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番外編:ざ・じーちゃんず
(フム、今日も正じぃは程よく震えている……異常なし!)

 物陰に隠れて、正じぃパトロールをしている、生徒会書記にして、震えるおじぃちゃんサポート委員会の会長、永井徹。
 彼は、中庭のベンチで、日向ぼっこをしている正じぃを眺めながら、満足げに頷いた。
 因みに、ピーちゃんは今、お散歩中である。

『会長、ここら周辺、全くもって、正じぃの危機となりえるものは、一切存在していません』
『ウム、見回りご苦労』

 徹は、会員の一人に労いの言葉を書ける。
 そんな時、また別の会員が現れ、徹に報告する。

『会長、何やら正じぃに接近するものあり。今、此方に向かっています』
『何!?』

 そして、皆が固唾を呑んで見守る中、その人物は現れた。
 皆はその人物を見て固まる。

『な、何故こんな所にサンタクロースが!?』

 その人物は、ずんぐりむっくりの体に、真っ白い髭を蓄えた老人であった。
 かといって、決してサンタの格好をしている訳ではない。きっちりとスーツに身を包み、帽子とステッキなどを身に着けている。しかしながら、彼のその雰囲気が、皆にその人をサンタクロースに見せてしまう。
 正じぃはその人物を見ると、プルプルと手を上げ、満面の笑みを浮かべる。

「あ〜〜……さんちゃん!!」

(さ、さんちゃん!? サンタクロースだから?)

「ほっほぅー、正やん、おひさ! 相変わらずわしの事、サンバイザーのさんちゃんと呼んどるみたいじゃの」

 如何やら二人は、知り合いのようだった。

(ってゆーか、サンバイザーのさんちゃん!?)

 徹たちは、その名の由来が気になった。
 サンタの老人は、正じぃの隣に座ると、彼に向かってにっこりと笑う。

「あ〜〜……ちゃも、なーり!」
「ほっほぅー、そっちこそ、元気そうで何よりじゃ」

(ハッ、話が通じている!?)

「あ〜〜……さきちゃ、きだも!」
「ほっほぅー、そうかそうか、咲ちゃんも元気にしとるか。そうじゃ、この前の咲ちゃんとの結婚記念はどうじゃったかの? わしのコーディネートは役に立ったかの?」
「あ〜〜……ばちこい!」
「なんじゃ、咲ちゃん喜んどったのか、何か面白くないの、わざわざ奇抜なものを選んだのに……」
「なむじぇい!」

 正じぃは憤慨して、プンスカと怒る。
 するとサンタの老人は、肩を竦めながら顔を青くした。

「おお、正やんのそれは怖いからのぅ。どうか許してくれ、ほんの出来心じゃ」

 そう謝ると、正じぃは小難しそうな顔をしながら、重々しく頷き、「れしーとか!」と叫ぶと、サンタの老人はホッと一息をつき、「許してくれた様で何よりじゃ」と呟く。

(い、一体、今の正じぃのセリフにはどんな意味がっ!?)

 非常に教頭の存在が恋しくなる、徹とファンクラブの者達。

「それにしても、こうしていると、当時を思い出すのぅ。二人で咲ちゃんをめぐってのバトルを思い出す……」
「あ〜〜……なつの……」
「そうじゃのぅ、懐かしいのぅ……結局、咲ちゃんは正やんの元に行ってしまったがの。わしも、正やんならと、大人しく身を引いた……」

 そうして二人は、暫くたそがれていた。
 すると、何処からともなく、パタパタという音が……。

「あ〜〜……ピーちゃん!」

 正じぃが呼ぶと、黒い毛むくじゃらが飛んできて、正じぃの頭にポスンと収まる。
 サンタの老人は、パチパチと瞬きをし、正じぃの頭を凝視した。

「何じゃ、正やん。そのカツラまだしとったのか。しかも小鳥付とは……。正やん、昔から動物好きじゃったからのぅ……」

 サンタの老人が、「ほっほぅー」と笑うと、正じぃは鳥の巣を彼に見せながら言う。

「あ〜〜……ピーちゃん!」
「なるほど、ピーちゃんという名前なのか。よろしく、ピーちゃん」

 彼が帽子を脱ぎ、ピーちゃんに向かって挨拶をすると、ピーちゃんは翼を広げ、「ピー」と挨拶を返した。

「ほっほぅー、これはこれは……賢い小鳥さんじゃ」

 老人はニコニコと笑い、そして、「そうじゃ」と何かを思い出したように正じぃを見る。

「正やんには、お礼を言わないとな」
「あ〜〜……?」

 カックンと首を傾げる正じぃ。

「わしの孫を、この学園に転入させてくれた事じゃよ。随分いきなりで、大変だったんじゃないかの?」

 すると正じぃは、暫し考え、そしてポンと手を打つ。

「あ〜〜……げキャっこ!」
「ほっほぅー、そうそう、その元気なキャピキャピ娘じゃ。しかも、執事の吏緒まで一緒にさせてくれるとは、これはもう、正やんには頭が上がらんのぅ」
「な〜さんちゃん、こうじちょう!」
「ほっほぅー、確かのそうじゃが、やはり正じぃあってこそじゃろう」

 ここまで聞いていた、徹、そしてファンクラブの会員達は、正じぃの言葉から、このサンタの老人は、何処かの工事長なのかと思った。でなければ、次長。
 しかしその時、

「あ〜〜……まーー!!」
「ほっほぅー、まつじゅん、元気ー?」
「えー……いえ、私はまつじゅんではなく、松平潤一郎です……」

 そこに、教頭が現れた。
 皆が待ちわびていた人物の登場である。

「うーん、まつじゅんはお堅いのぅ」
「……のぅ……」
「……お堅いのではなく、ただ単にまつじゅんが嫌なだけです……」
「ほっほぅー、じゃあ、じゅんじゅんで!」
「あ〜〜……まっつん!」
「えー……そのどちらもお断りします……」

 老人達が、相手のあだ名を決めている光景は、何だかシュールだ、と徹は思った。
 そして、教頭の次の言葉は、この場にいるもの全員に、衝撃を与える事になる。

「……理事長、そんな事はよいのですが、一体今日は何の用事ですか……」

(り、理事長!? あのサンタのような老人は、この学園の理事長だって!?)

 徹たちの視線は、その理事長と呼ばれた老人に釘付けとなる。

「ほっほぅー、用事? 別にないのぅ。ただ、正やんの結婚記念の結果を聞きたかっただけじゃ。ウケを狙ったんじゃがのぅ。咲ちゃん、以外にも喜んだそうじゃ。わし、残念……」
「なむじぇい!」

(こ、この言葉はっ!!)

 徹たちは、先ほどの気になる言葉が再び出てきた為、教頭を期待した目で見守る。

「えー……なんですか? その、南無参式Jバットって……?」
「おお、怖い怖い。それは正やんの必殺技じゃよ。受けると暫くは、再起不能になるんじゃ。そして、咲ちゃんは、この技を仕掛ける正やんに惹かれてしまっての。惨敗じゃ……」
「はあ……そうですか……」
「………」
「………」
「………」

 そうして、今度は教頭も混じって、ベンチに座り、たそがれていた。

(ちょ、ちょっと!? その、南無参式Jバットって一体何なんだ!?)

 正じぃの必殺技、非常に気になる徹たちなのであった。




「あ、正じぃだ……ハッ、何故に翁まで!?」
「へっ? うおっ!? サンタの爺さん!? 何で正じぃと一緒にいるんだ!?」

 たまたま通り掛ったミカと呉羽。
 中庭のベンチに座る、正じぃ達三人を見て、目を見張らせる。

「ああ、大旦那様は、この学園の理事をなさっておいでですから、それにこの学園の校長とは、旧知の仲だそうですよ」
「お前、何でここに……って、大旦那様!? 理事!?」
「吏緒お兄ちゃん、何でここにいるんですか?」

 そして、此方もたまたま通り掛った杜若。
 ミカと呉羽の後ろで、彼らの疑問に答えていた。

「私は、お嬢様を迎えに……」
「そういえば、乙女ちゃんは一緒じゃないんですね?」
「そうだよな? 大体一緒なのに……」
「ここの所、お嬢様は保健室に入り浸っておられます……」

 その言葉を聞いて、ミカは眉を寄せる。

「保健室ですか? 何処か具合でも……?」
「いいえ、全く健康です。お嬢様は、保険医の和子先生とよく話されたおりますよ」

 和子先生と言われ、ミカと呉羽は同じものを想像する。

『ああ、くまの……』

「あの保険医の方は、褒め上手ですから……」





「おほほ、ハニーティーはお好きかしら?」

 ティーカップを傾けながら、乙女は和子先生に尋ねる。

「ええ、甘いものは大概好きかしら」

 お茶請けに、ハニークッキーを頬張る和子先生。

「薔薇屋敷さんは、本当優雅よね」
「おほほほ、当然でしてよ! 薔薇屋敷家に生まれたものとして、優雅は当たり前の事ですわ!」

 そうは言うが、乙女はとても得意げに胸を張っている。

「それに、気品もあって……。お嬢様じゃなかったら、何処かの国のお姫様でもしていたんじゃないかしら?」
「おほほほほ! よく言われましてよ!」

 更に胸を張り、頬を紅潮させる乙女。

「きっと、前世では本当にお姫様だったのね」
「おほほほほほ! そうですわね! きっとそうかもしれませんわね!」

 最早、胸をそり返しすぎて、見た目苦しそうである。

「この紅茶には、クッキーよりケーキじゃないかしら……?」
「そうですわね! 今度からはケーキをご用意いたしますわ!」

 同じ口調で、そんな要求をする和子先生。
 彼女は、見た目はおっとりのんびりな、あの黄色いくまによく似ているが、その実、結構したたかな性格をしているのであった。



 〜ざ・じーちゃんず・終〜
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