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VS レジェンドブラッド2



「人間……だと……?」


 悠斗の姿を目の当たりしたミカエルは驚きで目を見開く。


 勇者の子孫として生まれ、幼少の頃より魔族を倒すための訓練を積んできたミカエルは魔力の性質の違いから人間と魔族を見分ける技術を習得していた。


 しかし、相手が人間であるということは同時に自分の魔法は同じ人間の魔法に競り負けたということを意味していた。

 

 それは世界最強の魔術師を自負するミカエルのプライドを深く傷つけるものであった。



「ユート……さま……?」



 まさか1日に2度も人間に助けられる日がくるとは思わず、ベルゼバブは呆然としていた。


 しかも、今回の一件は以前に冒険者ギルドでシルバーランクの冒険者、ロビン・クルーガーに襲われたときとは訳が違う。


 正真正銘、命を助けられることになったのだ。

 以前から悠斗に対して並々ならない好意を抱いていたベルゼバブであったが、今回の一件を経て彼女の眼差しはより熱っぽさを増していた。


「驚いたよ。さっきの魔法はキミが放ったものだったのか」


「ああ? まあ、そうだけど」


 床をぶち抜いて下の階に移動するという裏技を発見した悠斗は、スピカ・シルフィア・ラッセンの3人と共にダンジョン攻略を進めていた。


 けれども。

 地下6Fにまで進んだところで悠斗たちは、ミカエルの放った水魔法による轟音を耳にすることになる。


 不審に思った悠斗が、スピカたちを安全な場所に待機させて、単身で音のする部屋の様子を見に行った結果――。

 今に至るというわけである。


「1つ、聞いてもいいかな。一体どんな手品を使えばさっきのようなパワーで魔法を放つことが出来るんだい?」 


「別にそんな大したことはしてねーよ。俺はただ思い切り投げつけただけだ」


「投げつける……?」


「……こういうのは実際に見せた方が早いんだろうな」


 悠斗はそう前置きすると、水魔法を使用して掌に野球ボールサイズの氷塊を生成。

 

 スリークォーターのフォームからミカエルの方に向けて氷塊を投げつけた。


 ビュオンッ、と。

 凄まじい風切音を立てながらも悠斗の投げた氷塊は、ミカエルのコメカミを掠めた。



「その子から離れてくれないか? 次はお前の頭を狙うぜ」



 悠斗の滅茶苦茶な戦い振りを目の当たりにしたミカエルは、自らの内から湧き上がる笑いを抑えることが出来ないでいた。


 悠斗の使用した水魔法の威力それ自体は、驚くべきものではなかった。

 真に驚くべきは、驚異的なスピードで氷塊を投げることを可能にする腕力と正確無比なコントロールである。


 ミカエルは未だかつて魔法の威力を肉体で補う、というスタイルを取る人間を知らなかった。



「フハハハ。面白い。実に面白い! キミのような人間がいたとは、この世界も捨てたものじゃないな」



「……はぁ。それはどうも」


「これは失礼。俺の名前はミカエル。ミカエル・アーカルドだ。よければキミの名前を教えてくれないか?」


「近衛悠斗だ」


「ふむ。コノエ・ユートくんか」


 ミカエルは悠斗の言葉の響きを確認するかのように繰り返した後。


「ところでユートくん。キミは1つ重大な思い違いをしているようだから言っておく。可愛い女の子を守りたいという気持ちは、俺としても共感できるものがあるのだが、実を言うとそこにいる子は魔族なんだ」


「知っているよ」


「まあ、キミが驚くのも無理はない。魔族たちは500年前に人類に敗れた後は、各地を転々としながら人間たちの目に留まらないように生活をしていたからな」


 そこまで言ったところでミカエルは会話が微妙に噛み合っていないことに気付く。



「……って、なにィィィ!? よもやキミ……その子が魔族だと知っていて、俺の邪魔をしたというのか!?」



「……ああ。そうだけど、何か悪かったのか?」


「…………」


 悠斗の言葉はミカエルを絶句させるのに十分なものであった。


 トライワイドの人間たちは長きに渡り魔族に支配されていた過去がある故に、魔族に対して強い畏怖と怨嗟の感情を抱いている。


 魔族に虐げられてきた歴史は、親から子に、子から孫にと伝えられていき――。

 500年の時が流れても色褪せることなく語り継がれている。


 人間が魔族のことを庇うことなど、普通に考えると有り得ないことであった。



「……悪いことは言わん。考え直せ。キミにだから言うが、俺は500年前に魔王を倒した勇者の子孫でな。

 近い未来に起こるであろう『邪神復活』の預言を受けて、魔族殲滅の旅に出ている最中なのだ。魔族を守るということは、俺たち人類を……レジェンドブラッドのメンバーを敵に回すということなのだぞ?」


 これが最後の警告とばかりに詰め寄るミカエルであったが、悠斗の考えは変わらない。



「人間とか、魔族とか、そんなことは俺にとってはどうだっていいんだよ。いつだって俺は可愛い女の子の味方だ!」



「……クレイジー。どうかしているぜ」


 レジェンドブラッド随一の色男を自称するミカエルは、女性に対してはとことん甘いフェミニストとして知られていたが――。


 それでも魔族の肩を持とうなどという狂った発想には至らなかった。



「仕方ない。生憎と俺はバカにつける薬を持ち合わせているわけではないんでな……」



 悠斗の実力を買っていたミカエルは、話がまとまれば悠斗のことを自分の部下として引き込もうと考えていた。


 しかし、どんな実力を有していようとも魔族の肩を持つような人間を仲間にすることはできない。


 ミカエルは手にした杖を掲げると、ウォーターストームの魔法を発動させる。


 世界最強の魔術師と謳われるミカエルの魔法は、精度・威力共に規格外のものであった。


 ミカエルの周囲には1000本を超える氷の刃が出現し、部屋の温度を急激に下げて行く。



「そんじゃま。お前には世界の平和のため消えてもらうぜ!」



 ミカエルが杖を振りかざした次の瞬間。

 ウォーターストームで作られた数千個の氷の礫が前後左右、あらゆる角度から飛来する。


 けれども。

 傍目に見ると窮地に追い詰められている状況にもかかわらず――。


 悠斗の表情には、平静時と変わらない余裕があった。


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