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 お正月はとっくに過ぎてますが、まだ一月という事で許してください。
お正月スペシャル
「明けまちて、おめでとうごじゃいましゅ!」
「今年もよろしくお願いしましゅ!」

 幼い双子が、着物でぺこりと頭を下げる。
 男の子と女の子の双子であった。
 そんな二人を愛しげに見つめながら、その双子の両親もまた新年の挨拶をする。

「ああ、明けましておめでとう。羽美瑠、羽斗里」
「はい、おめでとうございます、羽美瑠に羽斗里。これはお年玉ですよ。大事に使いましょうね」

 母親が双子に袋を渡す。
 女の子の方には『羽美瑠へ』と、男の子の方には『羽斗里へ』と書かれていた。
 すると双子は嬉しそうにそのお年玉を受け取り、中身を確認するとニンマリと笑った。

「ありがとーごじゃいましゅ!」
「毎度ありなのでしゅ!」

 そんな双子を見て、父親は複雑な表情を浮かべる。

「いや……三歳児が毎度ありなんて言ってもな……」
「フフッ、きっとあなたがお店で言ってる言葉とか覚えちゃったんじゃないですか? かわいーですね♪」
「え? オレ、いつもそんな事言ってたか?」
「はい、機嫌がいい時とか言ってますよ」
「そ、そうだったのか……」

 ニコニコと嬉しそうに笑う妻を見て、父親はポリポリと頬を掻く。
 因みに、この夫婦は海の近くで喫茶店などを営んでいる。
 近くには水族館などもある。
 その水族館は、この夫婦にとって思い出深い場所であった。
 彼等にとって初デートの場所でもあり、結婚式もそこでした。
 今では、休日に家族で遊びに言ったりしている。

 “ピンポーン”

 その時、家のチャイムがなった。
 双子はパッと顔を輝かせ、玄関へと走ってゆく。

「はーくんだ!」
「はーくんでしゅ!」

 双子が玄関のドアを開けると、そこには小学生くらいの少年が立っていた。
 少し中性的な感じの、綺麗な顔立ちの少年だ。
 彼は出迎えてくれた双子にニッコリと笑い掛けると、手を伸ばして二人の頭を撫でる。

「久しぶりだね、二人とも。明けましておめでとう」

 歳に似合わず、大人びた雰囲気の少年だった。

白兎(はくと)君、ようこそ」
「おー、白兎。暫く見ない内にまたでかくなったか? 子供って成長早いな」

 双子の両親もこの少年を出迎える。
 どうやらこの少年の名前は、白兎と言うらしかった。

「叔父さん叔母さん、明けましておめでとうございます」

 礼儀正しく、白兎は頭を下げる。
 それを見て双子の両親は目を見張った。

「……あの鬼畜ヤローの息子とは思えん……」
「……あの姉の子供とは思えませんね……」

 そんな風に呟いていると、

「何か今、俺らの悪口言わなかった?」
「キャー、ミカちゃん呉羽君久しぶりー! いやーん、羽美瑠ちゃんも羽斗里君も、ちっちゃい頃のミカちゃんそっくり!! メルヘン!」

 髪を後ろに束ねた男性と、女の子を抱いた女性が玄関から入ってくる。
 そう、この双子の両親は、何を隠そうミカと呉羽であった。
 そして、今玄関にいるこの二人は、言わずもがな杏也とマリである。
 この白兎と呼ばれたこの小学生は、杏也とマリの息子であり、マリの腕に抱かれているのは末っ子のアリスと言う。

「おじしゃんおばしゃん、それにあーちゃん。明けまちておめでとーごじゃいましゅ!」
「じゃいましゅ!」

 双子がぺこりと頭を下げる。
 すると、マリはズキューンと目をハートにさせた。

「やーん、かわいい! お年玉――」

 マリが二つの袋を取り出そうとし、羽美瑠と羽斗里の顔が喜びに輝いた時、それは杏也によって阻止された。
 彼はにっこりと笑い、

「駄目だよ、羽美瑠に羽斗里? 何もせずして何かを得ようなんて、虫のいい話だろう?」
「えぇ! 杏也、三歳のお子ちゃまに何言ってるの!?」

「相変わらず、鬼畜だな……」
「そうですね、子供にまで容赦ないですね……」

 呉羽とミカが呟く中、当の双子はしゃがみ込んで何やらコソコソと話している。

『みぃちゃん、なにもせずしてなにかをえようってどういう事でしゅか?』
『それは多分、何にもしないでお金はもらえないって事じゃにゃいの?』
『ハッ、そうでしゅ! パパもママも、お店でお茶やコーヒーを出してお金ももらっていましゅよ!』
『じゃあ、わたち達も何かしなくちゃいけないのでしゅ!』

 双子はうんと頷いて、「ちょっと待っていてくだしゃい」と言うと、家の奥に走っていってしまった。
 白兎が困った顔で、父である杏也を見る。

「父さん、羽美瑠や羽斗里にまでそんな事要求しなくても……」
「今の内から、社会の厳しさを教えてあげなくちゃね」
「そんな事言って、アリスには何も要求しないのに……」

 アリスと聞いて、杏也は相好を崩した。
 アリスは恥ずかしがりやなのか、ここに来てから一度も声を出していない。
 マリの首にしっかりと掴まり、ビクビクした顔で周りを見ている。

「アリスはもう最初から、俺の要求に答えているからね」
「え? 要求って?」

 皆が首を傾げていると、杏也は嬉しそうな顔でアリスの柔らかく薔薇色の頬を突っつく。
 途端にビクッと泣きそうな顔でマリの胸に顔を埋めた。本能的に何かを感じ取っているのだろう。

「自分の子供に怯えられてるぞ、あんた……」

 呉羽が呆れた様に呟くと、杏也は嬉しそうにこう言った。

「この、思わず虐めたくなるような仕草が何とも……」
「もー、杏也ってばまた何言ってるの!!」

 頬を膨らまし、マリが娘を庇う。

「またって……いつもこんな事言ってんのか? 怯えられて当然だな……」
「うーん、自分の子供に対しても鬼畜っぷりは健在でしたか……」

 何だか、白兎とアリスを哀れに思う呉羽とミカであった。



「あ、そうだ。白兎君とアリスちゃんにお年玉」

 ミカが、用意していたお年玉の袋を取り出すと、またもや礼儀正しく頭を下げ、お礼の言葉を告げる白兎。
 やっぱり礼儀正しいな、とミカと呉羽は感心しながら思った。

「アリス? ミカちゃんがお年玉ですって。受け取るくらいは恥ずかしくないでしょ?」

 すると、アリスはマリの腕の中でそろっと顔を上げると、ミカの顔をじっと見た。
 しかし、ミカがにっこりと笑いかけると、パッと顔を真っ赤にしてまたマリの胸の中に顔を埋めてしまう。

「もうアリスったら、どれだけ恥ずかしがり屋なのかしら」
「ははは、思わず人ごみの中に置き去りにしたくなるねぇ」

 呆れたように溜息をつくマリの隣で、杏也はとんでもない事をいう。
 白兎も後ろでこっそりと溜息をついた。
 どうやらいつもの事らしい。
 マリはその言葉を聞き流しつつ、娘の代わりにお年玉を受け取った。

「それに比べて、羽美瑠ちゃんと羽斗里くんはすんごく人懐っこいって聞いたけど?」
「あれは人懐っこいって言うか……」
「何と言うか、たかっていると言うか……」
「たかる?」

 マリが首を傾げていると、家の奥から双子が戻ってきた。
 その二人を見て、マリは思わず叫んだ。


「いやーん! 何それ!? ラブリィすぎるぅ!! メルヘン!!」


 双子は猫とねずみになっていた。
 羽美瑠が猫、羽斗里がねずみの被り物を付けて現れたのである。
 そしてそれは始まった。


「はみぃ~猫と~♪」
「とりぃ~ねずみの~♪」
「らぶりぃ~劇場なのでしゅ!」
「ようこそでチュ~!」

 双子は歌いながら、両手を広げてお辞儀をする。
 足踏みをしながら、リズムをとってそれぞれ違う仕草で踊り出した。

「はみぃ~猫はおなかペコペコ~でしゅ♪」
「そこへ~とりぃ~ねずみがやってきて~♪」

『ばったり遭遇するのでしゅ!』(二人同時、驚いた仕草をする)

「いや~ん、とりぃねずみが食べられちゃいまチュ~」
「はみぃ猫はおなかがペコペコ、今すぐとりぃねずみを食べるでありましゅ~」

 二人はちょこまかと、大人達の周りで追いかけっこを始める。そして最後に、マリの足元でぐるぐると回ると、ハシッと二人してその足にしがみ付いた。

「マリおばしゃん、早くしないと、はみぃ猫がとりぃねずみを食べちゃうよ?」
「僕食べられちゃいまチュ!」

 ウルウルとした瞳で見つめられ、あまりのらぶりぃさにマリは気絶寸前であった。

「いやぁ~ん!! もう何これ! メルヘン過ぎるのにも程があるわ!!」
「……メルヘン……」
「ハッ、アリスが今日始めて喋った!」

 顔を伏せていたはずのアリスが、今は顔を上げ、双子をじっと見詰めている。

「あーちゃんも一緒に歌って踊るのでしゅ」
「楽しいでチュ~」
「……うん……」

 何とアリスは頷いた。
 その事に目を見開く杏也とマリ。
 普段のアリスであれば、絶対にありえない事であった。まず、自分から何かしようとする事が無いからである。
 白兎は嬉しそうに、ボーっとしているマリに「母さん、アリスを下ろして上げなよ」と言った。
 そう言われて、マリは漸く我に返って娘を下ろす。
 すると、双子はアリスの手を取って、再び大人達の前で踊り始めた。

「はみぃ~猫と~♪」
「とりぃ~ねずみと~♪」

 双子がアリスに目配せすると、恥ずかしそうにしながら、アリスはちっちゃな声で、

「……アリスの……」

 と言った。それに満足そうに頷くと、双子はアリスの両脇から繋いだ手を上げ、

『らぶりぃ~劇場~♪』

 同時に歌いながら礼をする。

「今日は~楽しいお正月~♪」
「お雑煮美味しかったのでチュ~♪」

 双子が足を上げ下げするのを、見よう見まねで真似をするアリス。次第に楽しくなってきたのかクスクスと笑い出した。

「す、凄いわ……アリスがここまで積極的になるなんて初めて……」
「うーん、これは……こんなに楽しそうなアリスは見たのは初めてだな……」
「いや、そもそも、初めてって感じる事自体問題じゃないか……? 親として……」
「子供達が楽しそうに踊っている姿って、かわいーですねぇ♪」

 大人たちが思い思いに呟く中、双子はアリスの手を離し、くるりと回ってしゃがみ込むと、アリスに向かって促すように手をひらひらとする。
 アリスはそれを受け、にっこりと笑い自分もくるりと回るとスカートの裾を摘んで、ぺこりとお辞儀をした。
 一瞬静まり返る中、双子は立ち上がって再びアリスの手を取ると、大人達に向かってお辞儀をする。

「ごはいちょう、ありがとうごじゃいまちた!」
「まちた!」
「……まちた……」

 双子は期待の篭った目で杏也とマリを見つめる。
 マリが杏也を見ると、彼は肩を竦めて頷いた。

「まぁ、今回はあげるに相応しいかな。アリスのこんな姿を見られたし」
「そうよね、そうよね! こんなにメルヘンなの、私初めてよ! あーん、この子達に私の店のお洋服着せたい~!」
「あ、いいね。そしてショーウィンドウに立ってもらおう」
「キャー、それ素敵!」

 杏也とマリの会話に、ミカはうんざりした顔をしてみせる。

「もう、子供達にまで、自分の趣味を押し付けるのは止めて下さい!」
「確かに、羽美瑠や羽斗里が見世物になるのは、あんまりいい気分じゃないな……」

 その時、双子がアリスの手を引きながら両親の傍までやってくる。

「わたち、おばしゃんのお店の服好きだよ」
「みぃちゃんが好きなら、僕も好きでしゅ」
「……ママの服、可愛い……」
「~~っ!! いやーん、もうなんていい子達なの!! はい、お年玉!」

 目をウルウルとさせながら、マリは双子に袋を差し出した。
 途端に目を輝かせ、その袋を受け取る双子。
 中身を確認すると、にんまりと笑ってマリに抱きつく。

「ありがとーごじゃいましゅ!」
「おばちゃん、だいしゅき!」
「キャーン、私も大好き~!!」

 感激して双子を力いっぱい抱き返し、ぐりぐりと頬を寄せるマリであった。
 それを見て、杏也は呉羽とミカに尋ねる。

「……たかるってこういう事?」
「……ああ」
「何というか……ここの所二人とも、近所の人とか、お店に来る人たちにまでこんな風にお小遣いをねだる様になって……私、育て方間違えてしまったのでしょうか……」
「ミカだけの責任じゃないんだから、一人で悩んだりすんなよ?」

 ミカが気落ちした様子で呟くと、呉羽がミカの肩を抱き、励ますようにその肩を揺する。
 それを聞いていた白兎は、こっそりと双子に近づき耳打ちをした。

「羽美瑠、羽斗里。何でそんなにお金が欲しいの?」

 すると、二人は嬉しそうに頬を薔薇色にして、

「もう直ぐ、パパとママの結婚記念日なのでしゅ!」
「だから、プレゼントを買うのでしゅ!」
「お部屋をお花でいっぱいにしてー」
「でっかいでっかいケーキも用意するのでしゅ!」

 その二人の顔を見て、白兎はにっこりと笑って頭を撫でた。

「そっか、偉いね二人とも」
「うふふー」
「えへへー、褒められまちた」
「でもね、あんまり周りからお金をせびっちゃ駄目だよ?」
「?? 何ででしゅか?」
「皆、みぃちゃんや僕の可愛さに、喜んでお金をくれるのでしゅ」
「パパとママを悲しませちゃうよ」

 白兎は身体をずらして、呉羽とミカの様子を見せる。
 呉羽がミカの方を抱いて、悩んでいるのが見えた。

「あうっ、本当でしゅ……」
「ママ、悲しそうでしゅ……」
「ほらね?」
「でも、どうしてもプレゼント……」
「お祝いしたいでしゅ……」

 双子はシュンとして、今にも泣きそうになった。
 白兎はそんな二人に優しくこう言う。

「だから、そんな時は僕の父さんや母さん、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんに相談するといいよ」
「おじしゃんとおばしゃん……?」
「おじいちゃまとおばあちゃま……?」
「そう、皆、喜んで協力してくれるよ。こういう事は、身内に相談するのが一番。だからもう、近所の人とかお店のお客様にお金をせびっちゃ駄目だよ?」
「あい!」
「わかりまちた!」

 双子は手をあげて返事をする。
 さっきまで泣きそうになっていたのが嘘の様に、顔をいっぱいに輝かせて喜びに染まっている。
 白兎がにっこりと笑って、双子の頭を撫でていると、隣で大人しく見守っていたアリスが此方をじっと見ている事に気付いた。
 どうやら、頭を撫でられている双子が羨ましいらしい。
 アリスは父の杏也にはあまり懐いていないが、兄の白兎には信頼を置いているのだ。
 白兎自身もアリスの事は可愛くて仕方がない。いつもあの父から守らねば、とこっそり思っていたりもする。

「アリスも、さっきの踊り可愛かったよ」

 そう言ってアリスの頭を撫でてやれば、アリスは嬉しそうに頬を染めて擽ったそうにした。

「あーちゃん、いーなー……」
「僕達も、はー君みたいなお兄しゃんが欲しいでしゅ……」
「……アリス、にーにの事大好き……」

 アリスの小さいがはっきりとした口調に、白兎も相好を崩した。
 ますます羨ましそうな双子は、またもやこっそりと二人で話し込む。

『どうちたら、わたち達にもお兄しゃんが出来るんだろう……』
『この前おじいちゃまに、弟か妹が欲しい時はパパとママにお願いするんだぞって言われまちた』
『じゃあ、お兄しゃんも、パパとママにお願いするでしゅか?』
『きっとそうなのでしゅ!』

 双子はパッと立ち上がると、呉羽とミカに向かって、

「パパー」
「ママー」
「わたち達も、あーちゃんみたいに」
「はー君みたいなお兄しゃんが欲しいのでしゅ!」

「羽美瑠? 羽斗里?」
「お、お兄ちゃんですか?」

 いきなり自分達に取り縋ってきた双子に、戸惑う呉羽とミカ。
 お兄ちゃんと言われても、そればっかりはどうする事も出来ない。
 杏也が苦笑して双子に言った。

「お兄ちゃんか……弟か妹だったら出来そうだけどねぇ……」
「お兄しゃんがいいのでしゅ」
「はー君みたいな優しいお兄しゃんでしゅ」
「でも、君等がお姉さんやお兄さんになりたいとは思わないのかい?」
「ちょ、ちょっとあんた、何言ってんだよ!」
「そうですよ! 私達の子供達に何か変な事吹き込んだら、許しませんからね!」

 呉羽とミカが、真っ赤になって杏也に文句を言う。
 彼は双子の祖父、大和同様、子供に聞かせられないようなとんでもない事を言う可能性が大だ。しかもこの手の話は、親の子供から聞かれると困る事ランキングで上位に入る、「子供ってどうやってできるの?」的な事を聞かれる恐れも大である。
 すると双子は、難しそうな顔をしてうーんと唸る。

「わたちがお姉しゃんになるでしゅか?」
「僕がお兄しゃん?」

 そしてパッと顔を上げると、

「わたち、妹が欲しい!」
「僕、弟が欲しいのでしゅ!」

 途端に、そう両親に訴える羽美瑠と羽斗里。
 何とも複雑そうに、そして赤面しながら自分の子供達を見るミカと呉羽。
 双子は両親の足に縋り付きながら、

「ねぇパパー、わたち妹が欲しいでしゅ……」
「ママー、弟作ってくだしゃい」
「うっ……」
「そ、それは……」

 体を揺すってお願いする双子に、ミカと呉羽は顔を見合わせ、カァッと顔を赤くさせる。
 そんな親子を見ながら、杏也はニコニコと実に楽しそうに、

「まぁ、がんばって」
「てめっ、自分で振っといて、他人事かよ!」
「無責任です!」
「もう杏也ってば、いくら二人の反応が面白いからって、からかいすぎじゃない? うちの子達もおんなじ事言い出したら如何するの?」

 マリがそう注意すると、杏也は何とも言えない色っぽい顔をする。
 マリはギクリと顔を強張らせた。

「それはまぁ……頑張って答えてあげないとねぇ? もう一人くらい作っとく?」
「うっ……」
「アリスに弟か妹作ってあげようよ。そしたら、少しは引っ込み思案が直るんじゃない?」
「ハッ、それはそうかも……」

 アリスの引っ込み思案は、マリにそう思わせるほど酷かったりする。
 杏也は「そうそう」と頷きながら、パッとミカと呉羽を振り返り、

「じゃあそういう事で、オレ達もう帰るね」
「え!? 今さっき来たばかりで!?」
「だってほら、子供達の願いを叶えてあげなきゃ」
「そ、それは羽美瑠ちゃんと羽斗里くんの願いでしょー!!」
「……妹、欲しい……」
「ハッ、アリスが!!」

 いつの間にいたのか、アリスはマリの足元で自分の両親を見上げている。
 杏也は満面の笑みでアリスを抱き上げると、

「よく言いました。いい子だね、アリス」

 怯えた顔のアリスに優しくそう言って、マリをズリズリと引っ張ってゆく。

「キャー、まだ新年の挨拶回りがあるでしょー!! 今すぐなんて無理ー!!」
「やだなぁマリ、いくらなんでも今すぐなんて言ってないよ。早く回って終わらせようって思ってたのに……。えっちだなぁ、マリは」
「いやー、今の聞かなかった事にしてぇ!!」

 そんな風に騒ぐ夫婦を、呆然と見送るミカと呉羽。
 この場に残された白兎が、ハァッと溜息をつきながら二人に向き直る。

「ええっと、僕の両親が大変お騒がせしました。それじゃあ僕も行きますね」
「え? ああ……」
「白兎くんも大変ですね……」
「いつもの事ですので……」

 落ち着きのない親がいると、逆にその子供は落ち着いた子になるんだなぁと呉羽とミカは思うのだった。
 だが此方も、そんな事をのんきに考えている場合ではなかった。
 杏也とマリの一連の会話を見ていた双子は、ますます弟妹が欲しいと詰め寄ってきたのだ。

「パパー、妹欲しいよー」
「ママー、今すぐ欲しいでしゅ」
「うぐっ……い、今すぐ!?」
「そ、それはちょっと無理です……」

 真っ赤になる両親をよそに、双子はまるで申し合わせた様に、同時に「お願い?」と小首を傾げて見せた。

「ぐはっ!」
「いやん、可愛い……って、萌えてる場合じゃありません。ハッ、呉羽まで萌え萌えしてる」

 恐るべし、双子のダブル萌え萌え攻撃。
 慣れている親にさえ、効き目抜群である。

「あ、あのね? 子供って言うのは直ぐに出来るものじゃないんですよ?」
「そうなんでしゅか?」
「いつできるの?」
「えっと……とつきとおか? で、でもね? こればっかりは、ちゃんと出来るかどうかも分からないし……」
「か、神様にしか分からないんだ」

 しどろもどろで答えるミカと呉羽であったが、双子はパッと顔を輝かせて、にっこりと笑う。

「それなら!」
「大丈夫なのでしゅ!」
「?? 羽美瑠? 羽斗里?」
「何が大丈夫なんだ?」
「だって、神様はきっと、わたち達のお願い聞いてくれましゅよ!」
「神様も、僕達のべらぼうな可愛さにメロメロになるのでしゅ!」

 自信たっぷりに答える幼い双子に、ミカと呉羽は苦笑いを浮かべる。
 確かにこの可愛さなら、神様もいう事を聞いてくれるかもしれないと、親ばかな事を考えてしまうのだった。


 ~お正月スペシャル・終~

 という訳で、お正月スペシャルは如何でしたでしょうか?
 オチが無くてすみません……。

 ミカと呉羽の子供、羽美瑠と羽斗里。
 二人に子供が出来たらどんなだろうと考え、こんな感じになりました。

 マリと杏也の子供、白兎とアリスは、マリが「不思議の国のアリス」が好きな為にこの様な名前になりました。彼女は、ずっと自分に子供が出来たら、この名前を付けようと思っていたのでした。

 羽美瑠ちゃんと羽斗里くん、自分の可愛さをよく知っていて、しかもそれを思う存分発揮しています。
 人前で踊りを踊るなど、サービス精神はお祖父ちゃんの大和の影響でしょうか。
 いつか、子供達と大和の掛け合いとか書いてみたいですね。

 因みに、乙女ちゃんの子供は、優雅ゆうが栄雅えいがという名前の男の子です。お兄ちゃんの優雅は名前の通り優雅な奴です。弟の栄雅は、俺様気質です。
 此方もいつか、他の子供達と絡ませてみたいですね。
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