27.信じる
平次を部屋にいれる。
ドアを閉め、平次はリビングのソファーに腰を下ろした。
あたしは汗だくの顔を拭く、タオルを渡す。
平次は
「サンキュ」
と微笑んだ。
あたしはさっきから顔をあげない。
あげないんじゃない、あげられないんや。
平次の顔、まともに見れへんから…
あたしは言葉が出て来ない。
二人きりの空間がのせいか、息詰まってしまう。
平次もこの空気が気まずいみたいで、未だ話を始めない。
長い沈黙があたし達を包む。
この沈黙が切れたのは、随分経ってからやった。
「和葉」
平次があたしを呼ぶ。
一瞬びくっとして体を固まらせたが、ゆっくり平次の方へ顔を上げた。
「…何…や?」
心にもない冷酷な声が出てしまう。
まだ、怖い…
「あの姉ちゃんとは、別になんもないんや」
…よかった。
ホンマになんもないんか…
嬉しさの安心と同時に、不安も込み上げてくる。
疑いたくないねんけど…
…ホンマは隠すつもりなのかも、と…
「せやかて平次、結構仲良おしてたやん…あたしから見たら、普通にまとわりつかれて嬉しいように見えたんやけど」
「別に嬉しいわけちゃうわ」
「ほな、[祭りや]行った時の嬉しそ〜な顔はなんやったん?」
「それはなあ…工藤がお前の前で俺に事件の話すんな、ゆ〜たからや。和葉の機嫌が悪うなるとな」
工藤君…
「やからバスの後事件の話出来んくて、つまんなったときに、あの姉ちゃんが話聞きたいゆ〜から、話しとったらちょいええ気分になったんやで」
なんや…そうやったからなんか…
「せやけど…」
まだまだ質問が出てくるあたし。
醜いなあ…
「なんで部屋にいるゆ〜たのに、あそこにおったん?」
「あれはなあ…正直俺もあの姉ちゃん一人やと思わんかったんや。あいつの姉ちゃん…美尋さん?…が記者やってて、俺の話聞いて雑誌載せたいゆ〜から、あの場所におったんやで。そしたらあの姉ちゃんが一人でおって…まあ最初っからあそこで話聞きたいゆ〜んがおかしい思ったんやけど」
平次は深いため息をつく。
「ほな、あたしらに部屋にいる〜ゆたんは?」
「…お前に知られたなかった」
…あたし?
あたしに知られたなかったって…
あたしの事気遣ったから…?
|