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  私の話。 作者:
三編
 私の話。
 
 この町は結構おかしいのじゃないだろうか、と思う。元々山の中にあった町だったらしく神社やら坂が多い。入り組んだ道も多ければ何故こんな道が、というものもある。私はよく知らないが聞くところによるとそれは宗教的な意味合いがあるらしい。
 つまり人が通るための道ではない、ということだ。
 私の家もそういう(たぐい)のものなのかもしれない。
 
 凍えるような夜、私は留守番をしていた。
 その頃にはなんとあなしに、何かよく分からないものが家に居着いていることに気がついていた私は、恐怖を紛らわすためにテレビをつけ、パソコンに集中していた。
 猫が何もない壁を見つめたり、一人で何かを追いかけているのも慣れた。そういったものは下手に意識せず、無視を決め込むのが精神衛生上一番楽だった。
 そう学習していた私はそうやって極力闇を見ず、触れず、そして恐れた。
 しかし、どんなに意識しなくても、触れようとしなくてもトイレに行きたくなるもので、その為には暗い廊下を歩かなくてはならなかった。
 廊下、というのは玄関から続く短い通路で、ダイニングと私の部屋とトイレに行く為には必然的にその場所を通ざるを得なかった。単純な話、明かりを灯せば怖くはないのだが、無駄が嫌いだった私は変に意固地になり、電気を点けることを諦めて足早に廊下を抜けることにした。
 リヴィングからダイニングを通り、廊下に入り、直ぐ横のトイレに入る。
 何も起こらなかった。私は落ち着き、用を足す。そして手を洗い、ゆっくりと廊下を通りダイニングに入った。茶の間からバラエティ番組の笑う声が聞こえる。
 その時。
 目の端。
 目尻に。
 廊下の奥に。
 それを見た。
 髪が短く白い服の少女が暗闇の中で膝を丸めてうずくまっているのを。
 直ぐさに私は振り向き、廊下兼玄関の灯りをつけた。しかし、あるのは白い壁と靴。そして隅に灯油の入れた赤いポリタンク。
 ぞっとした。ただぞっとした。
 どこからか何かに見つめられているような視線に私は平常を装いながら、乾いた喉を水で潤した。
 あの時の刺すような冷水の痛みは今でも忘れられない。
 
 私は今でもそこに住んでいる。

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