パラノイヤ
テレビから放映されているニュースを見ていると、外の拡声器からアナウンスが流れた。
< 暴走車が一台 封鎖を破って高野山内に入りました 各寺院は気をつけてください >
姉さんは、アナウンスされている方向を向いた。
「えっ!?」
福之助が姉さんを見た。
「今のアナウンス、リピートしましょうか?」
「いいよ。ちゃんと聞いてたから。」
姉さんは、つぶらな瞳でアニーを見た。
「何が起きているのかしら?」
アニーも好奇心の強い少女のような、つぶらな瞳で姉さんを見ていた。
「同時多発だとすると、ただの暴動じゃないみたいですねえ…」
「蜂起!?」
「まさか。」
「そうですねえ。新赤軍は逃走中で動いてないみたいですしねえ。」
「今のハイテク時代、単なる貧乏救済的な共産主義革命では、人々は動きませんよ。」
「じゃあ、何なのかしら?」
「問題は、物質じゃなくって、精神なんですよ。」
「精神?」
「精神が病んでいるんですよ。」
「今流行の僻み病ですか?」
「そうです。つまり、心の病気です。」
「僻みは、物からではなくって、人間の心と人間の心から生じるのです。」
「人間の心と人間の心から…」
「心と心が、うまく噛み合ってないのですよ。つまり、他の心と協調できない。だから最近の人は、すぐに切れる。」
「そうですねえ…」
「わたしたちみたいに、協調できないんですよ。」
「えっ、わたし協調してます?」
「してます。とても上手に協調してます。」
「上手に、ですか?」
「そうです。つまりは、自分の心を自分の理性がコントロールしているんです。それが上手なんです。」
「あ〜、そういうこと。」
「僻み病になると、それが、そういう人間の機能としてとして当然のことができなくなるんですよ。」
「怖い病気ですねえ。」
「他者が敵になってしまう。だから、他者に対して攻撃的になって、心を協調できなくなるんです。最終的に心を閉ざしてしまう。」
「あ〜、そういうことなんですか。」
「そのまま放っておくと、妄想型性格障害者・パラノイヤになります。」
「妄想型性格障害者…、パラノイヤ。それ、どっかで聞いたことありますよ。心理学の授業だったかなあ〜?」
「ややこしい話をして、ごめんなさい。専門が、心理学だったもので。」
「道理で詳しいんですね。アニーさんの説明、よく分かりましたよ。」
再度、拡声器からアナウンスが流れた。
< 暴走車が一台 封鎖を破って高野山内に入りました 各寺院は気をつけてください >
さっきと同じ内容だった。
姉さんは、不安になって窓際まで行って、外を眺めた。ススキの穂が風に大きく揺れていた。
「風が強くなってきましたねえ…」
遠くの空で、稲妻が不気味に地獄の火柱のように走っていた。
「なんだかここは、前衛的なピンクフロイドの世界だなあ…」
それを聞いて、福之助がやって来た。
「ピンクフロイドですか?」
「聞こえた?」
「はい。ダウンロードして鳴らしましょうか? pink floyd: one of these days …」
さっすが、ヘビメタ福之助!いいいねえ〜〜!」
既に、姉さんの脳裏には、ピンクフロイドの<吹けよ風、呼べよ嵐>が不気味に流れていた。
「緑色の、不気味な風だなあ…」
福之助は、お腹を開けスピーカーを出した。やがて、そこから不気味な低音の電子ドラム音が流れ出した。
ダンダダダダ ダンダダダダ ダンッダダダダ ♪
この小説は完結しました。続きは
<人間村>です。
六角オセロゲーム 六角オセロの掲示板 あんた、頭が硬過ぎるよ!

作画:11さん(どうもありがとう!)
この小説は
傷だらけの天使 の続きです。
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