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  私の話。 作者:
八十九編
 聞いた話。

 道路には何もない。誰かが何かを置いたりはしない。
 置いたとしても気がつけばそれはどこかに消えている。
 誰がそれを片付けているのだろう。

 ある夜、道路の真ん中を男が自転車で通っていると何かにひかれた。
 自転車は宙を舞い、男は体を地面に強く打ち付けた。息が止まるかのような激痛。
 虚ろな意識で辺りに首を這わす。しかし、後ろにも前にも車らしきものは一切なかった。
 ただ物が腐るような臭いと野太い笑い声だけが夜道に響いた。

 どういうことですか、と私が聞くと老婆は言った。
「百鬼夜行の群れにひかれただけだよ、その坊ちゃんは。子供のときに道の真ん中、通るなって言われなかったのかねえ」
 道の中心というのは人ではなく、神々やそれに類するものの通り道なのだという。
 老婆は鬼を見なかっただけ運が良かったといった。

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