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新機動戦士ガンダムバーサス
作:灯宮義流



第二話『鬼と呼ばれたガーレンド=ブリッド』その2



 その頃、人気が失せたコロニーの中に、巨大な足音が響いていた。足音の主は、例のボブリとかいうMSである。
 今この時、コロニーの市街地の中で、いよいよMS同士の戦闘が行われようとしていたのである。そして、様々な静止を振り切って意気揚々と飛び出したアームのガンダムバーサスは……。
「あ、危ねえ危ねえ、危うく電線切っちまうところだった」
 無様なことに、コロニーの住宅街の入り組みように四苦八苦していた。
 アームはその緊張感に押しつぶされ、何事にも慎重になりすぎていたのだ。
 無理も無い、操縦はある程度わかるとはいえ、これはゲームとは違うのである。彼はもう、先程とは違って、もう現実と仮想をしっかりと区別しきっているのだから。
 慎重に歩を進めていくアームのバーサスだったが、やはり何の被害も出さずに歩くことは難しかった。彼はとうとう、停めてあった車を一台踏み潰してしまう。
 やってしまった、という顔に一瞬なったが、アームはその性質上すぐに開き直れた……。
「へっ……そんな所で違法駐車してんのが悪ぃんだよ!」
 この開き直り方は少しどうかしているところがあるが……。
 それからも彼は電線をとうとう二・三本切ってしまったり、人の家の塀や垣を壊していきながら、なんとか敵の向かっている市街地へと辿り着いた。
 ここまで歩いてくるまで、どれだけの金銭的犠牲を払ったかは想像し難くないだろう。彼が市街地に辿り着いたときには、もう既に三機のボブリはバーサスの前方にいた。
 敵は目標を視認するなり、三機揃って手持ちのマシンガンですぐさま攻撃を仕掛けてきた。
 しかし、マシンガンの射程ギリギリの距離で発砲してしまった為、威力は減少してしまっていた。マシンガンの弾丸は、バーサスの防御した腕に悉く弾かれた。
 だが、命中したことに変わりは無く、バーサスのコックピットは大きく揺れる。
「ちっきしょう……何か反撃できる武器は……」
 アームはそう言って武器を探してみるも、ロクなものはなかった。
 敵機ボブリのような手持ち武器は、腰部に収納されているビームサーベルのみしかなく、あとは頭部内臓のバルカン砲くらいだ。
 ビームサーベルはその名の通り接近戦用の武器で、バルカン砲は牽制用……どちらも反撃に相応しいとは思えない武器である。
 とりあえず彼は、左腕で砲撃をなんとか防ぎつつ、腰に収納されているビームサーベルを抜くことにした。
 腰に収納されているビームサーベルは、腰の横の部分が半回転して出てくる。しかし、それを抜いただけではビームサーベルの刃は出てこない。
 アームは、コックピットのそこら中に貼り付けてあるメモから、それを出す方法を見つけ出し、手で掴んでいるレバーの親指があたる部分を押してみる。
 すると、紫色に煌くビームの刃が音を立ててその姿を見せた。これさえあればまだバルカン砲で相手を撃つよりはまともな戦いができることだろう。
 あとは敵にどうやって接近するかだ。
 依然としてボブリの砲撃は止まない……と思いきや、バーサスがビームサーベルを抜いたかと思うと、隊長機が突然砲撃を止めさせた。
 そして、驚いたことに隊長機も、相手に合わせてビームサーベルを抜いたのである。
「少尉殿、何を!」
「黙ってみてな、この大手柄は俺だけがもらう!」
 ガルグはそう大きく出ると、ボブリをバーサスの元へと走らせた。この少尉が指揮官として最も相応しくない男であることは誰の目にも明らかである。
 皮肉にも、そのことが敵の弱点を補ってしまうことになるとは、本人は考えてもいなかった。
 突っ込んでくる敵を見て、アームはいつの間にか恐怖心を忘れて、いつもの喧嘩をやっている時のような気分に陥る。
「敵さんやる気満々じゃねえか……上等だ! その喧嘩買ってやるぜ!」
 アームは、バーサスに今まで守りに徹していた左腕をビームサーベルに回させ、切りかかってくるボブリを両腕で構えたビームサーベルで迎えうった。
 こうしてついに、バーサスとボブリの一騎打ちの狼煙はあがった。
 交じり合ったビームサーベルは、眩しいほどに火花を散らせていき、地面は段々と二機の踏ん張りでひしゃげていく。
 切りかかったボブリの方が振りが早かったため、どんどんバーサスを押していって優位に立っていた。しかし、勿論バーサスだって黙ってはいない。
「死んでたまるかぁぁ! うおりゃぁぁぁ!」
 アームは、バーサスの出力をあげ、足を踏み込ませた。
 すると、さっきまで勝っていたはずのボブリの方が、みるみるうちに押されていった。
 そのパワーは、とても量産機とは比べ物にならないようで、飛び掛ったはずのボブリの方が返り討ちにされてしまいそうになった。
 ガルグの背筋に、ピンとした冷気が走る。焦った彼は、ボブリの頭部に内臓されていたバルカン砲で、まずバーサスを牽制した。
 思惑通り、驚いたアームが身を引かせたため、それに乗じてガルグのボブリはバーサスを蹴って一気に後方に下がっていく。
 そして、ホブリが下がった先には、部下の二機がしっかりと待機していた。
「もういい、撃て! ガンダムを無様な蜂の巣にしてやれ!」
 指示を出されたエルート達は、なんて勝手な人間だろうと思いつつも、仕方なく命令に従う。
 蹴飛ばされて怯んでいたアームは、その攻撃を両腕で間一髪で防御した。しかし、さっきより距離が近くなっていたせいか、両腕の装甲はさっきより急速にひしゃげていく。目の前のモニターにも、両腕のダメージが警告として表示された。
 ここは隠れないと腕がもたない、そう思ったアームに、ふと横道が目に入った。もうここに逃げ込むしかないと、彼はバーサスを思い切り走らせ、ビルの影に潜むことにした。
 なんとか攻撃からは逃れられることに成功したが、ここに隠れていられるのもそう長い時間はない。
 何か手を打たなければ、敵のマシンガンの雨で蜂の巣だ。
「どうすりゃいいんだよ……」
 アームは、無い知恵を振り絞って、この状況を脱する方法を必死に考えはじめた。
 敵は刻一刻と、バーサスの元へと攻め寄ってきている……。は












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