死んでも死亡フラグを回避する男
数々の短編7
「死にたくない……」
死亡シーンを見すぎたせいか心底そう思った。暇にまかせてB級パニック映画ばかり見ていたのだが……人が死にすぎだろ……。簡単に死んでいく、人、人、人……。俺もこうなってしまうのか?
そうだ! この映画の教訓を生かして、生き残ってやろう。
――これはパニック映画の統計を使った。死にたくない男の物語である――
*作中の(○○人)は死者数、(○○%)は死亡率を表しています。
「俺は死んでも生き残る」
改めて、そう誓った。さあ、物語を始めようか。
まず、俺は男か女か?
死者数は男が多い(203人)女がいいのか? しかし、これは登場人物に男が多いからだ。率で考えると、どっちも変わらない。それなら男で問題ないな。あやうく性転換手術を受けるところだった。
次に名前だ。
名前による死亡率は変わらない。混同しないように、よくある名前の人物は少ないからな。名前は気にしなくていい。それならロブソンと名乗っておこう。
家族。
家族がいると死にやすいイメージがある。死ぬ前に家族に電話して――「愛してるよ」――と死んでしまうパターンだ。
ところが、独り身のほうが死にやすいのだ(180人)死亡前提の適当な奴には、家族が居ないからだろう。じゃあ、家族は居たほうが良い。早急に結婚すべきだな。しかしだ……。
「俺もうすぐ結婚するんだ」
こういう奴は本当に死にやすい(75%)イメージ通り、かなり危険なのだ。つまり生き延びるために家族は必要だが、結婚しようとすると死にやすくなる。
これはジレンマだな。結婚するなら、婚約期間を空けずに即結婚がいいだろう。出会った、その日に式をあげろ! とりあえず俺は独身だから相手を探そう。
俺の職業は?
職業設定が出てこない奴を無職とカウントするとだ。無職が圧倒的に死にやすくなってしまう(105人)映画の世界でも無職にはつらいのか……。まあ、職業不明=無職は暴論だな。
次に多いのは、やはり警察官だ。本当に死にやすい。数も多い(34人)が死亡率も高い(75%)警察官だけは絶対になるな。既に警官なら辞表を出すべきだが、元警官も死にやすい(60%)あきらめろ!
一番いいのはコックだ。一部で最強職の噂があるコックだが、本当に死亡率が低い(10%)俺はコックになるぞ。
さて、これからどうするか?
実は、自宅で死ぬやつは多い(21人)家にいるのは危険だ。早く出かけよう。ニートの諸君、家は決して安全じゃないぞ。
どこへ向かおうか?
その前に、まず乗り物に乗るのは止めたほうがいい。車(18人)電車(19人)バス(15人)船(27人)全て事故がおきる。歩いて向かうか。
行き先はどうするか?
映画館(12人)コンサート会場(15人)駅(26人)学校(22人)人が多い場所は避けるべきだ。ただ人気のない荒野は駄目だ(18人)ほどほどに人がいて静かなところがいいな。
お腹がすいたな。食事にしよう。
待て! ハンバーガーショップは危険だ(13人)ファミリーレストランも怖い(9人)他はどこも変わらないから、中華料理にしておこう。
そろそろパニックが起きる頃だが、俺が巻き込まれるパニックは?
ゾンビパニックは絶対に嫌だ(76人)超生物パニックもヤバイ(53人)ふざけた映画が多いせいか、意外と少ないエイリアンパニックにしよう(12人)まってろよエイリアンども!
ヒロインは必要か?
実は、ヒロインは死にやすい(15人)主人公よりも死にやすい(7人)弾よけ的な意味で登場してもらおう。
俺と彼女の関係は……。
さっきも言ったが結婚してるほうが生存率が高い。さらに子供がいると跳ね上がる。お互いのためにさっさとデキ婚だな。
まとめると――
男でロブソンで独身の俺はコックに憧れつつ自宅を脱出し人が少なくも多くもない場所に歩いて向かい中華料理を食べてヒロインとデキ婚してエイリアンに立ち向かう。
完璧だ! これで死亡フラグは全て避けれた。
――やったぜ! ざまあみろエイリアン。仲間が何人か死んだが、ヒロインと無事デキ婚して子供も生まれた。ついでにコックにもなった。めでたしめでたしだ。
よしエンディングだ。エンディングの尺が長いと死にやすい。終わったと安心したところで実は……となるのだ。エンディングは、さっさと終わらせよう。
――おしまい――
エンドが出た後に死ぬパータンもある。まだ油断するな。本当やめろよ。
――本当におしまい――
――スタッフ――
ロブソン ヒロイン エイリアン 死んだ仲間
エンドロールのあとも油――
To be continued……
生き残った人物が、次回作であっさり死ぬのも多い……。