第四話『ブレイクピース、宣戦布告』その13
「何をぐずぐずしている! 逃がすんじゃない!
「はっ、申し訳ございません」
「戦闘機部隊は何をやっているのだ……敵の鉄人形が一機も落ちてないではないか!」
「全くもって情けない限りであります」
「貴様は何故そんな冷静な声を出していられるのだ! 全くどいつもこいつも、私に脳梗塞でも起こさせるつもりか!」
デイブロ中将は、肘掛けを叩きながら怒鳴り散らした。
もうこれで肘掛けを殴るのは何度目であろう……とブリッジクルーは顔をしかめていた。
それどころか、彼は足を置くスペースをも何度か蹴っており、その回数を入れたらもはや途方も無い。
彼が苛立つのも無理はない、これだけの戦力がいながら、落とせたのはふざけたダミーのバルーンだけである。
自分の無能を正に証明しているみたいだから、余計に腹立たしいのであろう。
確かに、デイブロ中将はお世辞ですら良い司令官とは言いがたい人物だった。
それは今までの彼の軽率な行動を見ていれば、嫌でもロクな男ではないということがわかる。
しかしそれと同時に、部下達もロクな人間でないということも明白であった。
上手く隊列しながら撤退していく敵の部隊とは違って、戦闘機部隊は滅茶苦茶な行動ばかりしていた。
いきなりの奇襲で混乱しているというのもあるだろう……だがそれにしてもこのバラバラな隊列は部隊にあるまじき醜態だ。
こんな身勝手かつ目的があやふやな動きでは、『私は的です、早く落としてください』と言っているのにも等しい。
結局の所、一言で言ってしまえばこの部隊の兵士達全員は、無能しか首をそろえていない烏合の衆だった。
敵は本当に鮮やかだった、これだけの物量を相手にしても、全く怯むことなく上手く後退しているのである。
流石にこの数でまた攻めたら全滅させられてしまいそうだったが、それでもこの善戦ぶりは見事と評するしかない。
これこそが、ナイト大佐らの厳しい指導による賜物であった、普通の訓練だって、ここまで整った隊列を作ることは難しいだろう。
防衛艦隊とは全く逆に、月軍の……仮面騎士団の兵士達は皆優秀であった。
素質があろうと無かろうと、ナイトの課した厳しい訓練により鍛錬された彼等は、嫌でも最低月軍に存在する『ベテランパイロット以上』の腕をそれぞれ持っていると言っていい。
機体の性能とは、結局の所パイロットの腕に依存してくる、生かすも殺すもパイロット次第である。
そのことを説明するには、目の前で今起きているこの戦いを見ていれば、詳しく言う必要もないだろう。
戦闘機でMSを相手にするのはかなり至難の業だが、しかし絶対に無理というわけではない。
陸上の戦車でさえ、一点に集中した攻撃を放てばMSを打ち倒す事が出来る。
部隊全員の連携さえしっかりとしていれば、快挙だって成し遂げることは可能なのだ。
「もっと攻めて行かんか! 砲撃主の眼は節穴でも空いているのか? 何故一発も当たっていない!」
「すいません! それが、味方機が混在していて上手く撃てない状況にありまして……」
「使えない兵士どもが! どこまでこの私をコケにする! くそおおおお!」
ついにデイブロ中将は、席から勢い良く立ち上がり、狼のように吠えて叫ぶ。
それでも怒りが収まらないのだろう、被っていた綺麗な司令官の帽子を地面に叩き付ける。
もはやこれは正気の沙汰ではない……と周りの兵士誰もが思っていた。
事実そうである、彼の行動の全てを見ていると、とても精神が正常な人間のすることとは思えない。
しばらく俯いて体を振るわせた中将は、ギロッと眼光を光らせて兵士達に命じた。
これから発せられる言葉の衝撃に備えようと、ブリッジクルー達は体をそれぞれ小さくする。
「もういい、このような無能な兵士どもなぞ塵になってしまえ! 前方に砲撃を開始せよ!」
「中将! それはなりません! あなたの人間性が疑われ、司令官の座を落とされます!」
「愚か者のために死んだほうがよっぽど不幸だ! 使えない兵達に用は無い、一緒に塵となって死んでしまえ!」
デイブロ中将の恐ろしい言葉に、ブリッジクルー達が凍りつく。
まるでそこだけ時間が止まってしまったかのようである。
流石の副官もこの失言には慌てたらしく、艦長をさらに必死に止めた。
「冷静になってください! 今の形勢をご覧になって、どう足掻いても敵は我々に反撃できません、この数ですぞ」
「ぬっ……くぅっ!」
デイブロ中将は拳を強く握りながら怒りに耐えた、側近の言うとおり、数でいえばこちらの勝利は間違いない。
それが、どうして自分は命の心配などしていたのだろう、少し馬鹿らしくなってきた。
しかし心配なことに代わりは無い、このままでは旗艦である自分の艦が落とされてしまうのではないか……。
とにかく彼は、自分の命の安全性を最優先に考えてみると、また段々と冷静になってくる。
何を慌てていたのだろう自分は……この防衛艦隊がそんな簡単に落ちるはずがない。
ましてやこの旗艦が落ちることだって早々ありえない、旗艦の位置をよく考えてみれば、中将のいる旗艦は部隊の真ん中にあった。
たとえ攻めてきても、前方にいる数隻の艦が、数の利であっという間に蹴散らしてくれる、司令官である自分のために命を犠牲にして。。
そこまで近づいてきた頃には流石に艦砲射撃だってできる戦況になっていよう。
なら心配することなど何もないではないか、と中将は狂ったように怒ったことを悔いた。
「ふっ……ま、まあ冗談はこれくらいにしよう、各員善戦せよ!」
居所が悪いような顔をしつつ、彼はじっくりと艦の席に座って、精神統一をするかのようにじっくりと目を閉じる。
勿論これは自分を落ち着かせているのである、狂気の沙汰に捕われていた自分を冷静な自分に戻すため。
場を取り繕ったものの、部下達の視線は冷たい……ここで改めて冷静な紳士であることを見せ付けないと沽券に関わる。
「(忌々しい敵め……早く私の目の前から消え去るがいい!)」
心の中で敵に対する恨みを述べると、デイブロ中将は再び心を落ち着けることに専念し始めた。
それを横目で苦々しく見ながら、副官のマオガもまた心の中でつぶやく。
「(全く、どこまで愚かしい人なんだろう。アンタがしっかりしてくれなくて、誰が私を上にのし上げてくれるという……)」
この艦隊の人員達は、骨の髄まで腐っているようである。
「敵部隊がそろそろ通過する予定時刻です」
「よし、総員気を引き締めろ、あの大艦隊を叩くぞ!」
宇宙の暗闇の中で、いつの間にか狭い空間で座っていたナイトは兵士達に活を入れた。
薄っすらと見えるその影では、巨大な船とその周りを取り囲む人形達が宇宙を静かに漂っているようであった。
その後ろには、さらに同じような光景がもう一つ見受けられる……恐らく彼等と同じ者達なのだろう。
暗闇の中で浮かぶそれらは、本当に持ち主を失った玩具の様に見え、どこか物悲しく、それでいて不気味だ。
自分を捨てた持ち主を呪う様にか、はたまた別の恨みがあるのか、とにかくその不穏な威圧感は無視できない。
しかし、それらはたたの人形ではない……人が中に乗ることによって意思を持ったように動くことが出来る鉄の人形だ。
そして鉄の人形達は武器を持ち、全員敵に向かって狩りをするように向かっていくのであろう。
彼等はそんな鉄の人形をこう呼んでいる、『モビルスーツ』と……。
今ナイト率いるMS部隊は、こうして息を潜めて敵の艦隊が通過するのをずっと待っていた。
あれから二手に分かれた彼等は、このようにMS隊だけを展開させ、敵がここにくるまで待ち伏せしていたのである。
これを、一般的には『伏兵』という、その昔よく使われた策略の一つである。
伏兵はいろんな用法があるが、今回のように敵を挑発しておびき寄せ、それを叩くというのは、容易なことではない。
まず囮役の兵士達が事を上手く運ばなければならない、上手く行かなければその時は自分を含めた部隊が全滅するのだから。
ナイトは、そんな囮役として最も信頼のおける人物を今回二人選出して、彼等の部隊を引き入らせたのである。
それがサラッドの率いる強襲部隊と、マインド率いる多目的部隊である。
今回のような強襲任務に、サラッド中佐の部隊はあまりにも似合いすぎていた、そのために設立されているのだから当然だ。
しかし、それだけでは流石にあの大艦隊を相手にする戦力としては、数があまりにも足りなかった……そこで多目的部隊の登場である。
彼の部隊は、その名の通り様々な任務につけるような訓練を施されて、加えてそれに適したMSに搭乗している。
残念ながら強襲部隊の乗るカスタム機にスピードは追いつかず少々足を引っ張りかけたが、こうして結果的には上手く敵を陽動することに成功した。
これは二つの基本的に構造の異なる部隊が、見事に連携を組んだ結果であろう、防衛艦隊とは雲泥の差である。
そして今、ここで待ち伏せている部隊は二つ、今ここにいるナイトの部隊と、先ほど偵察の報告をしていたアストラルの部隊だ。
アストラルの部隊は偵察部隊である、そしてその中で一人だけ、アストラルは使い捨ての小型高速船を使って単身偵察に乗り出ていた。
そして任務終了後、彼は所定の位置で自分の部下達との合流を果たす、だが本来偵察部隊のMS達は武器を所持していなかった。
偵察機とは電子機器の塊である、だからしてそれを妨げてしまうような大出力火器やビームなどの熱兵器は好ましくない。
なので今回は特別に自衛程度のマシンガンを装備し、貴重な戦力の一つとなった。
だが、隊長機であるアストラルの機体には、MS用のナイフが二本握られていた。
彼にかかれば、ナイフで敵を落とすことなど造作も無いのだろう、他のパイロットには残念ながらそこまでの恐ろしい技術は無い。
だが偵察部隊は基本的に相手の動向を探ったりすることが任務であり、戦闘能力などさほど必要は無い、むしろ避けなければいけない。
それでも彼等も戦闘員としては十分な腕を持っていた、万が一の事とは戦場においては万どころか一にもならないほどよく起きるという。
だから、仕方なく敵に見つかって戦闘になった時の場合に、敵を破壊するだけの腕は持ち合わせているのである。
もしナイフではなくこれがマシンガンやビームライフルであれば、他の部隊同様宇宙を舞ったことであろう。
ナイトの反対側では、さらに残りの三つの部隊が待機していた。
前から数えて一番後ろに潜んでいるのが、火力後方支援部隊のブラッディ中佐とその部下達である。
その名の通り、彼等は後方より長距離かつ威力の高い武器で援護することを目的としている。
射程の長さを生かして、敵の届かない位置から相手を長距離攻撃し、味方を上手く支援することが彼等には要求される。
故に彼等の機体は徹底的なカスタマイズが行われていた、まず彼等の機体にはMS特有の人間らしい腕が存在していない。
それ自体が砲身となっているため、砲撃戦には凄まじい威力を発揮することであろう。
この装備では格闘戦に持ち込まれたら勝ち目などほとんどゼロだが……今回はそんなことができる戦力が相手にはいないことを読んでいた。
読みは当然のように当たっていたが、そもそも彼等は敵を自分に近づけさせるつもりなど毛頭なかった。
敵を近づけさせない自負心が彼等にはある、つまり読みうんぬんではなく、その確固たる自信があるからこそ、砲撃戦特化させているのである。
そして次にあのデッド=スターの機体だ、これは先ほど説明したから特に言うことも無いだろう。
だが彼等の部隊は、隊長のデッド=スターを覗いて皆ナイトのものと同型機である。
元々拠点制圧用であるからして、今回の任務にそぐわないのは当然のこと、故に隊長の彼は部下達全員に乗り換えを命じた。
だがそれを命じた本人は、そんな用途に合わない機体に平然とそのまま乗り込んでいた、それだけの自信と実力があるのである。
そして最後に、最大の問題児であるメトロ=サイコ少佐のMSだったが、これはまた奇怪な形をしたMSであった。
まずデッド=スター機同様脚部が普通のものではない、むしろ根本的に脚部が存在していなかった。
さらに加えて、他の二機と見比べると上半身がやたら巨大である、どうやらそれを支えるために足を廃したらしい。
そもそも宇宙において脚部とはあまり必要のないものだ、よく見てもみれば宇宙空間に足場はない。
本来MSの脚部とは、宇宙だと姿勢制御に使われる程度であり、例えそこだけを破壊されようとも致命的な被害には及ばない。
この地上が無いという、MSにとってはある意味悪条件とも言える点を逆手にとり、彼の機体は代わり身体に見合ったロケットブースターを装備していた。
さらにこの機体には最も恐ろしい装備が搭載されているのであるが、それは後の戦闘で明らかにされることであろう。
この武装を『操れる』ことこそが、パイロットであるメトロの自負心を増長させる要因になった利用だった。
『愚者どもめ、何も考えずに来おったぞ……ブラッディ中佐』
『わかっている少佐、我々もいざ行きますぞ』
「……了解しましたっ!」
冷静なブラッディとデッド=スターとは違い、メトロには余裕が無い様子だった。どこか落ち着きが無く、仮面越しからも冷や汗が伝わってくる。
パイロットは本来、宇宙で戦闘する際には必ずといっていいほど『ノーマルスーツ』と呼ばれる宇宙服に似た服をつけなくてはいけない。
だが、自信のあるパイロットやノーマルスーツを毛嫌いする者は、あえて着用しないことがある。
仮面騎士団の幹部達は、皆その自信を体言するかのように、全員ノーマルスーツを着てはいなかった。
ノーマルスーツとは本来、身体に結構密着する服であるからして、中は多少暑く、戦闘中汗を流す者も多い。
故に嫌うものが多いのであるが、今のメトロはそんな戦闘中の汗と良い勝負になるくらい冷や汗を流している。
事実、無重力のコックピット中において、いくつか水滴が浮いていた、勿論彼の汗である。
それだけ、彼が述べた覚悟の一言には、背負いきれるかどうかも怪しい重量があったのだ。
もし部下が一人でも死ねばそれは自分の首を斬る、彼の言った言葉は決して偽りは無い。
だからこそ、この冷や汗が止まらない……部下の命はもはや自分の命である。
いざ覚悟の通りのことになれば、自分は兵士達の前で晒し首にされてしまう……。
ただでさえプライドが高く、それを特に重んじる彼にとって、それは末代までの恥だ。
事実そうなったとしたら逃げることも彼には可能であるが、彼にはその気は微塵としてなかった。
何故ならそれは晒し首以上の恥だからだ、つまり戦士ではなく愚かな人間として晒し者にされるのである。
「(このプレッシャー、私は耐えられるのか?)」
いつもは自信満々な彼も、こればかりは自信持てないでいた……。
どんなに『戦う力』があっても、心までは完全に強くすることはできないのである。
それを苦悩していたメトロは、自分を嘲笑するかのように小さく笑い始めた。
「(私ともあろうものが何を脅えている? 将来大佐に認められてその名を継ぐべき者が……)」
今の自分の情けなさを果てしなく嘲笑っていたのだ、彼の言う様にナイトを引き継ぐとなればそれは並大抵のことではない。
自分の持っている兵士だけではない、全ての兵士の命を預かることになるのだから。
それが、五人や六人の部下の命ですら満足に扱うことのできないなんて、これを笑わないでどうしてくれよう。
「慕われるべき人材がこの体たらくでどうする! 立て我が自尊心よ!」
目に炎が灯ったようになった彼はコックピットの中で絶叫すると、改めて操縦桿を握り締めた。
悩んでいるうちにもう敵艦は今にも目と鼻の先のところまで来ようとしていた。
「ナイト大佐、見ていてください! これが私の力です!」
「ち、中将、見てください! 左右から敵増援部隊が出現しました!」
「なんだと! レーダー観測手は眠っていたのか? こんな近くに来ているぞ!」
「どうやらレーダーが使えないようなのです、敵が何らかの工作を行ったようでして……」
「ええい小賢しい! だが我々の艦隊の数に比べれば奴等はミジンコだ! 伏兵などという古い兵法で我々は討てんよ!」
デイブロ中将は、また怒気をはらんだ口調で強気の発言をするも、防衛艦隊軍はすっかり士気が落ちきっていた。
伏兵に攻撃されて不意を突くのは、古来より使われてきた手であるが、この方法は今でも十二分ら通用するものである。
何千年経って兵器が進化しようとも、人間の心までは進化しないということを、ナイトはよく理解していた。
気づけば周りの艦は叩き落されていき、ただでさえ無力な戦闘機達も指揮系統を失っていくごとに、的と化していく。
最初は強い事を言った彼であるが、いざここまで追い詰められると流石に焦りも沸く。
敵は正に統率のとれた綺麗な動きであった、高らかに拍手をして賞賛したくなるほどである。
ある機体は素早く敵の死角に入って急所を撃ち、またあるものは艦橋を真っ先に叩き潰す。
そんな感じで、瞬く間に防衛艦隊は壊滅の危機へと落とされていった。
「うおおおおおおおっ!」
メトロはその中でも特に鬼気迫る勢いであった。
彼は、自分の機体の周りに浮かぶ無数の小型浮遊兵器を巧みに扱い、戦闘機も艦も次々に落としていく。
浮遊しているということは機雷なのかと思ったがどうにも違うらしい、何故ならそれは動いているからだ。
さらにその先端からはビーム砲までも撃ち出している、こんな都合の良い機雷など存在しない。
この浮遊兵器こそ、彼の力でなくては扱えない兵器、『サイコミュ兵器』であった。
サイコミュ兵器とは、『ニュータイプ』と呼ばれる特殊な人間のみが使えるという、正に人知を超えた兵器だ。
これはなんと、操縦者の意図を忠実にトレースしてその通りに敵を攻撃する……という夢のような武器である。
だがこれを使うことは常人には不可能に近い、彼のようなニュータイプでなくては動かすことすら出来ない。
肝心のニュータイプを詳しく説明すると、宇宙にあがった人間達がそれに適応するために進化した極少数の人間のことだ。
普通の人間との違う所は、その鋭すぎる勘と感受性である、それはまるで未来を予測する占い師のようだと言う者もいるくらいである。
加えて、特に力の高い人間はテレパシーにも似た会話すらやってのけてしまう、という。
メトロはそういった類のことは出来なかったが、その鋭い勘とサイコミュ兵器を生かした戦いが得意であった。
学会でもよく取り上げられることがあったのだが、科学的に証明しにくかったこともあって、人々は噂でしかそれを知っていなかった。
しかし実際、そんな人間がここにいた、メトロは幼い頃から自分の力に気づき始めていた。
何に関しても勘の鋭い彼は、時には人々から畏怖され、遠ざけられることもあったという。
少ない頻度とはいえ、彼はそれに苦しんでいた、何故自分はこのような力を手に入れてしまったのだと……。
仕舞いには親をも怖がらせてしまう力だった故に、力に対する嫌悪感もピークに達していた。
だがそんなある日、一つの光が差し込んだ、ムーンレス=ナイトである。
ナイトは、彼の持つ力はニュータイプであると一目で見抜き、彼をスカウトした。
このスカウトには、彼が力を持つ持たない以前に、時折怪物を見るような目で見られている彼を放っておけないと思ったところもあったらしい。
最初は断ろうかとも思った彼だったが、自分の力が認められるかもしれないと考えた彼は、その誘いに乗った。
その時である、ナイトに対して親以上の尊敬を抱き、彼のようになりたいと思ったのは。
故に彼はナイトに認められたい、その一心で今この戦場にいるのである。
サイコミュ兵器は、次々に敵の兵器を破壊していく、その光景はある意味地獄絵図にも見えた。
それだけ彼を追い詰めるプレッシャーが、彼を鬼神の如く活躍をさせているのだろう。
「ははははは! 無力だな地球軍よ、所詮地を這うことしか出来ん貴様等は全員この私の力に屈服するしかないのだ!」
コックピットの中で高笑いをあげるメトロ、その言葉の通り彼等は屈服することしかできないようにしか見えなかった。
他の幹部達も、着々と敵艦を落としていっていた、その中でもナイトの動きはニュータイプをも超越したかのようなものがあった。
彼は、機体の左手にビームサーベルを持たせたかと思うと、向かってくる戦闘機達を全て叩き潰していく。
そして、その勢いで敵の艦砲を全て避けると、さらに切迫して一気に艦橋を切り裂いた、敵艦の艦橋は宇宙空間を少し舞った後に爆発した。
さらに艦のエンジンを右手に背負っていたバズーカで破壊し、爆発寸前で艦の側面を蹴り、また勢いをつけて次の艦へと接近する。
するとその途中で命令系統を失った戦闘機を見つけ、それをビームサーベルを仕舞った後の左手でしっかり掴む。
「な、何すんだコイツ! 離せよ! うっ、ぎゃあああああぁぁぁ!」
抗う暇すらなかった戦闘機は、そのまま艦橋に投げつけられて共々に爆散し、宇宙の塵となった。
今の戦いは、さっきとは同様の戦法で破壊しても良かったものだったが、彼はあえてより派手ながら戦い方に切り替えた。
理由はまず相手に力量の差を見せ付けるため、そしてもう一つは一発でも弾をセーブするためである。
こんな常人離れの戦いを見せられたら、ただでさえ伏兵で怯んでいる彼等だ、抵抗する気すら失せてきてしまうことだろう。
その戦い方を、デイブロ中将とマオガ中佐もしっかりと目の当たりにしていた、強気だった彼の顔も流石に歪む。
「な、なんなんだコイツラは……」
「殺される……殺されますぞ艦長!」
「くっ、怯むな! 敵を一機残らず消し炭にしろ!」
そういいつつも一番怯んでいたのは彼であった、敵も一機も落ちていなかった。
だがそこを批判すれば、先程の公言通り殺されてしまうかもしれないので、総員は耐えるしかない。
どっちみち、彼に殺されなくとも敵の攻撃によって宇宙に放られそうだったが……。
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