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ものぐさ女王 春子
作:ごはんライス


 春子は腹が立って腹が立ってたまらない。
「ちきしょう田中のヤツ、あんだけムチ打ってもまだ懲りんのか。くそ」
 春子は田舎のとあるSMクラブで女王様をやっている。田中というのは春子を毎回指名する常連客だ。
「店長。何とかならないんですか!」
「春ちゃん頼むよ。うち店が小さいだろ? お客さんがこれ以上いなくなるとやってけないんだよ」
「ちきしょー!」
 春子はケータイを床に叩きつけた。
 なぜ春子はこんなにも腹を立てているのか?
 実は春子はこれで三ヶ月休みが一日もないのである。流行ってない店なのになぜと思われる方もおられよう。
 しかし、ここは田舎である。田舎でSMの女王様をやろうなんちゅう女性はあまりおらん。だから春子の勤務シフトは常にキュウキュウなのである。
 しかしだからこそ休日はきちんと取っていた。発散しなくちゃ。春子の週に一度の楽しみはビデオボックスに通うことである。女性が行くのは珍しい? 確かに。でも田舎には他に娯楽があまりないし、なにより春子はこのボックスで毎週毎週M女のDVDを観てオナオナしちゃうのが楽しみで楽しみでならない。なぜ女王様なのにM女が縛られ蝋燭ろうそくで責められてる姿を観て興奮するのだ、と言えば、それはまぁ女王様がS女のDVD観ても現実逃避できんだろ。仕事熱心になっちゃうじゃん!
 しかしそんなささやかな幸せをぶち壊すバカモノがいた。そう、田中である。
 何でも田中は今まではちゃんと春子の休日以外の日に来ていたのだが、仕事の都合で春子の休日しか来られなくなり、最初は春子は断っていたのだが、田中が200分の特別コースを頼み始めたので店長がだんだん欲が出てきて「春ちゃん。何とかしてよ。頼むよ。ボーナスはずむからさ」と泣きついてきて、春子は仕方なく引き受けた。

ここらへんでそろそろボクが その花を咲かせましょう
愛のために あなたのために 引き受けましょう

 うろ覚えだが、春子の好きな奥田民生の曲にそんなフレーズがあった。春子は生活面ではものぐさではあるけど仕事は熱心なのだ。
 といいつつ休日に200分コースをがんばっていたのだが、三ヶ月もするとだんだん疲れてきた。なにしろ、田中は一年くらい前に課長に就任して以来ストレスが増え、以前よりずっとMになっていた。めちゃくちゃにムチを強く打たねば興奮しない。腕がすごく疲れる。
 もちろん、課長になってから田中は給料も上がったので前よりチップをはずんでくれた。
 だから、春子はがんばった。
 しかし、休日出勤になってから三ヶ月後、何ともはやついに田中は部長になってしまった。田中の会社は小さいのでそういうことはよくあるそうだ。ますますストレスが増え、ムチャな要求をしてくるようになった。
 おまけに田中の会社はあまり大きくないので役職が上がっても大して給料が上がらない。よって春子へのチップもはずまない。それなのに、ハイヒールで踏みつけても「もっと強く! もっと強く!」
 ムチで叩いても「もっと激しく! もっと激しく!」エロブタだ何だ罵っても「もっと汚く! もっと汚く!」
 疲れることこのうえない。春子は悲鳴を上げそうだった。
「店長、もうあたし辞めたいです」
「えっ。何」
 店長はビックリした。というよりついに来たかという表情をした。
「ねえ。春ちゃん頼むよ。春ちゃんがいなくなったらこの店」
「でもあたしもう限界なんです! せめて休日の出勤をなしにしてください!」
 うーん、と店長は腕を組んだ。
「これ言っていいのかどうかわかんないんだけど・・・・」
「はい?」
 なんだろう、と春子は思った。
「田中さんね、実は」
 え。なに?
「いや、ま、でももう言っておいた方がいいな。こういうことは早く言った方がいい」
 何だろう。すごく気になる。
「昨日ね、過労で倒れて入院してしまったんだよ」
 えーーーーーーーーーーーーーーー!!!
「春ちゃんには悪いことしたってね。謝ってたよ」
 春子は沈黙してしまった。
 そして、田中さんを癒せてあげられなかったあたしっていったい、と唇をかんだ。

 次の週の休日、春子は初めてボックスでS女のDVDを借りて、オナオナもせず、ずっと画面の前でメモを取り研究をしていた。
「田中さんが退院したら今度こそ激しいムチを!」(了)














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