令を受けた《水の化身》はスピカに向かって一斉に飛びかかる。



「…………」



 悠斗は予測する。

 こういうシチュエーションではスピカなら「びえっ。びええええええええっ!」という奇妙な悲鳴を上げて逃げ回ってくれるに違いない――。


 悠斗は事あるごとにスピカをイジってリアクションを見るのを趣味としていた。



「たぁ! えいやぁぁぁ!」



 だがしかし。

 今回に限っては、悠斗の期待は大きく裏切られることになる。


 先程までシルフィアと剣の稽古を行っていたのだろう。

 スピカは手にしたロングソードを鞘から抜くと、器用に操り《水の化身》は蹴散らせてみせた。



「なに……!? スピカが強いだと……!?」



 元々、運動神経が良かったのだろう。

 スピカの剣技は初心者とは思えないほど様になっており、合計で30匹もいた《水の化身》は次々に姿を消していくことになった。



「や、やりました! 私、生まれてから初めてモンスターを倒すことが出来たのかもしれません!」



 人生初の快挙を成し遂げたスピカは、眩いばかりの笑顔を浮かべる。


 自分で生み出したモンスターを倒しても《能力略奪》によりスキルを取得することは出来ないことは既に検証済みである。



(水の化身は……スピカの剣の稽古の相手には良いのかもな)



 想定外のトラブルを経験した悠斗は、《水の化身》に対して新たな有効活用法を見出すのであった。



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