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  私の話。 作者:
十九編
 聞いた話。

 夜というのは常に心細いものだ。夜は暗い。暗い闇の中というのは何が起ってもおかしくない。
 どこか別の世界に繋がっていても、おかしくはない。

 彼女は夜中、道を歩いていた。あと二時間もすれば日付が変わるような時間帯。
 そこは真っ直ぐ伸びた片側一斜線の道路が中央を走っていた。
 綺麗な道、なのだが街灯の数が非常に少ない。昼間とは違い、夜は音がなかった。人通りもなければ、車通りも極端に少ない。
 あるのは彼女のコンクリートを歩く音とポツポツと生えるようにして置かれた頼りない街灯。
 冷たい風が吹きつけ、彼女は身震いした。
 周りの家々は明かりを灯してはいるが圧倒的に暗闇の方が色が濃く、むしろそれは鬼火のように見えて不気味だった。
 彼女は道を歩いていると奇妙なことに気がついた。
 足音が一つ多い。
 はっと思い、彼女は後ろを振り向く。しかし何もいない。赤い自販機がぶうんと音を立てて白い光りを放つのみ。
 そうだ、こんな時間に普通、人が歩いているわけがない。
 歩いていたとしてもすぐ気がつくし、その自信もある。
 きっと音は壁か何かに反響してそう聞こえたのだろう。
 そう彼女は納得し、歩く。しかし、不気味な音は彼女の足音に合わせるようにコツコツと音を刻む。
「きっと反響音」
 そう言い聞かす。だが何故か振り向くことはできなかった。
 うん、テンポよく私の足音に合わせているじゃない。
 反響音の印じゃない。
 そう思うと少し心が軽くなった気がした。ただ今は早く家につきたいと思う。
 彼女は高鳴る胸の鼓動を落ち着けながら、前へと進む。
 しかし、今度は音がテンポをずらし始めた。足音はじわじわと距離をつめてくる。
 彼女はその場で叫びたくなった。
 しかし、止まることも振り返ることも許されない。
 それを選択した瞬間、何かとんでもないことが起るような気がしたからだ。
 少し離れた場所、病院の前に置かれたバス停の表示板がオレンジの光りを放った。
 しめたと彼女は思う。バス停前に来た辺りで丁度バスもやってきた。
 彼女は駆け込むようにしてバスに乗り込み、ほっと一息ついた。
 バスは走り出す。
 安心感からか彼女は窓の外を見た。
 バスは既に走っているのだ。何が来ても、もう恐ろしくはない。
 言葉を失った。
「…………っ!」
 目が黒く塗りつぶされた白装束の少女が(よだれ)をだらしなく垂らしながら彼女の窓の外を走っていた。
 それはバスのスピードに追いつけず距離を離され、次第に見えなくなった。

 夜の日のその道はどんなことがあろうと二度と歩きたくないと彼女は言った。

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