ちんこと女神さま
ちんこは女神さまに救われました。
彼はもともと、アドニスくんという男の子のちんこでした。
でも、アドニスくんは、同じ男の子のカズくんを好きになってしまったのです。
アドニスくんはカズくんのお嫁さんになりたかったのです。
だからアドニスくんはおじいさんに、ちんこを切ってほしいと願ったのです。
こうしてちんこは、高名な魔法使いである、アドニスくんのおじいさんの手によって、アドニスくんから切り取られたのです。
ちんこは思いました。
「ぼくはなぜ切られたのかな」
ちんこは悲しみました。
「ぼくはいらない子なのかな」
そしてちんこは飛び込みました。魔法使いのおじいさんが住む家の裏庭にあった池に。
だれかがちんこの頬を優しく叩きます。
ぷしゅー
ちんこは水を吐き出しました。
「ああ、気がついたのね」
ちんこの目の前で、それはそれは美しい女性が、ちんこをのぞき込んでいました。
「ぼくを助けてくれたの?」
ちんこは美しい女性に尋ねました。
でも、目の前の美しい女性は微笑むだけ。
「ううん、まだ助けてはいないわ」
美しい人は首を横に振ります。
「あなたがここに飛び込んだ理由がわからないから」
ちんこがこの池に飛び込んだ理由。
それは、「ぼくがいらない子」だと思ったから。
ちんこを助けてくれたのは、この池を守る『女神さま』でした。
女神さまはちんこを気に入りました。
特にちんこのぷるんぷるんな肌がお気に入りのようです。
「ちんこはぷるぷるね」
そういってちんこのほっぺをぷにぷにします。
ちんこをぷにぷにしてから女神さまは頬を赤らめます。
こうしてちんこと女神さまは毎日を過ごしました。
ところがある日、上の方から大きな音がしたのです。
「あ、アドニスくん!」
大きな音を立てたのは、ちんこを股間から切り取った、アドニスくんでした。
アドニスくんは池に身投げをしたのです。
すると、女神さまの機嫌が途端に悪くなりました。
「こうも自殺に使われちゃうと、池の評判が落ちちゃうのよね」
なにかリアルな事情を聴いたような気がします。
「あーもう、元に戻す口実とかないかしら」
女神さまのお力は強力です。今現在も、池に飛び込んだアドニスくんがおぼれるのも食い止めています。
でも、特別な事情がない限り、エントロピーは戻してはいけないのです。
神さまと女神さまの世界も大変です。
すると、女神さまが頭上に向けて目を見開きました。
「チャーンス!」
「どうしたの女神さま?」
「池のほとりで、このガキのおじいさんが泣いているのよ。あれを三日ほど続けてくれたら、奇跡を起こしても、他の神さまも文句は言わないわ」
大人の事情ですね。
女神さまの期待通り、おじいさんは三日三晩泣き続けました。
その後女神さまは金銀パール何とかではないですが、おじいさんを試すふりをして、アドニスくんを厄介払いしました。
「ちんこ、これでまた平和が来たわ」
でもちんこは不満でした。
それは、今回の出番が、女神さまの両手にやさしく抱きかかえられて、おじいさんとクソガキに懇願する役割だったからです。
「女神さま、ぼくはもっと強くなりたい」
そんなちんこを女神さまは意外そうな目で見つめました。
「強くなりたいの? ちんこ」
「はい、女神さま」
「そう、ちんこも男の子ね。わかったわ。修行に行ってらっしゃい。でもねちんこ、あなたはいつでもこの池に帰ってこれるのだからね」
ちんこは女神さまのやさしさに打ち震えました。
そして決めます。
「ぼくは絶対強くなって戻ってくるから」
こうしてちんこは旅に出ました。
女神さまの妖艶な舌なめずりには気づかずに。
「さて、修行をしなきゃ」
でも、ちんこは修行の仕方を知りません。
するとそこに、穴に潜ったどじょうさんがいました。
「ねえどじょうさん、修行をするには何をしたらいいかな?」
すると親切などじょうさんは教えてくれました。
「滝に打たれて体を冷やすといいよ」
いわれたとおり、ちんこは滝に打たれて修行をしました。
すると何となく、『持久力』があがったような気がしました。
次に出会ったのは、穴に潜ったナマズさんです。
「ねえナマズさん、修行をするには何をしたらいいかな?」
すると親切なナマズさんは教えてくれました。
「乾布摩擦をするといいよ」
いわれたとおり、ちんこは毎朝体中をタオルでこすりました。
すると何となく、『持続力』があがったような気がしました。
ちんこは自信がつきました。
今なら誰と戦っても負ける気がしません。
「『世紀末救世主』って、こんな気分だったのかな」
ちんこは浮かれました。
でも、浮かれ気分も誰かの悲鳴に引き裂かれます。
「たすけてー」
ちんこは悲鳴の方向に全力で向かいました。
「む」
そこには、モンスターに襲われている女の子がいました。
ちんこは反射的にモンスターに向かいます。
が、相手のモンスターは、ちんこにとって天敵ともいえる相手だったのです。
そう、モンスターは『うつぼかずら』
ちんこは勢いのままにうつぼかずらに突っ込みました。
「むむ」
勢い余ったちんこは、うつぼかずらの体内にとりこまれてしまったのです。
このままでは、ちんこはうつぼかずらにとろけさせられて終了です。
とろけさせられるのもある意味一つの人生なのですが、ちんこにはそこまでの深い人生はまだわかりません。
ちんこはあせりました。何とかしなければと。
体がぬるぬるに覆われます。このままだと、とろけさせられてしまいます。
一瞬ちんこはこのまま身を委ねようかと思ってしまいました。
人生負けコースです。
しかし、ちんこには加護がありました。
そう、ちんこには女神さまの加護があるのです。
「ああ、女神さまから、こんなにとろけさせられるような想いをさせられたら、僕はどうなっちゃうんだろう」
その瞬間、ちんこのドーパミンとエンドルフィンは目覚めました。
「うおおおおおうりゃあ!」
そうです。ちんこは『巨大化』したのです。
あわれ、うつぼかずらは、その体を巨大化したちんこに引き裂かれ、絶命してしまいました。
「助かりました、旅のちんこさま」
女の子はちんこにお礼を言いました。
いい汗かいたちんこも、まんざらでもありません。
すると女の子が立場もわきまえず、おずおずとちんこにお願いをしました。
「旅のちんこさま、お願いです、姫さまをお救いくださいまし」
「どういうこと?」
ちんこの疑問に女の子は答えます。
この先の小さな王国で、二年前に姫さまが悪い魔法使いにさらわれました。
悪い魔法使いは、姫さまが十六歳になってから結婚するために、姫さまを塔に幽閉しているのです。
悪い魔法使いは、その間、姫さまが奪還されないように、塔に様々な卑怯な罠を張っているのです。
ちんこは疑問に思いました。
「なぜ悪い魔法使いは姫さまをすぐにお嫁さんにしないの?」
すると女の子は驚いたような表情でちんこに返答しました。
「法律で十六歳以上にならないと女の子は結婚できないからです」
ちんこは不思議に思いました。
『刑法』でいうところの『誘拐』を堂々と行っている悪い魔法使いが、なんで『民法』に定められている『結婚年齢』を順守しようかとしているのかと。
「今の世間ではコンプライアンスが大事なのです」
どや顔で語る女の子の前に、ちんこはなんの反応もできませんでした。
こうしてちんこはそのまま王家に連れていかれました。
「おお、そなたが姫を救いに行ってくれる勇者か! 心待ちにしておったぞ」
王さまはテンプレです。
でも、他がよろしくないとちんこは思いました。
たぶん姫さまを救いだした褒賞は、姫さまとの結婚と、この国の王位だと思います。
でも、元気なのは目の前の頭の悪そうな王さまだけです。
この国は見る限りろくな産業もなく、隣国にびくびくしている状況です。
ちょっと賢い人なら、この国の王位を継ぐくらいならば地方公務員とかの職を選ぶでしょう。
ちんこは王に尋ねました。
「これまで姫さまの救出に向かった勇者はどんな方々でしたか?」
王は答えます。
「力持ちがほとんどじゃ」
ちんこはため息をつきました。
脳筋を罠いっぱいの塔に単独で行かせるなんて、どっかの寒い国の馬鹿ガキが動画に投稿するために高層ビルの工事現場とかで自撮りしようとして落下するよりもリスクが高いだろうにと。
「わかりました。ぼくが行ってきます」
ちんこは塔に向かいました。
道行く道がすべて罠ばかりです。賢い人間ならこんな道はお断りです。
でも彼はちんこです。
罠もちんこまでは想定しなかったようです。
こうしてちんこは無事に塔にたどり着き、そのまま塔を登っていきました。
塔の奥で一人の娘さんが泣いています。
「姫、さま?」
すると娘さんはちんこの方を振り向き、一瞬身体を硬直させましたが、彼の紋章が自国のものだったので安心しました。
「はい、もしかしてあなたは勇者さま?」
「勇者ではありません。ちんこです。でも、姫さまをお救いに参りました」
姫さまが一瞬いやな顔をしたのをちんこは見過ごすはずもありません。でもちんこにはどうでもいいことです。
「姫さま、お城に帰りましょう」
と、急に姫さまの表情がこわばりました。
次の瞬間、ちんこは背中に悪寒を覚えました。
「いらっしゃい、お客さん」
そうです。悪い魔法使いが現れたのです。
「これはこれは。まさかちんこ単独で姫さまのところにお見えになるとは予測しておりませんでしたぞ!」
悪い魔法使いは豪快に笑います。
でもちんこも負けていません。
「問答無用で姫さまをさらった悪い魔法使いよ! 裁きを受けよ!」
すると悪い魔法使いはきょとんとした表情になりました。
「ちんこよ、何を言っておる。姫さまは借金のかたじゃぞ」
え?
ちんこは動揺します。
「姫さまが十六歳になったら結婚するんじゃないのですか?」
すると悪い魔法使いは、何を馬鹿なという表情になりました。
「わしが姫さまと結婚するじゃと?」
ちんこも負けてはいません。
「街ではそう言われています!」
すると悪い魔法使いが舌打ちをしました。
「なあちんこよ、お前も『ますめでぃあ』に乗せられているのじゃ」
その一言にちんこは動揺します。
「わしはな、姫さまが借金を返すために合法的にえっちなビデオに出られる年齢になるまで、ここで面倒を見ているだけじゃよ」
ちんこは混乱しました。
横では姫さまも舌打ちをしています。
でも、ちんこは引っ込みがつきません。
「悪い魔法使いよ! ここで会ったが百年目! 勝負だ!」
「ちんこよ、そういうノリはわしも嫌いではないぞ!」
ということで、ちんこと悪い魔法使いの勝負が始まりました。
魔法使いの魔法に、ちんこは巨大化で対抗します。
「ほう、立派なもんじゃの」
「魔法使いよ、押しつぶしてあげる!」
悪い魔法使いにちんこが襲いかかります。が、そこで魔法使いの魔法が決まりました。
「電撃じゃあ!」
悪い魔法使いの電気攻撃で、ちんこはその巨大な体をびっくんびっくんさせます。
でも、ちんこにとって、この魔法は『次のステージ』を開け放つものでした。
「硬化!」
ちんこの掛け声とともに、ちんこは巨大化したまま、その全身をまるで鋼のように黒光りさせたのです。
こうして悪い魔法使いは硬化したちんこに吹き飛ばされ、どこかに飛んでいきました。まるでお空の星になるかのように。
残るのはやけに心音が激しい姫さまだけです。
「姫さま、お城に帰りましょう」
「わらわとは遊んでくれぬのか」
ふざけんなと唾を吐きながら、ちんこは姫さまをお城に連れて帰りました。
お城はお祝いムードで大騒ぎです。
ちんこは王座に並ぶ貴賓席に座らされ、その横にはお姫さまがとろんとしたまなざしで張り付いています。
「ちんこよ、望む褒美をとらせよう」
ここで王さま以外の家臣は、せめて今の王さまよりはちんこの方が有能であることを祈ります。
なぜなら、姫さまがちんこと結婚する気満々だから。ちんこに自身の借金をしょわせる下心が見え見えなのです。
でも、ちんこの言葉は皆が想像しえないものでした。
「褒賞はいりません。僕は池に帰ります」
こうしてちんこは、ほっと胸をなでおろす王さまと、悔しがる姫さまと、残念そうな家臣どもを後にし、池に戻りました。
「おかえりちんこ。よい旅でしたか」
「はい、女神さま。まずはこれを見てください」
ちんこは女神さまの前で巨大化し、さらに固く黒光りして見せました。
その姿に女神さまは思わず息を漏らしました。
「ちんこよ、頑張りましたね」
「はい、これからはぼくが女神さまをリードします」
「うふふ。それじゃ、今日は寝ましょう」
「はい、女神さま」
ふたりはいつものように、いつものベッドにもぐりこみました。
あん……
その後、ちんこの後をつけてきた王国臣民の手により、この池は『子宝の池』として、ちんこを模したご神体をお祭りする場所となりましたとさ。
めでたしめでたし。