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お金で揉め事を解決しよう

 


 クエストを完了させた悠斗は、本日の寝床を探すべくエクスペインの街をぶらつくことにした。


「あの……離して下さい!」


 悠斗が街を彷徨っていると、少女の声が聞こえてきた。

 声のした方に目をやると、見目麗しい1人の美少女が2人の暴漢に絡まれている最中であった。



 スピカ・ブルーネル

 種族:ライカン

 職業:女中

 固有能力:なし



「あの子は確か……宿屋にいた子か……」


 魔眼のスキルがなければ絶対に気付くことが出来なかっただろう。

 悠斗から銀貨を貰ったスピカは、律儀に約束を守り、小綺麗な服を購入して、その身だしなみを整えていた。


 理髪店と風呂屋にも足を運んだのだろう。

 毛先が痛みバサついていた髪は見違えるように綺麗になり、元々美しかった彼女の容姿を際立たせていた。


「テメェ。コラ! 大人しくしやがれ!」

「嫌です! 誰か……誰か助けて下さい!」


 1人の少女が助けを求めているにも関わらず街行く人々は、見て見ない振りの様子である。

 その事実はこの世界の治安レベルを如実に表していた。


「えーっと。何かあったのですか?」


 顔見知りの女の子が助けを求めているにも関わらず、素通りするのも後味が悪い。

 だから悠斗は男たちに声をかけることにした。


「はぁ!? なんだよ……テメェは……」

「ゆ、ユウトさん!?」


 どうして自分の名前を知っているのだろう?

 と、疑問に思う悠斗であったが、よくよく考えてみれば宿に泊まる前に名前を書いていたことを思い出す。

 

「なんだよ。知り合いか? 悪いけど、これは俺たちの問題なんでね。部外者は引っ込んでいろよ」

「まあまあ。そう言わずに。何があったのかくらいは、教えてくれてもいいじゃないですか」


 悠斗の無言の威圧感に気圧された暴漢は、図らずもその事情を吐露することになる。


「べ、別に俺たちは何もやましいことはしてないぜ? これはただ……貸した金を回収しにきただけだ。ちなみにこれがその借用書。その女の死んだ父親は、俺たちから5万リアを借りていたんでね」


「なるほど。しかし、5万リアなんて大金をその子が持っているはずがないと貴方たちも分かっているのではないですか?」


「ああ。だからその女を奴隷商に売り飛ばして回収することにしたのですわ。獣臭いライカンなんて金にはならねえと思っていたが、身だしなみさえ整えればなかなかの値打ちもんだということに気付きましてね」


「…………」


(ああ。そうか。この子は俺が銀貨を渡したばっかりに……)


 そこで悠斗は自分が原因でスピカに災難が降りかかってしまったことに気付く。


「知り合いのアンタには悪いけど、筋はこっちにあるからな。文句があるのならアンタが5万リアを払ってくれるのかい?」


「分かりました。払いましょう」


 悠斗は即決した。

 元を正せば、この騒動の原因は自分にある。

 5万リアを失うことは悠斗にとって相当な痛手であるが、それで1人の女の子を救えるのなら安いものだろう。


『可愛い女の子には優しく、そうでない女子はまあそれなりに扱うこと』


 というのが悠斗が幼少期の頃より、近衛流の師範である好色家の祖父から教えられてきた言葉であった。


 誰もが振り返るような美少女であるスピカは、悠斗にとって優しく扱うに足り得る逸材であったのだった。

 悠斗は鞄の中から金貨を5枚取り出すと、男の掌にそれを置く。



「「……はい?」」



 男たちは掌に置かれた金貨を見て茫然と立ち尽くしていた。

 無理もない。

 格差社会の進んだこの世界の低所得者層たちにとって5万リアという資金は、途方もない大金であったのである。


「これで文句はないだろ? その子のことを解放してやってくれないかな」


「……あ、ああ」


「分かったらその借用書はこっちに渡して貰えないか?」


「ま、毎度あり!」


 男たちはそこで1つの誤解をしていた。

 5万リアという大金を即座に払った経緯から、悠斗のことをさぞかし著名な冒険者であると考えたのである。


 その絶対数こそ多くはないものの、高名な冒険者は時として、王族とのパイプを持つとさえ言われているのである。


 ここで悠斗に逆らうのは得策ではない。

 そう判断した二人の男たちは悠斗に借用書を手渡した後、蜘蛛の子を散らすように去って行く。


(……さて。どうしたものかな)


 スピカを助けたことに対する後悔はないが、今回の一件で資産の大半を使い果たしてしまったこともまた事実である。

 今回の一件で悠斗の所持金は14950リアにまで減ることになった。

 すっかり寂しくなってしまった懐のことを考えると、悠斗は小さく溜息を吐くのであった。



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