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一人目の仲間

 


 暴漢たちとのやり取りによって衆目を集めてしまったため、悠斗たちは人気のない裏路地に足を運ぶことにした。



「あの……有難うございます。あ。申し遅れました。私の名前はスピカ。スピカ・ブルーネルと申します。本当にもう……この度はなんとお礼を申し上げて良いのやら……」



 悠斗にピンチを助けられたスピカはその場で深々と一礼をする。


「いや。別に気にする必要はないよ。元はと言えば俺に原因があったみたいだし」


「そんなことはありません! 元を正せば私が……私の父の残した借金を返せなかったのが悪いのです。ユウトさんに助けて頂けなければ、どうなっていたことか……。ユウトさんは私の大切な恩人です! あの……貸して頂いたお金はこれから一生掛けてでも返しますから! もしよければそれとは別に……私に何か恩返しをさせては頂けませんか?」


「……恩返し?」


 悠斗が尋ねるとスピカは決意の光が宿った眼差しで。



「ええ。具体的には……私をユウトさんの奴隷にして下さい!」



「……はい?」


 スピカの提案があまりも突飛なものであったので悠斗は、思わずポカンと口を開けてしまう。


「も、申し訳ございません! 私のような若輩者が、ふてぶてしくもユウトさんの奴隷になりたいだなんて……頭が高いにも程がありましたよね! ごめんなさい! 調子に乗りました! 今の発言は忘れて下さい!」


(……なんか色々と台詞が支離滅裂になっているな)


 悠斗は心の中でツッコミを入れつつも。


「いや。別にそういう意味で言っている訳ではないのだが……理由を聞いても良いか?」


 悠斗が尋ねるとスピカは真剣な表情で自らの想いを吐露する。


「私は物心が付いたときから父が残した借金を返すためだけに生きてきました。

 と言っても私の稼ぎでは……毎月の利息を返すだけでも精一杯で借金の額はちっとも減らすことが出来なかったのですが……。

 借金の返済という大きな目的に一段落が付いた今……改めて自分のやりたいことを考えた結果……ユウトさんに付いて行きたいと思ったのです」


「……どうして俺なんかに?」


「私はこれまで職業柄……沢山の冒険者の方を見てきましたので人を見る目は確かだと思うのです。ユウトさんは不思議なオーラを持った方です。

 きっとこの先……誰も成し得なかった偉業を達成するに違いありません! だから私はユウトさんについて行って貴方の人生を誰よりも傍で見ていたいと思ったのです」


 この時、悠斗は知らなかったのだが――。

 トライワイドにおいて高位の冒険者は、複数の奴隷を連れ歩くのが一般的であった。

 

 絶対に自分を裏切ることがないという保証の取れている奴隷という存在は、冒険者にとって様々な面で重宝する存在であったのだ。


「……買い被り過ぎだよ。俺はキミが思っているような立派な人間じゃない」


「いいえ。ユウトさんは凄いお方です。現に私が一生かかっても完済できそうにない途方もない額の借金を一瞬で返してくれました! 

 奴隷として御傍に置いて頂けるのであれば、私は貴方のために何だって致します! だからお願いします! 私を奴隷としてコキ使ってやって下さい!」


「…………」

 

(……打算で考えるなら断る理由はないんだよな)


 効率的に討伐クエストを行うには、この先どうしても信頼できる仲間が必要になってくるのは目に見えている。

 たとえ冒険に連れて行くことが出来なくてもこの世界のことを何も知らない悠斗にとっては、現地の人間と接点を持っておくことに大きな意味があった。


 そして何より――。

 身だしなみを整えたスピカは、悠斗の見込み通りに格別な美少女であった。

 そんな子が「奴隷にして下さい!」とお願いしているのだから、男であれば断る理由はないのである。


「よし。分かった。ただし俺に付いてくるからには、色々と危険が付き纏うと思うからそこは覚悟しておいてくれよ。俺が肩代わりした借金分の働きは期待するからな」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 スピカはパァッと花が咲いたような笑みを浮かべる。

 喜びの感情とリンクしているようにピコピコと動く犬耳が可愛らしかった。










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