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第二部 1.出口のない森−5
 急激な方向転換についてこられなかったのか、後ろに迫ってくるはずの蹄の音が聞こえない。
 だが、マリーは後ろを振り返りはしなかった。その時間すら惜しみ、ただひたすら、霧の奥へと彼女の馬を走らせ続ける。
 速く――もっと遠くへ!
 木々はマリーの横を走り抜け、水滴をたわわに含んだ枝から大粒の滴がしたたり落ちる。小雨か霧かわからない濡れた空気で、マリーの髪はびしょ濡れになった。体全体が森の空気と同じくらいに冷えている。指先が硬くなりつつある。髪は冷たく、顔も冷えて強張ってきた。 
 マリーは白い霧のはれる場所を目で探しながら、額から流れる水滴を急いで拭った。周囲の景色に大きな変化はない。濡れた手で手綱を握り直そうとすると、曲げようとした指が心細く震えた。必死に意識をそらし続けている、恐怖のせいだ。その恐怖に加え、焦る気持ちが先走って、手綱がうまく握れない。
(いつになったらこの森を抜けられる……?)
 思い通りに動かない自分の指にも苛立ち、マリーは手綱を握る手にぎゅっと力を込めた。彼女をあざ笑うかのように、手の下で手綱が滑る。
「どこに……どこに行けばいいの……!」
 そのとき、どこからともなく、マリーの親指の付け根に大きな水滴が落ちてきた。不意に、マリーは体に鈍い衝撃を受け、胸の中央にぽっかりと大きな穴があいたような気になった。
(……なんだろう、この感覚)
 馬の茶色のたてがみをふと見やると、なぜか急にお腹が重くなり、その違和感で、マリーは思わずお腹に手を添えた。お腹が手の下で熱を持ち始め、その温かさがじんわりと広がっていく。不思議な安心感に包まれているのに、鼻の奥がつんとし、泣き出したくなる。
 自分の気持ちに戸惑いながらも、マリーはやっと後ろを振り返った。視界はふさがっているが、やはり、追っ手の気配は感じられない。
 マリーは顔を素早く拭い、目の上に垂れてくる水滴を指で払った。霧はあいかわらず、途切れてはくれない。本当なら上に見えるはずの空も、霧の彼方に埋もれている。いつまでも、マリーは自分が森の中をあてもなくさまよっているように感じた。
 せめて、太陽だけでも上空から照らしてくれれば、向かう方角がわかるのに。
(でも、私を追うなんてなぜ……?)
 同じ疑問がまた、ついて出た。
 モーリスの農園でつましく暮らしてきた彼女が、誰かの恨みを買ったことがあっただろうか?
 すぐには思いつかない。彼女は農園の外にはほとんど出ず、知り合いもいない。
 それまで感じたことのない孤独感に襲われ、マリーの胸が切なさにしぼんだ。農園の人々はとてもよくしてくれるけれども、彼女の家族ではない。カミーユを除けば、マリーは家族も親戚もいない、天涯孤独の身だ。
 マリーは正面を向き、白い霧に見え隠れする景色に目を凝らす。
(でも、もしかしたら――)
 急に思いついた考えに、マリーは混乱した。
 ――もしかしたら、消えた過去に遡れば、追われる訳が見つかるのだろうか?

 恐怖はほとんど失われていた。
 マリーは、馬の速度を少しだけ落とした。背後から追いかけてくる音はなく、左右からも何も聞こえてこない。追っ手の男たちを振り切れた、とみなしていいのだろうか。
(なぜ私はまた追われてるんだろう?)
 低くなる鼓動を気にかけながら、自分の内なる声に、マリーははっとした。
(“また”? また、ってどういうこと?)
 戸惑いに、胸がつまる。

 マリーはまた、馬の歩みを遅くした。白い霧に、半分または一部、その姿を隠す木々が両側を流れていく。天に昇るように伸びていく真っ直ぐな幹。何かが、無遠慮に心に押し寄せてくる。不安定な闇に押され、息が詰まる。
(まただ。何だろう、この感覚?)
 既視感? 
 でも、この森に来たのは、マリーは今日が初めてだ。
 前方の木々が途絶え、雲のような霧が薄まって明るくなっている地点が見えてきた。ちょっとした広場がありそうだ。
 それを目にすると、それまでの不安な気持ちが、とてつもない緊張感に成り代わった。それから、畏敬に近い温かな想いがマリーの全身にあふれ出してきた。なつかしくて、胸が膨らんで、心が騒ぎ出す。
 馬の揺れに体を合わせきれず、マリーの体がふわりと浮いた。
 急に不安定になった体を封じ込めようと、馬のたてがみにしがみついたマリーの顔に、大きな水滴がかかった。そのとき、それまで飛ぶように脇をすり抜けていただけの木々が、ゆっくりした動きをとって、マリーの目に飛び込んできた。どこかで、たしかに見た光景だ。木々が心に迫り、枝の先端についた、透き通った雨の滴がきらきらと光りながら、マリーの胸に降りかかってくる。
「あ……!」
 意識が朦朧とした。
 薄くなった霧の奥に、青い、真っ青な空が見えた気がした。
 
 斜面に幾重にも続く木立、崖の下を流れる濁流、一斉に弓を構えた青い制服姿の近衛兵たち。
 いつかどこかで目にした光景が順番に現れては失われ、そのたび、マリーの心臓は悲鳴を上げる。再び、マリーの鼻の頭に水滴がかかり、顔の前で細かな滴となって散らばった。前方を、抜けるような青空が占め、マリーはついに、実際に悲鳴をあげた。
(ああ、私は……!)
 なつかしく、狂おしい痛みでマリーの体が宙で縛りあげられた。手を伸ばした先で、正面にいた緑色の瞳の男が、突然、消えてなくなる。彼の面する恐怖は、彼女の恐怖だ。その次の瞬間、彼女は生ぬるい水の中にいた。
“ジェニー!”
 その男のあげた叫び声に、マリーの身が水中から一気に引き上げられる。
「ゴーティス王……!」
 彼の姿を胸に描いただけで、体のあちこちから涙が静かに流れ出す。
 空に、緑色の涙が舞った。
 マリーは無我夢中で両腕を空に高く伸ばした。涙は空中で浮き、揺れている。雫を透した光が、彼女に笑いかけている。彼女を待っているのだ。あとほんの少しだけ、ほんのちょっと手を伸ばせば、指の先に触れる。もう少しでつかめる。あの瞳をこの腕に抱きしめられれば、何もかもが、今このときから救われる。
 おぼろげな光が近づいてきた。霧の切れ間に揺れる光は、彼女に差し伸べられた彼の腕だ。それはいつでも、どんなときでも、彼女に温かい。
 会いたかった。
 ずっと会いたかった彼が、やって来る。
 目が涙でにじみ、マリーは光に手をせいいっぱい伸ばした。彼女の手が、指の先が、彼の温もりに届く。それは優しくて、とても温かい。
 触れただけで、マリーの胸の中で彼への愛しさが弾けた。

 はっとして飛び起きた彼女は、自分が、見知らぬ小さな部屋に寝かされていたのを知った。部屋に明かりは射さず、小さな窓からは濁った景色しかのぞけない。寝台から起き上がりざま、彼女は自分の全身が濡れていることに初めて気づいた。
「あの川に落ちて……!」
 だが、彼女はそれが間違いだとすぐに訂正した。霧のたちこめる森で、逃走の末に追っ手をまいた、かすかな記憶が残っている。
 男たちから逃れられたと知って、彼女は安堵し、ひそやかな息をつく。
 隣の部屋には誰かいるらしく、床の上を歩く靴音が聞こえてきた。食べ物のような、油の混じった匂いが扉越しにもれてくる。人の存在、誰かがいるという安心感。何者かが、彼女を助けてくれたらしい。
 彼女はあらためて安堵し、それとともにモーリスの館を思い出した。彼女に、温かい寝床と惜しみない愛情を与えてくれた家。自分とは違う名前で過ごした日々。記憶が入り混じることに少し戸惑いを覚えたが、試しに、彼女は自分の名前を呟いてみた。
「……ジェニー」
 その名は唇に馴染む。耳で聞いてみても、違和感は残らない。そのことに、彼女はもっと安心する。
(……ここはどこ?)
 冷えと疲労から来る眠気に耐えられず、彼女は再び温かい毛布の中へもぐりこんだ。目を閉じると、白い霧の中でさまよった時間が思い出される。
(ここはどこだろう? 私はなぜ追われたの?)
 森の中で、ゴーティス王の悲痛な叫びを聞いたことを思い出す。森を駆け抜けた記憶は曖昧なのに、それだけが鮮烈だ。耳には今でも彼の声が残っていて、胸に小さな棘がささっているように痛む。あれからどれだけの時間が流れたのか、はっきりとはわからない。でも、彼の手だと感じたのは、彼女を助け出してくれた別の誰かだったのだ。全ては、遠い昔に過ぎ去ったことなのだ。
 彼女はあきらめ、眠気に誘われるままに目を深く閉じる。
(カミーユは? ケインは、生きているんだろうか……)
 扉の開く音が、ジェニーの頭の中に反響した。


 森番の寝室は居間の半分にも満たない大きさだった。小さな窓が右側に一つあるだけの、暗い部屋だ。左側の壁面には三段の棚が造り付けてあり、乱雑に小物が放り出されていた。寝床の隣にある小さな台には、水の入った容器と赤いショールが無造作にかけられている。部屋の大部分を占める寝床の真ん中には、女が毛布を被り、ゴーティスの方に背を向けて寝ていた。長い髪は茶色っぽく見え、毛布の上であちこちの方向に乱れ飛んでいる。あまりに静かで動かないので、まるで死人のようだ。
 女の間近に行くと、彼女の肩がわずかに上下しているのがわかった。長い髪が濡れ、ところどころで束になって固まっている。擦り切れた毛布の下からは女のうっすらと赤い唇がのぞき、ゴーティスは期待感で体を震わせた。
 少女のような――いや、若い娘だ。
 ゴーティスはほくそ笑み、彼女を覆う毛布に手を伸ばそうとした。が、髪で半分隠れた彼女の横顔をのぞき見ると、ゴーティスは伸ばしかけた手を不意に止めた。
 薄く小さな唇の形に見覚えがある。
 口から鼻につながる曲線を、ゴーティスはどこかで見た記憶があった。
(……誰だ? 一度ではない、何度となく――)
 心当たりに思いをめぐらせ、すぐにたどり着いた答えに、ゴーティスは到底納得できなかった。強烈な驚きで、口がしばらくきけなかった。
(だが――よもや――今さら――)
 頭に浮かぶのは否定ばかりだ。否定したがる一方で、呼吸が熱を帯び、ゴーティスを激しく急きたてる。
 ゴーティスは寝台横の床に膝を落とし、人差し指の腹を女の口元にかざした。女の息吹が、彼の震える指を温かく湿らせる。
 彼女は、生きている。
 ゴーティスは寝台に手をつき、崩れそうになる体をどうにか保った。
 彼女は生きている……!
 あの日以降、繰り返し見た夢の中で、ゴーティスは落ちていく女の手を何度も掴みそこねている。そのたびに後悔し、自分を責め、ケインを呪った。
 彼女が、今再び、ゴーティスの前にいる。
 一度彼女に触れたら、塵と化してしまうかもしれない。彼女が目を開けたら、このはかない夢も終わってしまうのかもしれない。
 彼女を二度までも失うのは怖かった。音をたてて張り裂ける胸の痛みを、二度も経験できるとは思えなかった。彼の本能は答えを確信しているのに、間違いと分かったときの落胆に怖気づいて、彼女の顔にかかる髪を払いのけられない。
 たった二年で、自分はこんなにも臆病だ。
 面前に横たわる彼女をじっくりと見て、ゴーティスは細いため息をもらす。
 彼女の細い肩が小さく上下に揺れていた。ゴーティスは自分の手のひらを見つめ、それを握り締めた。爪が手のひらにくいこみ、色が白く変わる。これは、夢ではない。
 手のひらに血が通っていくのを見ながら、ゴーティスは萎えた勇気を奮い起こした。そう、今度こそ、それが今目の前にあるのなら――今、彼女の手を掴むべきなのだ。
 意を決し、ゴーティスは女の濡れた髪を指で払った。青白い横顔がゴーティスの手の下から現れると、室内中の空気が、一度に、彼にわっと押し寄せてきた。
 誰が、彼女は死んだと言ったのか……!
 ほとばしる熱気に目がくらみ、組んだ両手の上で、ゴーティスは自分の感情に飛ばされないよう、必死に耐えた。
 質素な森小屋が後宮の一室に姿を変える。二年前の日々が彼の瞳に駆け上ってくる。毎日の務めが終わった深夜、寝台で健やかに眠る彼女を、ゴーティスは飽きることなく眺めていた。何もせず、ただ見つめているだけで、心は平安だった。伽の対象なだけではない女が存在することを、ゴーティスに気づかせた女だ。彼女のことを、片時も忘れたことはない。
 生きることに貪欲な彼女が、そうそう簡単に死ぬものか……!
 王ゴーティスにたてつく女が、そうもたやすく死ぬものか!
「ジェニー……!」
 外に飛び出していって、大声で宣言してまわりたいぐらいだ。ジェニーは死んでなどいない、と。
 ジェニーは以前より少し日に焼け、顔の肉が落ちていた。身に着ける服は質素なものだが、彼女に変わりはない。顔色は悪いが、ジェニーは生きている。ちゃんと生きているのだ。
 ゴーティスはジェニーの寝顔を見た。よく眠っている。以前と同じように、唇を少し開いて、静かに眠っている。ジェニーが、生きている。
(二年も俺を放置したこの女を、どうしてくれよう……!)
 その頬に触れようとゴーティスが手を伸ばすと、彼女の体が震えた。が、それは彼女が震えていたのでなく、ゴーティスが感極まって震えているだけだった。
 彼女との再会に感動し、ゴーティスの手足の端々までが痺れ、歓喜にむせび泣いていた。辛い現実に降伏し、彼女を一度はあきらめたことを、ゴーティスは、心の中で彼女に懺悔した。


 目の前に、白くぼんやりした物が見えた。白くて、華やかな何かだ。だが、至近距離にありすぎて、目の焦点に合わない。
 ジェニーが目を凝らして確認しようとすると、その白い物体がさっと取り払われ、代わりに、温かな柔らかい何かが口と顎を覆った。咄嗟のことで驚いたが、唇に押し付けられた感触から、ジェニーはそれが人間の手だと答えを出した。
 戸惑うジェニーの耳に、息に似た男の声が早口で囁く。「騒ぐな」
 そうは言われても、男の手で口を塞がれたと知って、ジェニーは一気に目が覚める。うす暗い室内に男の不鮮明な影が浮かびあがり、ジェニーは恐怖でひるんだ。男の手をつかみ、慌てて体を起こそうとする。
「騒ぐな」
 声が近づいて再び命令し、ジェニーの肩が押さえつけられた。ジェニーは焦り、必死でそれを取ろうともがいた。
「う……う……!」
「騒ぐでない!」
 男の息が顔にあたり、ジェニーは体を揺らして抵抗するのをやめた。男の独特な口調と懐かしい響きに、体の内側から純粋な驚きが生まれてくる。
(この声! でも、まさか……?)
 まだ夢の途中かもしれない、とジェニーが混乱していると、小屋全体に響き渡るほどの怒鳴り声が彼女を現世へと呼び覚ました。
「森番! 森番、早く開けろ! おまえが中にいるのはわかっておるぞ、さっさとここを開けろ!」
 追っ手だ!
 ジェニーは男への抵抗を再び試みようと体を起こそうとして、目の前の人物がくるりと頭を揺らす様にぶつかった。
(――これはまだ……夢の続き……?)
 ジェニーは絶句し、息をするのも忘れて、自分を振り返った男の光る瞳を見つめた。
 また会えるとは思わなかった。
 もう二度と、会うことはないと思っていた。
 ジェニーは、彼の手が自分の顔に触れているとあらためて知ると、その手にまた会えたことに感動して、胸がつまった。彼の瞳に自分が映っているのをみとめると、嘘のような再会が現実に今起きているのだと思い知らされて、泣きたくなった。約二年前、青空の下でジェニーが永遠に失ったと感じた、緑色に輝く瞳だ。ゴーティス王だ。その二つの瞳が今、ジェニーを真上から見返している。
「う……」
 ジェニーが呻くと、彼は、彼女の口を塞いでいた手をわずかに浮かせた。その手の温かさは、以前とまったく変わりない。
 肩まで届いていた彼の髪が、耳が見える短さとなっていた。直毛だとばかり思っていた髪が、ゆるやかにうねって顔の輪郭を覆っている。険しい形相はあいかわらずだが、以前よりずっと、精悍で男らしい印象だ。なつかしさと愛しさに、ジェニーの胸が甘く泣く。
 ジェニーが二年ぶりに再会した王を見つめ続けていると、彼が、やや怪訝そうに眉をひそめた。親愛を含んだ眼差しを期待していたわけではないが、彼の瞳には、ジェニーへの情も怒りもない。醒めた目だった。
 大声が再び乱暴に繰り返された。
「開けぬのなら、この扉を蹴破るぞ! 我らはラニス公の使者である! ある女を捜しているのだ、匿うと承知せぬぞ!」
 ジェニーは凍りついた。
 やはり、追っ手だ。
 こんなところにまで追ってくるなんて!
 森を駆け抜けていたときの恐怖が戻ってきて、ジェニーは喉をつまらせる。
 ジェニーに再び振り返った王が、彼女をじろじろと見た。商品を値踏みするかのような、ぶしつけな見方だ。彼はまだ、言葉を発しようとしない。 
 
 ジェニーが身じろぎもせずにいると、戸口の向こう側から、くぐもった男の囁きが聞こえてきた。
「王。お聞きですか、王? ラニス公の使者とのことですが、どうされます? 相手は近衛兵のようですが?」
 ジェニーの心拍数がいっそう上がる。王が扉の方に目をそらした。
 しんと静まりかえる室内で、王の手をつかむジェニーの手が勝手に小刻みに震え始めた。ジェニーはそれを止められない。彼の視線が、ちらりとそこに流れた。あいかわらずの冷たい目だ。
 彼の冷たい瞳を見ているうち、ジェニーは愕然とした。
(――まさか、ラニス公からの偽の使者は、王が放った刺客では……!)
 あらたな恐怖で、ジェニーは彼を直視できない。
(ああ、まだ、まだ死にたくない……!)
 ジェニーが王の手の中で苦痛の息をもらすと、肩から彼の手が離れ、扉の方に声が投げかけられた。
「戸を開けてやれ」
 引き渡される――。
 ジェニーは観念して目を閉じた。男たちが、乱暴に小屋に押し入り、床を踏み鳴らして歩く音がジェニーの耳にもはっきりと届いた。「声をたてるな」と王が耳元で囁いたような気がした。
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