引退
「え!?そこ吹くの?」
いつもの音楽室。全体中に「パイレーツ」のバスクラの部分を吹いてる私に君は話しかけてきてたね。
吹きながら私は首を振った。そんな私を見て、君はニコニコと笑ってた。その顔を見て、思わず私は笑ってしまった。
「何!?違う!会長様がバスクラを吹かないから!」
全体中なのに、演奏中なのに、君と喋ってしまった…実技試験だったら即、落ちてるね。
「ああホントだ。え?吹くの?」
「いや…違っ!あ〜…」
また演奏開始。タイミングを逃しちゃった。これじゃあ一般入試でも目を付けられて絶対受かんない。
もう笑うしかない。と言うか笑っちゃって吹けなかった。これは完全に君のせいだよ。
「もぉ!…」
気を取り直して演奏したけど
「ちょっと、そこもうちょっとペット合わせて欲しいんだよな〜」
先生の一言で演奏中断。トランペットのパート練へ…結局、いつもの雑談開始。
「青木さん、Tubaそこ吹くの?」
「いや、お前は吹かなくていいの。音汚いから。」
会長様(元)からのお言葉。その時はクラリネットを持ってた。
「綾、よろしくね〜♪」
「うん!会長の音を汚さないように頑張る!」
いつもながら、会長綺麗だなぁ…と思いつつ話してた。君が会長のコトが好きなら、絶対に勝ち目ない…。
ああ…でも君には他に好きな人がいるんだよね?
次の日、つまり昨日のこと。
「ごめんなさい。最後の練習なのに遅刻しました。」
って言って入ってきたのは君だった。
「あれ?覚えててくれたんだ…」
私はそんな事言ってたけど、本当は、すごく嬉しかった。君が私の引退する日を覚えててくれたことが。
そんなことが最後の練習の始まりだったね。
その日は久しぶりにパート練習があって、私は実は少し楽しみにしてたんだ。でも、最後のパート練の夢は叶わなかったな…
「先輩、ここのピストンがはずれないんですけど…」
そう言って来たのはユーフォの後輩。パー練の始まりの方での一言だった。
すぐに治る(直る)と思ってた私は一緒に治してたんだけど、…なかなか治んなくって、気付いたらパー練終わってたんだ。今思うと、やっぱり悔しいな…
全体の合間でいつもの雑談。あれも最後の雑談になっちゃった…
今日は11月5日。
今、これを書いてる私は、実はもう君に告白し終わってるの。
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