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VS サラマンダー



「スピカ。シルフィア。下がっていろ!」


 サラマンダーに睨まれ今にも捕食されそうなラッセンの姿を目の当たりにした悠斗は、即座に戦闘態勢に入る。


 そして風魔法による高速移動技術、《飆脚》を使用すると一瞬でサラマンダーとの距離を詰める。


 しかし、巨大な体躯の割にサラマンダーのスピードは早かった。


 サラマンダーは首を捻って振り返ると、悠斗に向けて灼熱のブレスを吹きかける。



(……ウォーターシールド!)



 避けようと思えば避けられるタイミングではあったが、後ろにいるスピカとシルフィアがダメージを受けるのだけは避けたい。


 そう判断した悠斗は、取得したばかりの水属性の防御魔法を駆使して炎のブレスを中和する。


 瞬間、部屋の中に夥しい量の水蒸気が立ち込める。



「……キミは!?」



 ラッセンは2属性の魔法を巧みに操る悠斗の姿に驚愕する。


 何故ならば――。

 2属性の魔法を同時に扱える魔術師は《デュオ》と呼ばれており、1万人に1人の割合でしか生まれてくることがないと言われているからである。


 けれども。

 先輩冒険者としてのプライドが直ちに彼女の中の冷静さを取り戻させる。



「ユートくん! サラマンダーの弱点は尻尾だ! やつの痛覚は尻尾に集中している!」



「……尻尾ですか。了解しました」


 トカゲのような外見をしているにもかかわらず、尻尾が弱点とは意外であった。

 ラッセンに言われなければ、気付くことはなかっただろう。


 悠斗はサラマンダーの背後に回るために強く地面を蹴る。


 だがしかし。

 外見に似つかわしくないスピードを誇るサラマンダーは、自らの弱点を理解しているのか、常に悠斗と向かい合わせになるように移動する。



「面倒臭えっ!」



 痺れを切らした悠斗は、至近距離から《飆脚》を使用してサラマンダーの正面に突っ込んだ。



「な、何をバカな真似を!?」



 自殺行為とも見える悠斗の行動に糾弾するラッセンであったが、直ぐに自らの心配は杞憂であったことに気付く。



 破拳。



 人体の《内》と《外》を同時に破壊することをコンセプトに作ったこの技を悠斗は、そう呼ぶことにしていた。

 

 空手の《正拳突き》と中国武術の《浸透勁》の性質を併せ持ったこの技は、サラマンダーの全身の空前絶後の衝撃を与えて、その巨体を優に10メートルほど吹き飛ばす。



「怪我はなかったですか? ラッセンさん」



「…………」


 ラッセン・シガーレットはエクスペインの中では、トップクラスの実力を有した冒険者であった。

 

 ラッセンの本職は情報屋であり、彼女自身も『真の実力者は己の能力を隠すもの』という信条を有していることから、肩書きこそブロンズランクに甘んじているが――。


 本来の実力はゴールドランクに比肩するものがある。


 その証拠にラッセンの実力は、エクスペインの王族たちからも絶大な評価を受けており、彼女の営んでいる情報屋は政界にまで顔が利くほどであった。


 今回サラマンダーを相手に遅れを取ったのもダンジョンに入ってからの連戦による疲弊が響いたものである。


 彼女が本来の実力を出せば、サラマンダー相手に不覚を取ることもなかっただろう。


 けれども。

 そんな百戦錬磨のラッセンの眼から見ても尚――。


 悠斗の実力は得体の知れないものであった。


 全身が強靭な鱗に覆われたサラマンダーを素手で倒す冒険者など常識の埒外の存在である。


 が、しかし。

 自分より年下で、冒険者としての経験の浅い新人の実力を素直に認められるほどラッセンの精神は成熟してはいなかった。


「……ふふ。ユートくん。驚いたよ。以前から度々、噂になってはいたが、キミは本当に強いんだね」


「いえいえ。俺なんてまだまだですよ」


「けれども、キミが勘違いするといけないから1つだけ忠告しておこう。

 実を言うと、アタシの実力はゴールドランクの冒険者にも引けを取らないものでね。キミが助けに入らないでもサラマンダーの1匹くらい1人で倒すことが出来たのだよ。だから、アタシのことを助けたなどと思い上がらないで頂きたい」


「……あの。もしかしてラッセンさん。怒っています?」


「怒ってなどいない!」


 明らかに怒っている口調で、怒っていないと否定された。


 女冒険者として自立して生きていることに対して高いプライドを持っているラッセンにとって、異性から命を救われたという事実は是が非でも認めがたいものであった。



(……何か俺、悪いことをしたのだろうか?)



 相変わらず女心はよく分からない、と悠斗は1人嘆くのであった。






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