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嫉恋

作者: Vivi

どうも。Viviカカオまめです。

誰もが一度は経験したことがあるであろう“行動しなかった故に生じた後悔”をこの作品で表現したつもりです。


さーとしあげた短編作品ですのでわかりづらいところがあるかもしれません。すみません。

未熟者が書いた稚拙な文章ですが、温かい目でご覧くださるとうれしいです。


僕はいつもあの子を見ていた。

僕はいつもあの子の視線の先を気にしていた。


“良かった。今日もあの子の視線は定まっていないみたいだ。”


僕は時々夢を見る。

あの子が、あの子の視線が僕に向けられている夢を。

僕も視線をあの子に向ける。

言葉を発しなくてもわかる互いの気持ちが、僕とあの子だけの空間を生み出す。

そんな理想妄想の夢を。


現実は違う。あの子はまだ僕を見ていない。

・・・そう。“まだ”なんだ。

あの子はいつか僕を見るようになる。

そんなありもしないことを本気で考える。

そして、そう思っているうちに本当にそうなるだろうという妙な確信ができる。

だって僕はこんなにもあの子のことを見ているんだから。



今日も僕はあの子の視線を追っていた。


“ん?”


今日はいつもと違う違和感を覚えた。

身体中にひやっとした汗がにじむ。


なんだろうか。この緊張感は。


いつもは新しいものに次々と興味を示す赤ちゃんみたいにキョロキョロと大きいぱっちりとした目をせかせか動かしているのに。

今日のあの子の目は違う。


まるで一人だけどこか別の世界にいて、自分にしか見えないものを見ているような。

あの子の視線は何かに釘を打たれていた。


僕は頭にめぐる嫌な想像を掻き消していった。

現実を見ようとしなかった。

僕はあの子の視線を追うことが怖くなっていた。

あんな目をしているうちはあの目に映る何かを見たくなんてない。

いずれ飽きて、またいつもみたいにあの子の視線は忙しなく動きまわるに違いない。

そんな勝手な妄想で頭をいっぱいにして、僕は空や地面ばかり見ていた。



一日、二日、そして一週間が経った。

あの子の視線はまだ同じだった。

僕の知らない何かを見つめたままだった。


本当はもう、わかりかけていた。あの子がどんな気持ちでその何かを見ているのかを。

あの子は…あの子は…。


それでも僕はあの子の視線を追うことを拒んだ。ひたすら拒んだ。

拒むことで、現実に抗っているつもりだった。



一か月が経った。

僕の目は腐りかけていた。

小さい小さい希望という名の光で偽った幻想を抱き続けた。

僕の目はその幻想を頼りにかろうじて開かれていた。

僕は一か月前のあの子の視線の異変に気づいてから、あの子の目を見ていない。

あの子の顔や姿もみていない。

地に映る影しかみていなかった。


あの子は今どんな髪型をしているだろうか。

もう夏服に衣替えをしただろうか。

どれくらい笑っているだろうか。


もう現実の結果はどうでもいいから、一目だけでもあの子を見たかった。

あの子が何を見ているのかを知って、気持ちが地の底に沈んだとしても、あの子をみたかった。


けどそんな感情を僕は意地で押し殺した。


僕は今日もあの子を見ていない。------------------------------------------------------------------------------------------------------



ある日、目覚めると目の前が真っ暗だった。

壁伝いに部屋の電気のスイッチを探した。

スイッチを見つけ、部屋の明かりをつけた。

目の前がうっすらと明るくなるのを感じた。


しかし、何も見えない。


何度も何度も瞬きをして、目をこすった。

けど何も見えることはなかった。


僕は・・・


失明した。


原因は不明だった。

医者からは“全力を尽くすが治る見込みはほとんどない”と明言された。


その日、僕は学校を休んだ。


一週間。僕は家に篭ったまんまだった。

僕の体は衰弱していった。

親や先生、友達に説得され、さらに一週間が経った頃、僕は久しぶりに学校へ足を運んだ。

瞼は閉じたまま、目が見えない人が使う杖をもち、親に腕を引かれながら歩いた。


学校に着き、教室に入ると数人の友達が寄ってきて、心配やら励ましやらいろんな言葉をかけてきた。

目が見えないせいか、周りから発せられる声は耳を通り脳を揺らし、はっきりと聞こえた。


とんっ。

席に向かう途中僕の足は何かに引っかかった。


「わ、ごめん。」


咄嗟に僕は引っかかった何かの主にそう言った。

すると


「ううん、私は平気だよ。こっちこそごめんね。」


と申し訳なさげに、それでいてどこか明るい声でその相手は声を発した。

その声は脳を駆け巡り、身体じゅうにびびっと電流のようなものを感じさせた。

聞いたことのある声だった。

僕はすぐわかった。


“あの子だ”と。




僕はもうあの子も、あの子の目も見ることはできない。

あの子の視線の先の何かを、見て知ることができない。


僕は嫉妬した。

目が見える頃の自分に嫉妬した。

それと同時にあの時の僕に怒りを隠せずにいた。

“なんでもっとあの子を見ておかなかったんだ”と。



あの子の声がよく聞こえるようになった。

周囲の雑音から一つだけ突出してその声は僕の耳の中へ入った。


あの子は今、楽しそうに誰かと話している。

その声はいつもより少しだけ高く、きれいな声だった。

そして、あの子が何かにくぎ付けになっていたあの視線によく似ていた。


僕はなんとなく勘付いていた。

あの子が話している誰かは、あの時あの子が見ていた何かだということに。


あの子の声は幸せそうだ。

あの子は僕とは違ったんだ。

ただ見ているだけで終わらせなかったんだ。

あの子はあの子の使える五感すべてを使って行動したんだ。

その結果、あの子は遠くで見ていたものを近くでみることが出来る様になったんだ。


僕は・・・。


僕は後悔ばかりしていた。


けど、


時間が経っていくと、楽しそうに話しているあの子の声を聞いていた僕は、前に進もうと思うようになっていた。


僕には耳も口も鼻も手も使える。ただ一つだけ目が使えないだけ。



僕は放課後、あの子を呼び出した。


僕はあの子が好きだ。


今の僕はこの気持ちを伝えることができる。


僕は使えるものを沢山もっているのだから。


大きく深呼吸をした。





目玉の奥の奥の深いところ。

どこか遠いところから小さく消えそうだった光が大きく輝き始めた。

ご覧くださって本当にありがとうございます!

またかけたら短編もたくさん書いてみたいと思いますので、よろしければ次回作も拝見してください。

アップは不定期なので、ご了承ください。

自分勝手ですみません(汗)



※パソコンや携帯上の作品は適度に休憩をはさむなどして、目を休ませながらご覧ください。

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