「俺、桜野の事好きみたい。」
突然の告白だった。
今、私の目の前にいるのは同じクラスの桐生健人。
正直、同じクラスとは言え話した事はあまりない。まして、今ここで私が彼に告白を受けるなんて夢にも思っていなかった。
「えっと。私と付き合いたいって事ですか?」
あまりの突然の告白に、私は呆然としてしまい、なんとも自意識過剰な返答をしてしまった。
「桜野さえ良ければ。」
目の前で顔を真っ赤にしてうつ向いてる彼の姿を見て、私もつられて下を向いた。
正直、こんな事があっていいのか不安になった。
人生初の告白をしてくれた彼は、1年前から私が密かに片想いをしていた相手で、勇気のない私は今年のクリスマスには気持ちを伝えようと決心した矢先の出来事だったからだ。
「あっ。うん。よろしく。」
正直、天にも昇るような気持ちだったのに恥ずかしさから私はこんな粗雑な返事をしてしまった。
こうして、クリスマスまで残り一ヶ月を切った今日、私の勇気と決意はなんとも良い形で砕けていった。
それから1ヶ月後、そう書かれた日記を彼が私の隣で読みながら笑っていた。
「なんだ。お前も俺の事好きだったのか。」
今日は12月24日。
クリスマスイブ。
「だったらあの時に焦って告白しなくても、一ヶ月待てばお前からの告白が聞けたのか。」
私の顔をそっと覗き込みながら彼がつぶやいた。
「まっ。でも明日はクリスマスだし、クリスマスプレゼントにお前の告白期待してるから。」
そう言えば、付き合って一ヶ月。
私から彼にそういった言葉をまともにかけた事はなかった。
すごく好きなのに、小心者の私はいつも大切な時に気持ちを伝えられずにいた。
彼に告白されるまではクリスマスには気持ちを伝える決意をしていたのに、彼に先を越されてしまった私はなんだかタイミングを逃してしまっていて、いつも曖昧な表現でしか彼と接してこれなかった。
「……。」
「なにお前。まさか照れてるの?」
「……。」
「ごめん。怒るなって。冗談だから。」
「……。」
「もう冗談言わないから、いい加減笑ってくれよ。」
そう言って彼が私の手を握り締めてくれた。
冷えきった私の手を筒み込むように、何度も何度も握り締めてくれた。
そのままさばらく静かな時間だけが流れ、彼はじっと私の顔を見つめ少しだけ笑った後に、日記を大事そうに抱えて涙を流した。
ごめんね。
告白なんて関係なく本当は明日気持ち伝えたかったんだけど、素直になれないまま時間だけ過ぎちゃったね。
だって、あの時はこんなに早く別れがくるとは思わなかったから。私なんか好きになる勇気のある人健人だけだと思ったから。
この先ずっと一緒にいられて、いつかきって大切な時に伝えようと思ってたんだ。
私、馬鹿だね。
今までありがとう。
健人に出会えて本当に幸せだったから。
だから、もう泣かないで。
そう言って私は彼の元を離れた。
「ありがとう。」
涙でぐしゃぐしゃの顔を笑顔に変えて彼は私を見送ってくれた。
ピー…。
静かな部屋の中に、悲しい程この音だけが響きわたった。
窓の外には静かに雪が降り始めていた。
その光景は今まで見たどんな景色より綺麗に感じた。
雪がキラキラと反射して、それはまるで彼女の笑顔を見ているようだった。
この雪とこの日記帳は彼女がくれた最初で最後のプレゼントだったと思う。
ありがとう。
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