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伝説の体現者



 神聖都市マクベール。

 それはトライワイドで最多の人口を誇る大国である。


 他を寄せ付けない圧倒的な軍事力と経済量を併せ持ったこの国は、500年前から今日に至るまで覇権国家の地位を築いている。


 そんな神聖都市の中枢部に教会の中に《レジェンドブラッド》の拠点はあった。



「……それで貴方は暴食の魔王の討伐をダンジョンの魔物に任せて、みすみすとこちらに逃げ帰ってきたというわけですか」 


「あ~! 悪かったよ! でもさ、仕方ないだろう? まさかそのコノエ・ユウトっていうやつが単独でガーディアンを倒しちまうほどの強者だって思わなかったんだからさ」



 今現在。

 エクスペインの街からマクベールに帰ったミカエルは、同僚の少女にコッテリと説教を受けていた。


 小柄な体躯の修道服を着た彼女の名はソフィア・ブランドール。

 500年前に魔王を討伐したパーティーの人物の1人である大賢者の血を引く少女である。



「……せっかくの神託スコアを無駄にして。そんなんだから貴方はレジェンドブラッド最弱と揶揄されるんですよ。このポンコツラーメン」


「ポンコツラーメン!?」



 外見だけで判断するのでれば純粋無垢なシスターにしか見えないソフィアであったが、仲間内からはその毒舌を恐れられていた。


「それでその貴方の報告に出てきたコノエ・ユウトという人物ですが……本当にそんな人物は実在するんですか?」


「……ソフィ。もしかしたら俺のことを疑っているんじゃないだろうな?」


「いえ。たしかにミカエルがどうしようもないポンコツラーメンであることは疑いようのない事実ですが、私たちに虚偽の報告をしてもメリットはありませんからね。

 ただ、私の神託スコアではミカエルの話すような第三者の存在は確認できませんでした。そこが気がかりです」


「…………」


 ソフィア・ブランドールは世にも珍しい未来を予知する能力を有していた。


 今回、暴食の魔王がローナス平原に出現したダンジョンに現れることは、ソフィアのスキルによって得た情報であり――。


七つの大罪が秘密裏に推し進めている邪神復活の計画を知り得たのも彼女の功績によるところが大きかった。



「ボス。貴方の意見を聞きたいです」



 ソフィアは教会の椅子に腰かける黒髪黒目の少年に声をかける。


 驚くべきことにその少年は、『英雄の子孫』で構成されたレジェンドブラッドのメンバーにおいて只一人、英雄本人であった。



「……計画に変更はない。次の預言スコアが、来るまで俺たちは此処で待機していればいい」



「分かりました。それが貴方の考えならば私はそれに従うまでです」


 アーク・シュヴァルツ。

 500年前に伝説的な活躍を以て魔王軍を打ち破った彼が未だ存命であることは、神聖都市マクベールの中でも限られた人物しか知り得ないトップシークレットである。


 悠斗と同じように過去に日本から召喚されたアークの固有能力は《転生》。


 肉体が死んでも魂を別の器に映すことで蘇ることのできるスキルを持った彼は、実に1000年以上も昔からトライワイドで生活を送っていた。



(魔族に加担し、ソフィアの神託でも感知できない少年……コノエ・ユウトか)



 自身の固有能力により1000年以上の月日を生き長らえてきたアークは、この世界に飽いていた。


地位も、名誉も、女も、彼にとっては遊び飽きた玩具のような存在である。


 彼が仲間と共に邪神復活の計画を阻止を目論んだのも、言うなれば単なる暇つぶしに過ぎない。


 死にたくても、死ぬことができない――。

 不死身のスキルを持ってトライワイドに転生されたアークは常に新しい刺激に飢えていた。



(……面白い。暇つぶしのための玩具は、多ければ多い方がいい)



 今回の一件を経て、悠斗は魔王と勇者たちの戦いのド真ん中に巻き込まれることになったのだが――。

 当の本人は未だその重要性を知らないでいた。






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https://manga.line.me/book/viewer?id=B00165415107#/page=1

― 新着の感想 ―
[気になる点] 多分スキルを封印すれば死ねると思うんだけど、わざわざ死ぬつもりもないって事なんかね
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