仮面ライダー拳-フィスト-(1/15)縦書き表示RDF


長いです。一話につき前編、中編、後編に分けてます。
仮面ライダー拳-フィスト-
作:宮座頭数騎



第一話 -前編-


 あなたは、仮面ライダーと言う都市伝説を知ってますか?



 知ってる人は知っている。
 仮面ライダー。素顔が楕円の複眼をした仮面で覆われ、腰にベルトを巻き、風のようにバイクに乗って何処からともなく現れ、悪を打ち倒しては風のように去る。



 そう、正義のヒーロー



 仮面ライダー!






 満月が闇を照らす夜のニューヨーク、ブロードウェイ。
 ビルの窓が割られギザギザの破片を残し、店の看板などが崩れ落ちる中、車は爆発して燃え上がり、電柱の配線は切れ爛れ、切れ端から火花を散らす。ひび割れた道路には、沢山の人が悲鳴をあげて逃げ回る。
「た、助けてくれ〜!?」
「キシャー!」
「うわぁぁぁぁ!?」

 逃げ回る人々に、得体の知れない蟻のような怪物の群れが、容赦なく恐怖で顔をくしゃくしゃに歪めた人々に襲い掛かる。
 襲われた人は蟻の怪物に噛み付かれ頭から徐々にかみ砕かれ、そして食われて行く。
 蟻の怪物は群れをなして車を破壊したり、店を壊したりしながら、まるで傍若無人が如く暴れまわり人々を襲う。
「ハァ……、ハァ」
 カシャ!カシャ!
 そんな地獄絵図のような空間を、一人の少女がカメラを抱え、燃え上がるブロードウェイの道路を走りながら怪物の写真を撮る。
 走る彼女の綺麗なウェーブの、肩まで掛かりそうな茶髪が、しなやかに揺れ動く。
 少女の身長は160センチくらいで、肌からして白人。顔付きは流れるように吊り上がった大きな蒼い瞳の眼をしていて、唇は薄いピンク色。目鼻立ちの整った少し幼顔の少女だった。
 カメラを必死に撮り続ける中、怪物の一体が一瞬だけ闇を照らしたカメラのフラッシュの光に反応して、キョロキョロと辺りを見回す。次にカメラのシャッター音を聞き取り、音の方向にすぐ視線を向ける。そして、その方向にいるカメラで自分を撮る少女に気付いた。
 怪物は紅い複眼を凝らし、獲物を見詰める。喜ばしい事なのか、咆哮とは言い難い大きく嫌な奇声を発して少女に襲い掛かる。
「ッ!」
 蟻の怪物が両手を上に挙げて、喰らってやる、と言わんばかりに襲い来る。
 それに驚き、少女は焦って悲鳴を吸い込むように飲み込む。そして少女は、怪物からすぐさま逃げ出し、全力で疾走する。だが、少女を追い掛ける怪物はとても足が速く、しかも一体から、徐々に周りから仲間を集め増やし、複数で追い掛けてくる。そして徐々に、少女に追い付こうとしていた。
「ハァ、ハァ、あっ!」
 少女は壊れた車の部品につまずき、勢いよく前に転んだ。
「痛―― あぁ!」
 痛みで顔を歪めながらも急いで上体を起こし、少女は後ろを振り向く、すると、目の前には怪物達がよだれを垂らして、少女を見下ろし立ち尽くしていた。
「シュゥォォ」
 まるで、追い詰めた、と言う様に奇声を発しながら蟻の怪物達は少女を囲んで逃がさないようにする。
「シュオオオ」
 そして、皆で仲良く食らおう、と話してるような素振りを見せた後、ゆっくり近づいてくる。少女はすぐに立ち上がろうとしたが、
「痛っ!」
 辛そうに顔を顰め、躓いた方の足首に手を添える。足を挫いたらしく、痛みで立てない状態になっていた。
「あ、あぁ……」
 少女は絶望に染まった顔で、小さく呻くような声を出す。
 怪物達はよだれを垂らしながら、大きな顎を動かし口を開く。絶体絶命と感じた少女は、ああ、もうだめだ。自分は骨の髄まで食われてしまうんだ。そう思って死を覚悟し、瞼を深く閉じた。だが、少女が怪物達の晩御飯になる事はなかった。
 ズガガガガガガガガガガ!
「ギシャアアアァー!」
 突如鳴り響くガトリングガンの銃声、そして怪物の断末魔の叫びと同時に、怪物達の上半身がバラバラに吹き飛ぶ。
 突然の発砲音で少女はハッ、と驚いて大きく目を開き、怪物達の死体を見た後、銃声が鳴った方向に急いで顔を振り向けた。
 するとそこに、パトカーのサイレンを鳴らした。銃口から細い煙を吐き出してるガトリングガンを両側に取り付けた、白いバイクが止まっていた。
 その白いバイクには、黒色の、スワットの装備とは全く違う機械的なアーマー、腰のベルト中央に紅い弾丸が装填済みの四角いマガジン。そして、防弾ヘルメットやガスマスクとは違った。黄色に光る楕円系の複眼に、頭部の額には、ギリシャ文字γ(ガンマ)を思わせるカブトムシのような一角の角がある変わった仮面で覆う、ロボットの様なのが跨っていた。
 少女はこのロボットのようなそれを見てこう口にする。
「仮面、ライダー?」
 仮面ライダーと呼ばれたそれは、軽く頷いた。
そして、バイクから降りて、両側に装備してあるガトリングガンの片方を取り外して、呆然と自分を見てる少女に向かって叫ぶ。
「伏せろ!」
「え、あっ、えと!」
 少女は、突然言われてあわてふためき混乱しつつも、どうにか言われた通り伏せる。
 仮面ライダーは、数本のロングバレルが重なった、先端のドーナツ状の円から顔を出してる銃口を、少女の方角に捕捉し構え、次に人差し指でトリガーを引いた。
 ガトリングガンのバレルが回転し始め、銃口が火を吹き無数の発砲音が鳴り響く。しばらくして銃声が鳴り終わった後、少女は起き上がり、周りを見回すと、蟻の怪物達がバラバラに原形を留めない状態で吹き飛び散ってた。
 仮面ライダーは少女に駆け寄りながら安否を確認する。
「大丈夫か?」
 そう言い仮面ライダーは少女に手を差し延べた。
「うん、大丈夫、ありがとう」
 そう微笑み、少女は仮面ライダーの手を強く握り立ち上がる。少女は立ち上がり服についた軽い汚れを叩き落とす。
「ここは危険だ。俺が来た道にはまだインフェルノはいない、そこを通るんだ」
 仮面ライダーは自分が来た道を指さす。何気なく少女は頷いた。
 少し沈黙して、呆然としてた少女はハッ、として何かを思い当たり、仮面ライダーの横から険しい顔つきで尋ねる。
「ねぇ、インフェルノってあの怪物の事?」
「あぁ、そうだ」
 仮面ライダーは肯定する。それを聞いた少女は好奇心に満ちた笑顔で、続けて質問を仕掛ける。
「あなたは、仮面ライダーなのよね、インフェルノって何なの? それにあの白いバイク、あなたは警察なの?」
「……君、まさかジャーナリストか?」
 首に下げたカメラを手に持ち、わくわくした様子で質問する少女に、仮面ライダーは訝るような声で尋ねた。
 そうよ、と少女は頷き、
「お願い、私の質問に答えてよ、取材したいの!」
 お構いなしに頼み込みながらも、少女は仮面ライダーをカメラで撮ろうとしたが、仮面ライダーはすぐさま少女のカメラに手を伸ばし、無理矢理に取り上げてカメラのフィルムを取り外した。
「ちょっと待ってよ、何するのよ、返して!」
 慌てて取り返そうとする少女に、仮面ライダーはカメラだけを少女に投げ渡し返す。
「すまないが、機密事項だ。悪いが、これは没収する。だが、後で新しいのを返すから、それでいいだろ?」
 そう真剣な声で言うと、仮面ライダーはガトリングガンをバイクに取り付けて、次にバイクに跨りエンジンをかける。
「いいか、今回見たものは、忘れるんだ。……と言いたいところだが、無理だろうな。だが、仮面ライダーやインフェルノについてはあまり公にしたくない、だからこのフイルムは、こちらで処分させてもらう」
 少女に顔を向けてそう話すと、仮面ライダーを乗せたバイクは走りだした。
「ちょっと!? 待ってよ、ねぇ!」
 怪訝そうな少女の引き止めようと叫ぶ声を無視して、仮面ライダーは、炎の立ち込める奥へと走り去る。
 仮面ライダーが見えなくなったあと、少女はフィルムを取り上げられた悔しさの怒りからか、壊れた車を睨んで、バンパーを蹴飛ばす。
 仮面ライダーが避難するよう指さした、炎が燃え広がっていない、しかし人気の無い道を、少女はスタスタと速足で歩き、バス停前の近くのベンチ歩みより腰掛ける。
 少女は深く溜息をついたあと、
「何よあれ、ムカつく、せっかくのスクープが台なしよ!」
 と苛々する気持ちを吐き出すように愚痴る。そして少女は、ハンカチで汚れた顔をふきながら、仮面ライダーがバイクで向かった方向をただ呆然と眺める。しかし、少女の呆然とした顔つきはすぐにキリッ、とした真剣な顔つきへと変わった。
「……諦めないから、私は、兄さんを見つけ出すまで、仮面ライダーと、そのインフェルノってのを追い掛け続ける!」
 眺める少女の眼は真剣そのもの、決意に満ちた眼だった。
 眺めるのを止め、少女が腰掛けてたベンチから立ち上がったその時、思いがけない事が起きた。
「キシャーー!」
 少女のいるベンチから、数メートル先の近くの店の窓ガラスを突き破って、蟷螂のような形をした怪物、インフェルノは現れた。
 インフェルノは辺りを見回し、そして少女と目が合う。インフェルノと目が合った少女は戦慄した。
「ッ! 何で、こんな所に、しかもさっきのと違う!?」
 蟷螂のインフェルノは唸り声らしき奇声を発して、大きな鎌の形をした手を振り回し、少女に切り掛った。
「キャッ!?」
 少女はギリギリで鎌を咄嗟に屈んで避ける。少女に当らなかった鎌は、近くの電柱を斜めに切り裂く、そして電柱が崩れ、少女に倒れてくる。
「い、イヤァァァ!?」
 倒れてくる電柱に、しゃがんで頭を低くし抱え込んで少女は悲鳴をあげた。
 地面に倒れた電柱の、岩と岩がぶつかり破砕するような音が、煩く鳴り響いた。
 無惨にも電柱は少女にそのまま倒れて、少女を押し潰したかに見えた。
 だが――
 電柱が倒れて少女を押し潰す刹那、何者かが少女を素早く抱き上げて間一髪助け出す。
「――大丈夫?」
 男の声がして、少女は深く閉じていた瞼を開く、すると少女は驚いてキョロキョロと辺りを見渡し、自分がいた倒れた電柱の位置から、少し離れた場所にいた事に気付く。
「あ、あれ、私、潰されてない?」
 異変に気付いた少女は、自分を持ち上げて助けてくれた人に目を見張る。
 少女を助けてくれた人は、耳を隠すくらいの長めの金髪、そして見透かすように澄んだ碧い瞳の、誰が見ても女と見間違うような顔の美少年だった。
「君、大丈夫? どこもケガしてない?」
 抱き上げてる少女を見下ろし、少年は気遣うように、もう一度少女の安否を確認する。少女は頬を赤く染め戸惑いながら頷いた。
「あ、うん」
 少年は少女をゆっくり降ろして、少女の前に立ちインフェルノを睨みつける。そして、インフェルノに向かってきびきびと歩きだす。
 インフェルノは不適な様子で自分に近づく少年を切り裂こうと、鎌を振り降ろした。
「ハッ!」
 少年は鎌を軽々と横に避けて、インフェルノの腹に蹴りを入れた。
「ギギョ!」
 インフェルノは怯み、腹を押えて後退る。
「君、早く逃げて!」
 少年は少女の方を振り向いて叫ぶ。
「え、うん!」
 唖然と見ていた少女は少年の叫びで我に返って頷き、逃げた。
 インフェルノは少女を追い掛けようとしたが、少年が前に立ち塞がる。
「お前の相手は、この俺だろ!」
 そうインフェルノを指差して少年が強い口調で言うと、少年の腰にベルトが光りと共に突然現れる。
 少年は手を強く握り拳をつくると、両手の拳をぶつけ合い、同時に力強く叫ぶ。
「変身!」
 少年の腰に巻き付いてるベルトが光り輝く、インフェルノは、光りが強いせいで、眩しそうに顔を覆い隠す。
 少女も遠くから少年を見てたが、光りが眩しく目をつぶった。
「一体、何が……、あ、ああ!」
 光りが消えて眩しくなくなったので少年を見た少女は、驚愕の表情で自分のその眼に写る“存在”を疑った。
 光りが消えて少年が立っていた所に、さっきの仮面ライダーと違う別の仮面ライダーが立っていた。
「か、仮面ライダー!」
 口に手を添えて驚き、少女は叫んだ。そしてまじまじと珍しい物を見るような眼で仮面ライダーを見据える。
 その仮面ライダーは少女が見た、さっきのロボットのような姿とはまるで違い、アーマーを身にまとった体ではなく、生き物のように真っ白い皮膚の、岩のようにゴツゴツした感じで、筋骨隆々たるモデル体型に近い体つき。
 頭には鳥の翼のような純白の羽がはえてる。
 額には蛾の触角みたいな触角がはえている。そして楕円系の、しかしキリッ、とした感じの紅い複眼の目。額の中心と胸の中心に埋め込まれた真紅に輝く玉。 夜にも関わらず存在感溢れるその姿はまるで、天使のようだった。
「フィィスウゥトオォォ!」
 インフェルノは、まるで憎い者を見るような感じで身構え、その仮面ライダーを、忌々しげにフィストと呼んだ。
「またそれか、いい加減、飽きるよ、毎回怪物と会うたんびにそれだもんな」
 フィストはうんざりした様子で、首を軽く横に振りインフェルノを睨むように見る。
「まぁ、別に何でもいいか、こいよ、ぶっ飛ばしてやる!」
 ボキボキと腕を振り回して間接から骨の鳴る音を鳴らしてから、フィストはインフェルノに中指を立てて挑発する。
 それを見たインフェルノは、怒り狂った様子でフィスト目掛け突撃する。
「シュアアアア!」
 怒りの奇声をあげて、インフェルノは乱暴に鎌をフィストに振り回す。
 フィストは素早くボクシングのファイトスタイルに構え、インフェルノの鎌を軽々と避けて後ろに回り込み裏拳を食らわす。
「ゲジュ!」
 後頭部を押えて距離を取ろうとしたインフェルノに、一気に懐まで踏み込み距離を詰めて、顎に目掛けてフィストは鋭いアッパーカットを繰り出す。
 インフェルノの顎にフィストの拳が直撃して、インフェルノは酔う様によろける。
「遅すぎる」
 フィストは余裕そうに構えをといて、拳をパキパキ鳴らす。
「今度は、こっちからいくぞ」
 フィストは手を軽くスナップさせた後、一歩でインフェルノの前まで距離を詰め顔面にジャブを放つ。
 ムチで叩くような音が鳴ると同時にインフェルノの頭が小刻みに揺れた。
 怯み顔を押えながら後退るインフェルノにフィストは、さらに追い打ちをかける。
「オラァ!」
 右ストレートがインフェルノの腹部に入る。
「グギョ!」
 うずくまるようにインフェルノは後退るが、
「オラオラオラオラ!」
 フィストはすぐにまた距離を詰めて、大振りのパンチラッシュを喰らわせる。
「ゲ、ゲギ!?」
 さらにインフェルノは怯み後退る。お腹を押えてフラフラの状態のインフェルノに、
「オラァ!」
 フィストは一回転した後、回転の遠心力に身をまかせた強力な左ストレートを放つ。
「ウギョギャー!」
 顔面に直撃したインフェルノはフィストから数メートル先まで殴り飛ばされる。
「ギギャッ!」
 地面に落ち転がり、インフェルノはうめき声をあげながら何とか立ち上がった。
 だが――
 その時、フィストの頭の翼が大きく展開し、額の触角が細く鋭い角へ変わる。
 額の中心に埋め込まれた真紅の玉が強い輝きを放つ。そして、フィストの拳には光りが集まり拳が輝きだす。
「ウオオオォォォ!!」
 フィストは怪物に突撃しながら雄叫びをあげる。
「ハァァァァ!」
 フィストは光りの拳を怪物の腹部に思いっきりぶち込む。光の波紋が広がり、次の瞬間、膨張した力が衝撃波となり、フィストの拳から疾風のように一気に吹き出ると同時に、インフェルノが大きく吹っ飛んだ。
フィストの必殺技、ストライクスマッシュが炸裂する。
「グゲギャアアァァー!」
 吹き飛ばされた怪物は断末魔の叫びとともに、赤い炎に包まれ地面に落ちると同時に爆発する。
 しばらくフィストは爆発して炎上してる炎が消えるまで立ち詰め。
 炎が消えた後、フィストは少年の姿に戻る。そして少年が近くに止めてあった自分のバイクに跨り、エンジンかけてその場を後にしようとしたその瞬間、
「ちょっと待って!」
 急いで駆け寄った少女が少年の前に立ち塞がり、一度唾を飲み込んで少年に尋ねた。
「あなたも仮面ライダーなの?」
 少年は少女のその質問を聞いて、ポカンとしたほうけた表情をする。
「仮面ライダー、何それ?」
 少年が顰めた顔で、首を傾げる。少女はムッ、とした顔付きでそんな少年を見て、お互いの顔がつきそうくらい、顔を近付けて怒鳴り散らす。
「とぼけないで、あなたが変身したさっきの姿の事よ、あれ仮面ライダーでしょ!」
 煩くて顔を後ろに引いた少年は、その言葉に驚いた表情をして、
「君、俺のあの姿のことを知ってるの? 教えてくれ! 俺は何であの姿になれるんだ? それに仮面ライダーって何だ。怪物が俺を見て言うフィストって何なんだ?」
 今度は少年が顔を近付けて少女の肩に手を載せて揺さ振る。
 必死な少年のせがむような質問責めと真剣な眼差しに、少女は戸惑う。
「え……ち、ちょっと待って! あなた、自分の変身した姿の事、何もわかってないの?」
 少年はゆっくりと頷いた。それを見た少女は残念そうに俯き、深い溜息をついた。
「はぁ、つまりあなたからは、何も聞き出せないわけ、か……」
 肩に載せてる少年の手を払い、少年から背けて渋った顔で少女は呟いた。そんな少女を見て少年は、少し怪訝そうな声で少女に聞く。
「ん、どういうこと。君は、俺のこの姿のことを知ってるんじゃ……」
「私が知ってるのは、あなたのさっき、変身した姿が仮面ライダーって言うのだけで、怪物がフィストって言うのは私にも分からないわ。てゆーか、私もそれ知りたいし!」
 口を窄めて外方向けた少女がはき捨てるようにそう言うと、少年は残念そうな顔をした。
「そっか……、でも仮面ライダーって言うのか、俺の変身した姿のこと……」
 両腕を組んで考え事をしている少年に、少女は気になって質問する。
「あなた、いつからあの姿になったの、もしかして今さっき?」
 その質問に少年は、少し躊躇った様子で頬を掻きながら答える。
「違うよ、俺があの姿になったのは、三年前、14歳の時だ」
 少年の意外な答えに少女は驚いた。
 少年がそんな子供の時に仮面ライダーになってた事に。少女はそんな少年を、唖然と見つめる。
 そんな少女を見て、少年は溜め息をついたあと、
「何でもいいけど、俺もう行くよ、とりあえずありがとう、君のおかげで少し、あの姿の事がわかったよ、じゃあね」
「あっ!」
 少年は小さく微笑んでヘルメットをかぶり、少女を退かしてバイクで走り去る。
 少女は呆然と突っ立ったまま、バイクのエンジン音と共に夜の闇に消えていく少年の姿を見ていた。
 しばらく呆然としてると、
「……あぁ! 兄さんの事を聞くの忘れてた! あぁ、もしかしたら、何か知ってたかもしれなかったのに、……はぁ」
 少女は残念がりながら俯き、溜息をついた。そして愚痴をこぼしながら、とぼとぼと、少年とは別の方向を少女は歩きだす。





 少女が仮面ライダーフィストと出会っていた頃、ブロードウェイの交差点で、黒色のアーマーの仮面ライダーがガトリングガンを片手に持ち、もう片方の手で、ガトリングガンの標準を敵に定めて、蟻のインフェルノ達を蹴散らして行くのだが、インフェルノの内の一体が、店の屋上から跳び降りて、仮面ライダーの背中を引っ掻いた。
 バチィン! と火花を散らせてアーマーを引っ掻く音が鳴り響く。
「ぐわっ!」
 後ろから不意を突いた攻撃をうけて、仮面ライダーは怯んでしまう、その隙を突いて、仮面ライダーを複数のインフェルノ達が、引っ掻く攻撃を踊るように連携して順番に繰り出す。
 インフェルノ達が引っ掻くたんびに、アーマーは火花を散らす。踊らされるようにふらついた仮面ライダーは、体勢を直しすぐにガトリングガンで蹴散らそうとしたが、インフェルノの一体がガトリングガンにしがみつき、ガトリングガンを撃たせないようにする。
「糞ったれ撃たせろ! この、離れろ!」
 仮面ライダーが蟻のインフェルノをどかそうともがいたが、そうしてる隙を突いて仲間のインフェルノが攻撃する。
「ぐおわぁぁッ!」
 この一撃でガトリングガンを落としてしまう。仮面ライダーは仕方なく格闘戦に入った。
「フンッ! ゥオラッ!」
 仮面ライダーは何とか二体、三体くらい殴り倒したが、それでも蟻のインフェルノ達は連携がとれて素早い。そして、この仮面ライダーはアーマーが重いのか、攻撃は強いが動きが遅く、大振りのパンチとキックを放つが、全く当たらない、インフェルノ達は徐々に仮面ライダーを追い詰めていく。そして、仮面ライダーは不意を突かれインフェルノの大振りの引っ掻き攻撃を喰らってしまう。
「グアァァァッ!」
 悲鳴と共に仮面ライダーは吹っ飛ばれ、壁に叩き付けられ地面に落ちた。
 地面に落ちる時、壁に叩き付けられた衝撃で仮面ライダーの腰からベルト外れていた。
 ベルトが無い仮面ライダーは光りに包まれる。
「ぐう、しまった!?」
 光りが消えると仮面ライダーだったそれが、スキンヘッドの中年の黒人の男に変わっていた。
 中年の黒人は急いでベルトを拾おうと向かったが、
「シャァァァ!」
 インフェルノが前から現れて太い腕で殴り掛かる。
「ぐおぁッ!」
 立ち塞がったインフェルノに、男は吹っ飛ばれて壊れた車のドアに叩き付けられた。
 苦痛で顔を歪ませて男が何とかフラフラと立ち上がり、ベルトを拾おうと向かうが、インフェルノはそれを阻止するかのように男に攻撃する。
 男は紙一重でインフェルノの攻撃を避け続けるが、だんだん息が上がってきて徐々に追い詰められる。
「畜生、このままじゃ、ベルトを拾う前にくたばっちまう!」
 男はこめかみから汗を垂れ流し、焦りながら弱音をはいた。
「キシャアアアア!」
「く、ちきしょう!」
 インフェルノ達は男を囲む、絶体絶命かと思われたその時、銃声は鳴った。
「そこまでよ……、インフェルノ!」
 インフェルノ達は銃声と声がした方向を振り向く、そこには壊れた車の上に拳銃を空に向けて立ち詰める、シャギーの入った金髪の、碧い瞳の美人の女性の姿がそこにあった。
「お、お前……、ナイスタイミングだなオイ!」
 驚いた男の顔は、絶望から希望の表情に変わった。
 女は男の方を見てニッコリ微笑む。
「当たり前でしょ、私はこういう時のためにいるんだから!」
 女は落ちていたベルトを、腰に巻いていた。
 ベルトに付いてるマガジンらしき物を取り外し、弾丸と思える弾を装填して天にそのマガジンを翳して叫ぶ。
「変身!」
 叫んだ後、マガジンをベルトにはめ込んだ。
『CHANGE MASKED FORM!』
 電子音と共に女の体が真紅の光りに包まれる。胸部、腕、肩、脚部、そして頭部と言う順に体がアーマーに包まれていく、そして女の姿がさっきの男の仮面ライダーより細めの仮面ライダーに変わっていた。
「仮面ライダーGUN、此処に参上! なんちゃってね!」
 細めと言ってもそれは、さっきの仮面ライダーの男は体型が大きく太いせいであった。
 女の方は女性である分、さらにスレンダーでスタイルがよかったせいかさっきのライダーより小さく細めに見えてしまう。

「アヤ、ふざけないで真面目にやれ!」
 男は仮面ライダーGUNに怒鳴ると、GUNはハイハイと余裕そうに軽く頷く。
「じゃあ、いくわよ!」
 そう言うとGUNは腰のベルトのマガジンを取り外し、右腕のリボルバーの形をしたパーツのカートリッジにはめ込んだ。
『BULLET CHARGE!』
 電子音が鳴る。
 インフェルノ達は仮面ライダーに一斉に襲い掛かる。
 先頭の一体が真っ先に仮面ライダーを切り裂こうと、鋭く太い爪を振り落とす。
 刹那、仮面ライダーは素早く避け座間に左拳で殴り怯ませて、すぐさまインフェルノの腹部に右ストレートを入れる。
「ハァッ!」
「ゲジュッ!」
 轟音と共に拳の当たった所で爆発が起きた。
 断末魔の悲鳴をあげることなくインフェルノの上半身が跡形もなく吹き飛ぶ。しかし、それを見てもインフェルノ達は動きを止めず突撃する。
 身構えたGUNは、インフェルノの攻撃を素早く横に避けたり、手ではたくように切り裂く攻撃を受け流したりしながらも、一体、また一体とインフェルノ達の腹部に右ストレートをぶち込んでいく、GUNに襲い掛かったインフェルノ達は皆、最初のインフェルノと同じように、上半身を吹き飛ばされ絶命する。
『LOAD! LOAD!』
 カートリッジに差し込まれたマガジンが電子音をしつこく鳴らす。
 GUNはカートリッジからマガジンを取り外してベルトに戻す。
「ふぅ、ダニエル、大丈夫?」
 GUNは、男をダニエルと呼び、怪我はないか問う、ダニエルは大丈夫と言い頷いた。
 辺りを見回してGUNはダニエルに聞いた。
「ねぇ、他のインフェルノは、もうあなたが倒したの?」
 その質問に、眉間に皺を寄せてダニエルは首を横に振った。
「いや、多分なんだが、このインフェルノは増えてる」
 GUNは驚いた。少し間をとって、GUNがまた聞いた。
「どういう事、増えてるって?」
 ダニエルは渋った顔をして答える。
「さっきから、全く減ってないんだよ。何百体も倒したが、全然減ってない……。もしかしたら、何処かにこのインフェルノの親玉がいるかもしれん!」
 ダニエルがそう言うと、それに呼応するかの如く、近くのビルを壊して大きな蟻のインフェルノが現れた。
「あれ、かしら?」
 唖然とするダニエルに、GUNは緊張感の全く無い軽い口調で尋ねた。
 そう言う間に、大きな蟻のインフェルノは尻からタマゴを生み出す。タマゴからはインフェルノが奇声を発して生まれてきた。
「女王蟻のインフェルノか、さしずめアントクイーンインフェルノと言った所か?」
 GUNはヤレヤレと言った様子で、インフェルノを眺めるダニエルを見て言う。
「そんなの、どうでもいいわよ。面倒だから、さっさと済ませちゃおっと」
 余裕そうに言うGUN、
「ん、お前! まさか、おい待て!」
 ダニエルは何か察し引きつった顔で必死にGUNを制止させようとする。
 それを無視するGUNは、不敵な様子で女王蟻インフェルノを見据えながら、ベルトのマガジンを取り外し、屈んで足の踵にある差し込み口にマガジンを差し込む。
「コード入力!」
 立ち上がったGUNはベルトの横に付いてる電子手帳らしき機械のフタを開き番号を入れる。
「おい、待てと言ってるだろ、おい!」
「ライダーキック!」
『METEO BULLET!』
 GUNは電子音が鳴った後、はたくようにフタを閉じて女王蟻のインフェルノ目がけて駆け出す。
 重そうなアーマーとは裏腹にGUNは風を切るような速さで大地を駆け抜ける。
「タアァッ!」
 勢いづいたGUNは、女王蟻の数メートル手前で空高く跳躍する。そして、空中で何回か回転した後、飛び蹴りの体制に入り急降下する。
 途中、踵の差し込み口のマガジンから紅い光りが輝き放ち、GUNを包む、そして女王蟻のインフェルノに目掛けてそのまま落ちて行く、まるで紅い隕石のように。
「ッ! ギュガアア!」
 女王蟻のインフェルノを弾丸の如く貫き、そのまま地面に突撃するように、仮面ライダーGUNは着地、その後に起こる衝撃波がタマゴから生まれたインフェルノをまとめて吹き飛ばす。
「ギエェェエェ!」
 女王蟻のインフェルノは、ぽっかりと開いた腹部に手を当てて、もがき苦しみ、炎に包まれながら絶命した。
 女王蟻も含め、全てのインフェルノの殲滅を頭部のレーダーで確認した後、仮面ライダーは変身を解く、紅い光りに包まれ消えた後、女の姿、アヤに戻る。
「ふぅ、終わった終わったっとぉ」
 ベルトを外しながらアヤは上着をパタパタと動かし息抜きをする。それを見てたダニエルが剣幕をはった顔でアヤに近づいてげんこつを喰らわせた後、耳を引っ張り耳元で怒鳴る。
「アヤ! 何考えてんだお前は! メテオ ブリットは容易に使うなと前に言っただろうが!」
「だ、ダニエル……、うるさいよ、耳元で怒鳴らないで」
 アヤは頭と、耳を押さえながら、涙目でダニエルに訴える。そんなダニエルは鬼のような形相でアヤを見て怒鳴る。
「黙れ、おかげで俺はあと少しで巻き添えをくらう所だったんだぞ!」
 ダニエルの形相にアヤは唾を飲み込んで後ろにたじろぐ。
「だ、だって、あんなデカブツじゃあ仕方ないじゃない。メテオブリットぐらいよ、あんなの倒せるの、それに、ザコもまとめて吹き飛ばしたから結果オーライでしょ!」
 そう言った後にアヤはニッコリ微笑んだ。呆れたダニエルは溜息をついて、次に両腕を組んで首を傾げ、アヤに対し訝しげな顔をする。
「全く、お前がマスクドライダースーツを使うとろくなめにあわん!」
 アヤがそれを聞いてカチンときたのか、怒ってしかめた顔をして反論する。
「あ、なによそれ! 私が来なかったらダニエルはインフェルノに食われたんだよ。普通は感謝するもんでしょ!」
「なにぃー。じゃあお前は――」
 それからアヤとダニエルは、いろいろと言い合ってる内に口喧嘩になり、仲間の警察が現場に駆け付けるまで言い争っていた。

 ブロードウェイの交差点は戦争の後のように、所々で煙を上げていた。

 夜の星空高くに煙が舞い上がる中、アヤとダニエルの声が煩く響き渡った。


感想、評価、指摘、助言お待ちしております











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